Crew Blog:Bronnie Wareさんは、苦痛緩和ケアの看護師として余命3カ月の患者を看ています。末期患者の看護を長年やってきたなかで、患者から聞いた人生で後悔していることの上位5つがこちらです。
- 他人が期待する自分ではなく、本来の自分らしく生きればよかった。
- そんなに仕事ばかりするんじゃなかった。
- 自分の気持ちをもっと表に出せばよかった。
- 友達ときちんと連絡を取り合っていればよかった。
- もっと自分が幸せになることをすればよかった。
私は、会社を立ち上げて経営者として、日々些末ながらも急を要する仕事に追われていますが、仕事をしている時にこのリストのことを考えることがあります。そして時折「今週は意義のあることを何も達成できなかった」と思い返すのです。なぜ、こんなことになってしまうのでしょうか?
EvernoteのCEO、フィル・リービンさんが、スタンフォード大学で、「緊急の仕事」と「大事な仕事」の見分け方について話していた中で、こんなことを言っていました。
緊急の仕事というのは、すぐに取りかからなければならない仕事のことです。電話に出る、締め切りが迫っている仕事や、すぐに対応しなければならない仕事などです。急ぎのメールの返信も、普通は緊急の仕事です。
大事な仕事というのは、長期的な目標やミッションのためにやる仕事です。本の執筆や昇進のためのプレゼン、起業の計画などです。
大事なことは緊急であることがほとんどなく、緊急なことが大事であることもほとんどない。ドワイト・D・アイゼンハワー(第34代アメリカ大統領)
問題は、多くの場合、大事な仕事よりも緊急な仕事の方が優先されてしまうことです。しかし、1日に使える時間が限られている場合は、どうすれば大事な仕事のための時間が確保できるのでしょう?
大事なことを決めるために「意思決定マトリクス」を使う
アイゼンハワー元大統領が使っていた「意思決定マトリクス」を使って、大事なものを見極めるというのもひとつの手です。
このマトリクスは、やらなければならない仕事を判断する時に便利です。
- 大事+緊急:危機的状況、締め切り間近、問題発生事案
- 大事+緊急でない:人間関係に関すること、長期的なプロジェクトの計画、余暇
- 大事でない+緊急:妨害、会議、運動
- 大事でない+緊急でない:時間の無駄、楽しみな活動、取るに足らない仕事
大事でもなく緊急でもない仕事を排除するのはかなり簡単です。頭を悩ませる必要がありません。そこに使う時間は極力減らすようにしましょう。また、大事であり緊急性のある仕事を最初にやるべきなのは明白です。これら2つ以外の優先順位をつけるのが難しいのです。
ほとんどの人は、まず緊急性のある仕事に取りかかります。問題は、常に緊急性のある仕事ばかりしていたら、大事な仕事を終わらせることができなくなってしまうことです。急を要する仕事は常に発生し続けます。どんなにがんばっても、手が足りないくらい、際限なく出てくるものです。
「◯◯◯は本当に大事だけど、今はやる時間がない」と思ったり、口に出したことはありませんか?
大事なことをやる時は、緊急性のある仕事と引き換えに時間を作るものです。老子の言葉に「時間というのは自分でつくるもの。『時間がない』と言う時は『やりたくない』と言っているようなもの」というものがあります。また、ピカソは「やり残しても死ねるものは明日に回すだけ」と言っています。
大事な仕事を緊急にする方法
大事な仕事を緊急性のあるものにして、確実に終わらせる1番簡単な方法は、締め切りを設定することです。締め切りがあるから、緊急性のある仕事を緊急のものなのです。確かに締め切りが迫っていたら、すぐに仕事に取りかからなければなりません。大事な仕事の優先順位がいつまでたっても上がらないのは、締め切りがないからです。その結果、多くの場合、最後に手をつけるものになってしまいます。
たとえば、月末に家賃を支払わなければならないとします。締め切りと同じです。締め切りが迫るほど、より緊急性のある仕事になります。一方、体を鍛えたいという大事な目標があるとします。しかし、まったく緊急ではありません。月末までにジムに行かなければならないと思いますか? 多分行かないですよね。
つまり、大事な仕事を確実に終わらせたいと思うなら、最初にやるべきことは、締め切りを設定することです。大事な仕事というのは、かなり大規模なプロジェクトであることが多いです。締め切りを設定するには、大きな仕事を細かく細分化し、それぞれの締め切りを設定しなければなりません。
私のお気に入りのやり方は、GTDの生みの親デビッド・アレンさんのこの質問をすることです。
この仕事を進めるために、次にやらなければならない身体的な行動は何か?
これは、締め切りを設定するために必要なことです。ただし、締め切りを設定するだけでは十分ではありません。ここからがとりわけ大事な部分になります。
本気の締め切りにしなければならない理由
緊急な仕事を緊急たらしめている2番目の理由は、締め切りが非常に重要で、揺るぎなく、真面目に守らなければならないものだからです。締め切りを守らなかった場合は、かなり深刻な影響が出ます。
これは、家賃を払わなかったらどうなるかを考えれば明らかです。まず、大家さんに呼び出されて怒られます。外圧に弱いタイプであれば、これだけでも十分期日までに家賃を払う理由になるでしょう。それでも払わなければ、最終的には裁判になり家を追い出されます。ほとんどの人はこれで十分家賃を期日までに払う理由になります。
大事な仕事に締め切りを設定するだけでは、真剣に守らなければならない締め切りにはなりません。週末までにジムに行かなければと言っていても、それを守らなかったところで基本的に大した影響はありません。では、どうすれば締め切りを重大なものにできるのでしょうか? それにはいくつかの方法があります。
1. 公表する
締め切りを公表すると、締め切りをより重大なものにできます。締め切りを守ったかどうか説明しなければならないような状況にすれば、自分だけで誤魔化すことはできません。
「One Month」でクラスを始めることにするのも、かなり真剣に守らなければならない締め切りになります。たとえば、11月7日に新しいクラスを始めると人に「One Month Web Security」で告知したら、11月7日にはクラスを始めなければなりません。
スケジュール(締め切り)を守らなかったら、みんなに怒られます。なぜクラスがスケジュール通り始まらなかったのかと、クレームや不満のメールが送られてくるでしょう。会社の仕事の場合は、締め切りを決めて公表するのが、重大な締め切りになる1番強力な方法ではないかと思います。
裏を返せば、公表した締め切りは、きちんと守らなければならなくなるということです。締め切りがキツすぎてストレスになっては意味がないので、その辺りもよく考えて締め切りを設定しましょう。
2. ご褒美や罰を決める
締め切りを重大なものにする別の方法として、締め切りを守った時のご褒美、もしくは締め切りを守らなかった時の罰を決めるというのもあります。事前にご褒美や罰を決め、自分ではなく他人がそれを履行するようにします。たとえば、嫌いな政治団体宛の20万円分の小切手を切っておいて、友だちに渡します。締め切りを守らなかったら、それを政治団体に送ってもらうというような感じです。
3. 説明しなければならない人をつくる
同じ部署の同僚など、締め切りを守らなかった時に、その理由を説明しなければならない人がいると、締め切りがいかに重要かをその人に認識してもらわなければなりません。
締め切りを守らなかったことを、適当に誤魔化すことができません。締め切りを守らなかった時は、その人からのチェックが入り、気まずい会話をすることになるということです。締め切りを守らなかった場合、その人は当然あなたにとって締め切りは重要じゃないのだと思い、あなたとの約束を延期したりすっぽかしたりするようになります。
4. 常にリマインドする
定期的なリマインダーがなければ、締め切りは簡単に飛ばされてしまいます。友達や配偶者がいつも何かを催促するように、大事な仕事には執拗なリマインダーが必要です。大事な仕事を終わらせるためにも、リマインダーを自分で設定しなければなりません。
机の周りに紙に書いて貼っておいたり、カレンダーやスケジュールアプリのイベントに入れたり、タイマーをセットしたりしましょう。トイレの鏡に書いてもいいです。どんなやり方でもいいので、やらなければと思うようにしましょう。
なんだか面倒臭いと思いますか? 最初はそうかもしれませんが、何度もやっていれば楽になり、ストレスはそこまで感じなくなります。
1日、1週間、1年、もしくは一生かかるような仕事を常に抱えているかもしれません。しかし、本当に自分のエネルギーを注がなければならないのは、自分にとって大事なことを達成することです。時間がないからと言って、その大事なことが「やらずに後悔したリスト」に入らないようにしたいものです。
Urgent vs important|Crew Blog
Mattan Griffel(訳:的野裕子)
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