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aff 2022 AUGUST 8月号
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もっと食べたくなるトマト トマトまるごとまるわかり!

もっと食べたくなるトマト トマトまるごとまるわかり!

私たちにとって、もっとも身近な野菜のひとつである、トマト。しかし、意外に知らないこともたくさんありそうです。今回は、トマトの種類や歴史などの基礎知識を学んでいきましょう。

監 修 | 千葉大学特任教授 中野明正

プロが教えます。
トマトの最新トレンド

Profile

2002年、東京シティ青果(株)入社。事務職を経てせり人となり、関東近県のこだわり野菜の担当を約8年間務める。6年前からは営業推進部で企画開発などに携わる。

東京シティ青果(株)
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外部リンク

ミニトマトが増加傾向

「近年のトマトのトレンドに関して一番大きなトピックと言えば、ミニトマトがトマトの主流になったことでしょうね」と語るのは、豊洲市場の青果卸売を担う東京シティ青果(株)の吉野智子さん。昔はトマトと言えば大玉トマトでしたが、1980年代にミニトマトが登場すると、切らずに食べられる手軽さや見た目のかわいらしさが受け、お弁当の彩りなどに使われて消費が伸びていきました。「それでも15年ぐらい前は、市場の取扱額は大玉7に対しミニ3といった割合だったのですが、そこから急激に伸びて、今は大玉4.5のミニ5.5。ついに大玉を逆転しました」

北海道の長万部町と東京理科大学が協力して栽培するブランドミニトマト「エンリッチミニトマト」。「高糖度ミニと呼ばれるタイプの、ミニのなかでも美味しいトマトです」(吉野さん)

人気が高いフルーツトマト

新しい品種が次々に登場しているトマト。「味だけでなく、割れにくさや育てやすさなど、さまざまな観点で改良されています。ただ甘いものが比較的喜ばれるので、基本的には糖度を上げる傾向がありますね」。そのため、栽培方法の工夫で果物並みに糖度を高めたフルーツトマトは人気が高いそうです。「また一時的にヒットしたことで記憶に新しいのは、黄色や緑などのトマト。5年ほど前にミニトマトのビュッフェが流行した時、赤色以外の彩りもほしいということで、カラフルなトマトの需要が高まりました」

茨城県筑西市のKEKグループ(協和施設園芸協同組合)が手がける「スーパーフルーツトマト」。「フルーツトマトは中玉トマトが多いが、これは大玉品種でフルーツトマトに挑戦したものです」(吉野さん)

品種よりも旬の産地を選ぼう

しかしおいしいトマトを食べたいなら、「品種よりも産地で選んだほうがよい」と吉野さんは語ります。「トマトに限らず、野菜は旬の時期の、鮮度のよいものに勝るものはありません。出始めから少し経ったころが一番おいしく、出荷時期の終わりごろになると味も落ちてきます。例外はありますが、基本的にトマトの産地は桜前線のように南から北へ移動していきます。時期に応じてその時、旬の産地のものを選ぶようにすれば、間違いないですよ」

愛知県豊橋市のブランドミニトマト「あまえぎみ」。写真のクレアオレンジを始め、グリーン、チョコなど7種類ある。「カラフルなトマトは彩り重視のものが多いのですが、ここのトマトはおいしさも両立しています」(吉野さん)

火を入れることで
もっとおいしくなる

今後トマトの世界はどう変わっていくのでしょうか。「品種ではなく食べ方の話になりますが、トマトの加熱調理がもっと広まれば、もっとトマトを食べてもらえるようになると思います。世界的に見ると、トマトを生で食べるのはむしろ少数派。また火を入れたほうが断然おいしい。これは調理用トマトはもちろん、現在生食用として売られているトマトでも同じです。トマトはサラダだけじゃないということをアピールしていきたいですね」

いろいろあります。
トマトの種類

トマトの分類法

私たちがトマトと聞いて思い浮かべるのは、ぽってり丸く、赤系の色をしたトマト。しかし世界中には細長いもの、深いひだを持つものなど、さまざまなトマトがあります。その数はなんと1万種類以上!日本で品種登録されているものだけでも300種類を超えますが、大きく分類すると、大きさ(重さ)と色でそれぞれ3タイプに分けることができます。ただしトマトの大きさは栽培方法によって変わるので、厳密な規格はなく、おおよその目安です。

大きさによる分類 大きさによる分類

  • 大玉トマト

    100グラム以上のもの。日本では桃色系の色が一般的で、代表的な品種として「桃太郎」「麗容」「りんか409」などがあります。

  • 中玉(ミディ)トマト

    30グラムから60グラム程度のもの。大玉トマトとミニトマトの中間の、食べきりサイズのトマトです。「フルティカ」「ルネッサンス」などが有名。

  • ミニトマト

    10グラムから30グラム程度のもの。チェリートマトとも呼ばれます。「千果(ちか)」「アイコ」などが有名。また果実の大きさが直径1センチほどの超小粒の品種は、さらにマイクロトマトに分類されます。

色による分類 色による分類

  • 桃色(ピンク)系トマト:果皮が比較的薄く透明なため、桃色に見えるもの。甘味に富み、酸味やトマト臭が少なく、サラダなどの生食用に利用されるタイプ。
  • 赤色系トマト:果皮が比較的厚く赤色なため、濃く鮮やかな赤色に見えるもの。酸味と甘味が強く、主に加工用としてジュースやケチャップ、缶詰用に使われることが多い。
  • その他:桃色系、赤色系以外の色のトマトです。黄色やオレンジの他、熟しても緑色のままのものも。また2色のまだら模様が入ったものもあります。

その他の分類 その他の分類

  • 加工用トマト

    生食用トマトに対し、ジュースやケチャップの他、ホールトマトなどの缶詰に使用される赤色系トマトのこと。果皮が固く、果肉が厚めで水分が少ないため貯蔵性に優れ、ヘタがきれいに取れる点も加工向きとされます。酸味が強いため生食には向きませんが、加熱することで甘味やうま味が引き立ちます。また生食用トマトよりリコピン(リコペン)を始めとする栄養を多く含んでいます。

    加工用トマト/生食用トマト
  • フルーツトマト

    品種に関わらず、与える水や肥料を抑えたり、塩分の多い土壌を活かすなどの工夫によって甘味を引き出したトマト。普通のトマトの糖度が3度から5度なのに対し、フルーツトマトの糖度は8度から9度以上と果物並みの高さがあります。群馬県のブリックスナイン、静岡県を中心としたアメーラ、高知県の徳谷トマトなど、ブランド化されているものも多いです。

    おしり部分から放射状に延びる白い線は「スターマーク」といって、甘くおいしいトマトの目印。フルーツトマトはスターマークがくっきりと現れています。

近年再評価されつつある
「ファーストトマト」

1980年代まで日本のトマトの主流だった桃色系大玉トマト。先が尖っていて、果皮が薄いのが特徴ですが、そのために傷みやすい面もあります。「桃太郎」など、丸くて日持ちがよく、育てやすい品種が登場すると、主役の座を奪われてしまいました。しかしほのかな酸味と甘味に根強い人気があり、近年はその味わいが見直されています。

子室数が多く、種のまわりのゼリー状部分が少ないため、果肉部分がしっかりしています。

トマトの主要産地Best5 トマトの主要産地Best5

トマトの栽培に適した温度は昼間が25度から30度、夜は10度から15度で、強い日光と大きな昼夜温度差を好みます。代表的な夏野菜で、露地栽培のみだった昔は夏しか収穫できませんでしたが、現在はハウス栽培の普及によって周年出荷が可能になっています。周年出荷されるトマトは、冬春トマト(12月から6月にかけて)と夏秋トマト(7月から11月にかけて)に大きく分けることができます。冬春トマトは熊本県、愛知県、栃木県、夏秋トマトは北海道や茨城県、福島県などを中心に生産されています。熊本県が生産量ナンバーワンの理由は、1年を通じて温暖で日射量が多く、かつ海沿いの平野部から阿蘇の高原まで地形が多彩で、1年を通じて安定的に出荷できるからだと考えられます。

トマトの
あれこれ豆知識

ナスやジャガイモの親戚です

トマトは、ナスやジャガイモと同じナス科ナス属の植物です。トマトの故郷、つまり原産地は南米のアンデス高原とされています。アンデスの野生種トマトは、時期や手段は不明ですが中央アメリカのメキシコに伝わり、そこで食用として人間に栽培されるようになりました。ちなみに「トマト」という呼び名は、メキシコ先住民の言葉、ナワトル語の「トマトゥル」が由来と言われています。トマトゥルの意味は「膨らむ果実」。もともとは食用ホオズキを指す言葉でしたが、形がよく似ていて、同様に料理に使われるトマトも同じ名前で呼ばれるようになったようです。

別名は「愛のリンゴ」

メキシコのトマトは、大航海時代の16世紀にスペイン人によってヨーロッパに伝えられました。しかし毒草として有名なベラドンナなどに似ていたためか毒があると思われてしまい、食用としてはなかなか広まりませんでした。17世紀末になって南欧で食用として利用されるようになるまで、トマトは鑑賞用の植物でした。トマトのことをイタリア語では「ポモドーロ(黄金のリンゴ)」と呼んでいました。フランス語と英語ではそれぞれ「ポム・ダムール」、「ラブ・アップル」で、愛のリンゴという意味。なぜリンゴかというと、当時のヨーロッパでは価値のある果実をリンゴと呼ぶ習慣があったからです。

日本にやってきたのは江戸時代

16世紀から17世紀にかけて、ヨーロッパ人のアジア進出と共にトマトも西洋から東洋へ伝わっていきました。日本にトマトが伝来したのは17世紀なかばとされています。江戸時代初期の絵師、狩野探幽が1668年に「唐なすび」と称してスケッチを残しているほか、本草学者・儒学者の貝原益軒は『大和本草』(1709年)で、トマトについて「唐ガキ(柿)」と紹介しています。日本でも当初はヨーロッパ同様に鑑賞用として珍重されていて、食用として利用されるようになったのは明治時代に入ってから。キャベツやタマネギなどの西洋野菜と共にあらためて欧米から導入されました。

トマトの赤はリコピンの赤

トマトは美肌効果のあるビタミンC、老化を抑制するビタミンEが豊富で、ミネラルや食物繊維などをバランスよく含んでいます。さらに特筆すべきなのが、赤色の色素成分で抗酸化作用があるリコピン(リコペン)が豊富なこと。リコピンは熱に強く、脂溶性なので、油を使って加熱調理することで摂取効率が高まります。トマトは他の野菜に比べて一度にたくさん食べられるため、栄養を摂取しやすいのも魅力。ヨーロッパでは「トマトが赤くなると医者が青くなる」ということわざがあるほど、健康によい野菜なのです。

データで見る
国産トマトの今

野菜の産出額の品目別割合(2020年)

農林水産省「令和2年生産農業所得統計」

品種別割合グラフ

国別トマトの摂取量(kg/人/年)

FAO“Food Balance Sheets 2019”より

摂取量グラフ

主要な野菜のなかでもっとも産出額が高く、経済的にも重要な作物となっているトマト。好きな野菜と聞かれれば必ず名前があがるほど親しまれているトマトですが、じつは世界的に見ると日本の “トマト好き度” はまだまだ低いのです。次週以降、トマトの魅力をもっと見ていきましょう。

今週のまとめ

人気の野菜でもあるトマトは、
新しい品種も続々登場。
産地や旬を意識すれば1年中楽しめる、
バリエーション豊富な野菜です。

(PDF:10,994KB)

お問合せ先

大臣官房広報評価課広報室

代表:03-3502-8111(内線3074)
ダイヤルイン:03-3502-8449

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