『肌のきれいな人がやっていること、いないこと』(菅原由香子著、あさ出版)の著者は、岩手県一関市のクリニックで月1万人を診ているという人気皮膚科医。化粧品を使い始めた大学生時代から自身が肌荒れに悩み、「自分の肌をなんとかしたい」という思いで皮膚科医になったのだそうです。
そして自分の肌を使い、いろいろな化粧品を使ってみては腫れる、荒れるを繰り返し、数年に及ぶさまざまな実験をして、どうするとお肌が荒れるのか、重大な事実に気づいたのです。ついに20年以上の肌荒れを克服した瞬間でした。(「はじめに」より)
つまり本書には、著者の経験が凝縮されているというわけですが、「肌荒れにならない。美肌になる」ための答えは簡単。それは「素肌力を活かす」ことだそうです。そして問題は、人の肌にはもともと「美しくなる力」が備わっているにもかかわらず、多くの人が知らないうちに、その力を弱めてしまっているということ。
では、きれいな肌を保つためには、どんなことに気をつければよいのでしょうか? Chapter 1「肌のきれいな人がやっているスキンケア」から、要点を引き出してみたいと思います。
洗顔の仕方ひとつでお肌はきれいになる
「素肌力」を発揮させるために重要なのが、クレンジングと洗顔。しかし、ここに重要なポイントが。具体的にいえば、クレンジング剤を手にとって、ぐるぐる目の周りをこすり、顔全体をゴシゴシするのは絶対にしてはいけないこと。なぜなら、ゴシゴシこすると皮膚の構造が壊れるからです。また、ほほ骨が出っぱっている部分に力を加えると、色素細胞が活性化することに。つまりそのクレンジングが、ほほ骨部分のシミをつくっているわけです。
ほとんどの人が、自分のクレンジングに力が入りすぎていることに気づいていないのだとか。実際には、力はまったく不要。いちばんいいのは、皮膚が動かないくらいのやさしいタッチで、表面を指がすべるような感覚でクレンジングを行うこと。
洗顔も同じです。肌をこすると汚れが落ちるような気がしますが、泡立てた石けんを肌につけるだけで、泡の吸着成分が汚れを落としてくれるのだといいます。モコモコにした石けんの泡だけが肌につくように、フワフワの泡で洗うと、ダメージが加わらないそうです。
次に顔ですが、強いシャワーを直接顔にかけるのはやめるべきだと、著者は断言しています。理由は、シャワーの刺激がシミをつくるから。また、シャワーの温度にも注意が必要。食器を洗うとき、お皿についた油汚れは40℃くらいのぬるま湯でジャーッと流すと落ちますが、同じことが肌の表面でも起こるのだそうです。つまり皮膚の大事な保湿成分、脂分もすべて流されて乾燥肌になってしまうということ。顔をすすぐときは、シャワーなら弱い水圧で、少し冷たく感じるくらいの温度(20~25℃)ですすぐのがベスト。(12ページより)
シャンプーの仕方もコツがある
頭を下げて洗髪すると、シャンプーがダラーッと顔に流れてついてしまいます。ところがシャンプーに含まれている強い洗浄成分は、からだのなかでいちばん弱い皮膚である顔には刺激が強すぎるのだとか。肌に少しでもつくと皮膚の構造が壊され、保湿成分がすべて流れてしまうのだといいます。
シャンプーは一度肌についてしまうと、しばらくとれないため、顔にはつけるのは厳禁。そこで、最初は体制がつらいかもしれませんが、頭を後ろに反らしたり、横に倒したりして洗髪するのがいいそうです。そして、見逃しがちで、肌荒れを起こす原因となるのがトリートメント。トリートメントの強い化学成分は、洗い流しても髪と手に残ってしまうもの。
いちばんいいのは、石けんで洗髪し、化学物質は一切使わないこと。「石けんで洗髪するなんて」と抵抗を感じる人もいるかもしれませんし、最初のうちは髪の毛がゴワゴワすることも。しかしがんばって続けると、頭皮と髪本来の健康が戻ってくるといいます。なお液体の石けんシャンプーやリンスよりも、固形石けんの方が刺激が少なくしっとりと洗いあがるとか。リンスの代わりには、薬局で売っているクエン酸がおすすめ。(15ページより)
石けん洗髪のコツ
1. 洗髪前にブラッシングする
2. 手で頭皮をもみ込むようにしてシャワーでよくすすぐ
3. 固形の石けんを頭皮に軽くすり込むようにして泡立てる。洗うのはあくまでも頭皮で、髪の毛を洗うのではないことを意識
4. 1回目は泡立たなくても気にせずさっと済ませ、洗い流して、2回目できちんと泡立てて頭皮を指の腹で洗う
5. 石けんをよく洗い流す
6. ティースプーン1杯くらいのクエン酸を手の平に数回に分けて取り、髪の毛全体にいきわたるようにつける。クエン酸は髪の毛についた水分で溶けていく(石けんで洗髪して髪の毛がアルカリ性に傾くとキューティクルが広がるので、クエン酸で普段の髪の弱酸性に戻す)
7. 頭皮をマッサージする
8. よくすすぐ
(21ページより)
髪をツヤツヤにするキューティクルが落ちてしまうため、一生懸命に洗う必要はなし。石けんは無添加のものがおすすめだそうです。またクエン酸は肌に傷があるとヒリヒリしますが、害はないのでご安心を。(20ページより)
きれいな人はこすらない
「いらない角質をコットンでこすって取りましょう」などと雑誌などに書かれていることがありますが、「『いらない角質』なんてものはありません」と著者。肌をコットンでこすると角質が弱くなり、ダメージを与えることに。角質は肌の水分を保持し、異物が入るのを防ぐ役割を持っているもの。角質が弱くなると、水分を保持する能力も、異物の侵入を防ぐ力も弱まるわけです。それが原因で乾燥肌になり、花粉やダニにも反応を起こしやすくなるのだとか。さらには肌をこすることで色素細胞が活性化するため、シミができやすくなるというリスクもあります。
角質が健康であることが、「素肌力」を発揮できる重要な一歩だというのが著者の主張。肌は常に再生されているため、仕事を終えた角質は自然にアカとなってはがれてくれるもの。「自然のままに任せる」が、美肌にとってよいことだというわけです。(24ページより)
他にも美肌を保つための方法や、避けたいこと、食べものについての知識、さらには肌荒れを克服した8人のケーススタディも掲載。読みやすくわかりやすい内容なので、美しい肌を保つための知識を、効果的に身につけることができるはずです。
(印南敦史)