Inc.:(10月20日から米国でサービスが開始された)「Apple Pay」は、店舗での決済方法をすっかり変えてしまうでしょう。スモール・ビジネスの事業主は、間違いなくこの技術に注目すべきであり、さらに重要なのは、この決済方法がどれくらい普及するかに目を配ることです。
これまで使われなかった支払い端末に光が当たる
この、スタートしたばかりの決済システムには、非常に有利な点がひとつあります。それは、マクドナルドやウォルグリーン(米国の薬局チェーン)など、全米22万店舗に設置されている支払い端末を利用できること。思い出してください。かつてはAndroid携帯の「Googleウォレット」がクレジットカードにとって変わると考えられていました。
今日、筆者がマクドナルドやウォルグリーンを何軒か訪れたところ、Googleウォレットを使っている人はひとりも見ませんでした。Androidのかわりに、私はiPhone 6を取り出し、支払い端末にかざしました。指紋認証画面が表示され、親指でタッチするとすぐに決済が完了。非常にシンプルです。
近所のマクドナルドにNFCの支払い端末が2年以上前からありますが、使われているのを見たことがありません。マクドナルドやウォルグリーンのレジ係も、端末を使う人を見たことがないと言っていました。
(先ほど、クレジットカードをApple Passbookアプリに登録しましたが、作業は5分で完了。直観的でスムーズ、まさにAppleという感じです。完了するとクレジットカードがデジタル形式で画面に表示され、ちゃんと登録できたことがわかります。その後、買い物を4点ほどして、Apple Payがいかに便利かを実感しました)
Apple Payは一気に大衆化する
Apple Payは実店舗での買い物に使うものですが、オンライン決済においても、指紋認証による本人確認のデファクトスタンダートになると思われます。実際、スタートしたばかりなのに、これほどスムーズに使えることに驚いています。
Apple Payの事例から、スモールビジネスが学ぶべきことがあります。それは、技術トレンドを追いかけるよりも大切なことです。Steven Johnson氏はその著書「How We Got To Now」の中で、科学やテクノロジーのブレークスルーが、ときに「ハチドリ効果」をもたらすと書いています。これは、異なる発明が相互に補強し合い、一気に大衆化することを表します。
Johnson氏はこの本の中で、「印刷技術」と「眼鏡」のように、相乗効果を発揮したいくつかの発明について論じています。
スモールビジネスでもハチドリ効果が起こります。携帯カメラが普及したことで、Instagramが流行りました。都市におけるレンタカー料金とガソリン価格が急騰したことで、配車サービス「Uber」が人気を得ました。ビジネスの世界では、カミソリと替え刃の戦略が有名ですが、重要なのは、どのインフラが普及し、どんなチャンスが生まれるかです。
例えば、電気自動車も、巨大なハチドリ効果をもたらす可能性があります。テスラ社がこの流れに拍車をかけています。スモールビジネスがこの領域にフォーカスし、充電ステーションやモバイル決済システムが整い、バッテリー技術にイノベーションが起きれば、電気自動車は一気に広まるでしょう。
線路ができればチャンスが生まれます。次のステップは列車を作ることです。あなたもチャンスを探してください。Appleは賢いことにNFCインフラがすでにあることに気づいていました。Apple Payはテクノロジーを利用しただけでなく、それをシンプルで便利なものに磨き上げました。アップルは銀行から手数料をとりますが、それだけでなく、この決済システムを利用して、iPhoneユーザーの利便性とインセンティブの向上を図るでしょう。今まさに、ハチドリの翼は羽ばたき始めたばかりなのです。
Why Apple Pay Is the Perfect Example of the Hummingbird Effect|Inc.
John Brandon(訳:伊藤貴之)
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