電機メーカーのバルミューダは18日、社外役員が自社株に関してインサイダー取引を疑われるような株取引をしていたとして、当該役員に対して役員報酬の全額返納などの処分を下したと公表した。
報道によると、問題の役員が問題の株取引を行ったのは今年5月13日のこと。同日はバルミューダが業績予想の上方修正、さらにスマートフォン事業への参入を発表するタイミングだったため、同社が社内規程に基づいて承認した買い付けの期間は、翌日の14日以降となっていたが、同役員はその承認期間外に株を買い付ける格好に。
同役員は、その日のうちに「売買承認期間外に誤って取引を行った」と会社に申告。バルミューダは当初、今回の株取引はあくまで売買承認期間に関する錯誤によるもので、悪意は認められないとしていたが、とはいえ社内規程に違反したという事実に対しては厳正に処分すべしと、処分を決定したという。
なお、不正な株取引を行った社外役員には、今年5月~10月までの役員報酬5か月分の全額返納と、11月以降の役員報酬5か月分を100%減給するという処分が。また、当初会社が適切な処分を行わなかったということで、寺尾玄社長にも減給10%(3か月間)の処分が下されている。
約半年後の不祥事公表に疑惑の視線
その後の報道によると、不正な株取引を行った社外役員は、なんとメガネ販売大手「ジンズホールディングス」の社長を務める田中仁氏だったことが判明した今回の件。
実際、その当日のバルミューダの株価は、同役員が買い付けたタイミングでの安値から一転、業績予想の上方修正などの好材料が投下されたことで一気に高騰したという。それだけに、インサイダー取引を疑われるのも仕方のないところ。
バルミューダ、5月13日引け後に上方修正と例のスマホ参入する開示を出した。当日の正午に社外役員が株を買った。当日はチャート(青色箇所)と安値どんぴしゃ。この社外役員はごめんなさい申し訳ないですではなく、腹切らせるのが相応しい。 pic.twitter.com/bTv0wyiqrl
— じろ(26) (@26ooo) November 18, 2021
報じられている事のあらましを見るに、本人も当日のうちに社内規程に反した取引だったと自ら申告していることもあり、今回の件はやはり故意のものではなく、いわゆる“うっかりインサイダー”だった可能性が高そう。とはいえ、この手の疑惑の株取引に“うっかり”や“悪意はない”という言い訳は通用しないのも、言うまでもないことだろう。
また、疑惑の株取引自体とは別に問題視されているのが、今年5月にあった今回の出来事が、なぜ今のタイミングで公表されるに至ったのかという点。
同社による経緯説明によると、当初は同役員の“うっかり”が濃厚ということで、穏便な処分となる予定だったが、その後に第三者も交えた再調査も行われたことで、公表のタイミングが遅れたというのが言い分のよう。ただ、ネット上では、同社スマホの発表日である11月16日より前に不祥事を明らかにするのは避けたかったのでは、といった見方も一部から浮上するなど、その遅すぎる公表にも疑惑の視線が集まっている。
バルミューダ、発表が微妙に遅い気がするんだけど、スマホ発売前だと今回の開示でニュースの反応がネガティブになるから遅らせたんだろうな、かなりマジで。ホント糞(´・ω・`)
— ざら速(ザラ場速報) @ときどき仮想通貨 (@ZARASOKU) November 18, 2021
新規参入のスマホもその評判は…
今回の件でも取沙汰されている、同社初のスマートフォン「BALMUDA Phone」。しかしその評判は、SIMフリー版でも10万円超という強気な価格設定の割には、スペック的にはミッドレンジがいいところで、さらに丸みを帯びた特徴的なデザインも好き嫌いが分かれるということで、賛否でいえば“否”のほうが目立つといった状況だ。
また、今月16日に行われた製品発表会では「今のスマートフォンはあまりにも画一的である」と、iPhoneの一人勝ち状態となっている日本のスマホ市場に一石を投じるといった姿勢も見せていた同社の寺尾玄社長だったが、その社長の振る舞いがまさにスティーブ・ジョブズそのものだったことも話題に。ネット上では「いきりスタイルは見事に踏襲」「社長がこれをしたかっただけなんじゃ」などと、揶揄する声が溢れる格好となっている。
『スマートフォンがどれも同じに見えてiPhoneに偏りすぎてるところにビジネスチャンス見出した』と言いながら、iPhoneの新作発表会のいきりスタイルは見事に踏襲してて、いきなりふいたわ。こゆ不思議な全能感に陥った時が終わりのはじまり。 pic.twitter.com/sOQFFV8JKD
— 哲戸(´・_・`)次郎 (@pp_GIRAUD) November 16, 2021
バルミューダの社長めっちゃジョブズ意識してて草
当の本人ですら現CEOに代が変わる前、死の間際に俺の真似だけはするなって遺したはずなんだが…
実際にあの頃のAppleに感化された結果がこれだよ(笑) pic.twitter.com/vqquYF7FIV
— ⚓( ^)o(^ )とある閃光の情強識者/アーリーコネクター🎐🐇⌚💻🔌💳 (@Early_san_PRO) November 16, 2021
バルミューダスマホ、マジで社長がこれをしたかっただけなんじゃ pic.twitter.com/nDlhfxfTJj
— NHDM (@NHDMMMMM) November 16, 2021
さらに議論を呼んでいるのが、この「BALMUDA Phone」には社長が作曲した着信音がプリインストールされているという点。まるで、会長自らが作詞した演歌が店内に延々と流れる「富士そば」のような話だが、楽曲の出来の良し悪しはさておき、あまりに社長の自己顕示が過ぎるのではないかと、さしものネット上もやや引き気味といった反応だ。
バルミューダフォン
単なるかっかりスペックだと思ったら
着信音とかを社長が作曲してるそうで「映画館や電車の中でも怒られないような、素敵な音を目指した」
余計なことまでするなよ
— 村崎鷲鷹 (@OwlEagleHawk) November 19, 2021
社長作曲の着信音のエピソードにバルミューダ製品への憧れが一気に消え失せた。
— にえあ@サンクリありがとうございました♪ (@niea58) November 18, 2021
意識高い系で駄目な事例をバンバン進めていってる感じだなぁ 【朗報】バルミューダスマホ、社長が作曲した着信音も入ってる https://t.co/rU3jB6hCzD
— makoto@腎臓ガンステージ1(特に治療必要なし (@mako0079) November 18, 2021
DC扇風機ブームのきっかけを作った「GreenFan」や、トースターとしては異例のヒットとなった「BALMUDA The Toaster」など、ハイセンスなデザインかつ革新的な製品を数々と発表し、近年元気がない日本の家電メーカーのなかにあって期待の存在となっていたバルミューダ。しかし今回の“うっかりインサイダー”にしろ、“コレジャナイ感”がプンプンの「BALMUDA Phone」にしろ、ある種の“タガの緩み”が感じられる状況とあって、今後の行く末が大いに心配されるところである。
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