2024年度補正予算が成立し、総額13兆9,433億円と過去最大規模に達しました。政府は国民民主党の提案を取り入れるなど、野党の協力を得て成立にこぎつけた一方で、補正予算の政治的な性格がより顕著になっています。本来の緊急対応という目的から乖離し、与野党間の駆け引きや政権内の圧力が反映された予算編成に疑問の声が広がっています。日本財政の課題を浮き彫りにした今回の動きを、詳しく解説します。(『 マンさんの経済あらかると マンさんの経済あらかると 』斎藤満)
※有料メルマガ『マンさんの経済あらかると』2024年12月14日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。
プロフィール:斎藤満(さいとうみつる)
1951年、東京生まれ。グローバル・エコノミスト。一橋大学卒業後、三和銀行に入行。資金為替部時代にニューヨークへ赴任、シニアエコノミストとしてワシントンの動き、とくにFRBの金融政策を探る。その後、三和銀行資金為替部チーフエコノミスト、三和証券調査部長、UFJつばさ証券投資調査部長・チーフエコノミスト、東海東京証券チーフエコノミストを経て2014年6月より独立して現職。為替や金利が動く裏で何が起こっているかを分析している。
政治化する補正予算
17日午後、13兆9,433億円の24年度補正予算が成立しました。少数与党の苦しさから、野党の賛成を得るために、特に28議席を有する国民民主の103万円の壁引き上げなどを取り入れました。
この結果、昨年の補正予算13兆2,000億円を上回る規模になったこと、そして橋本政権以来初となる野党立憲民主の減額修正を一部取り入れる異例の動きも見せました。
まず補正予算の編成が、本来の目的と大きく乖離して半ば政治化しています。
本来は、想定外の税収減で歳入の補填が必要になった場合や、景気が急速に悪化した場合に、これを緩和するために減税をしたり、公共事業を追加したりする緊急経済対策が必要になった場合、また最近では大規模な自然災害やコロナなどのパンデミックに対応する場合などに補正予算が編成されました。
しかし、今回の補正にあたっては、新たな緊急事態が発生したわけではなく、政府内に「昨年13.2兆円の補正を組んだから、今年はこれを上回る規模の補正予算を組む」、という「理屈にならない理屈」によって編成され、先に規模ありきの予算編成となりました。
中身を吟味する前から13兆円から15兆円の規模が想定されました。この規模になるよう、半導体事業の支援や地方創生事業が組まれましたが、これらは本来、本年度予算の段階で各省庁から提示され、予算審議した項目のはずです。
実際には「補正予算」という名の第二の予算と化し、厳格な国会審議を経ずに支出を潜り込ませる「政治手段」と化しています。
これに対して石破総理は総裁選当時、いきなり補正予算の編成とはならないと、こうした動きを批判していました。ところが総理に就任したとたんに、党内の圧力に屈し、自民党の分断を回避するために旧安倍派などからの補正予算編成圧力に屈したことになります。
これで25年度にプライマリー・バランス(PB)の黒字化という目標がまた困難になりました。
オール大きな政府志向
日本の政治を特色づける大きな点は、与野党問わず、およそすべての政党が「大きな政府」を志向していることです。米国とは大きく異なります。
米国の場合、民主党が社会保障の充実など、弱者支援のために政府が大きく関与する姿勢を見せ、「大きな政府」を掲げています。これに対して共和党は、国民生活や経済に政府は極力関与せず、民間に任せるべきと言い、「小さな政府」を志向しています。トランプ次期政権がすでに示唆しているように、国民から税金をとらず、余計な規制はかけず、国民や企業に自由に行動してもらうことを掲げています。
ところが、日本の場合は「維新」が効率的な政府の在り方を求めるものの、それでも政策面ではほかの政党とともに、政治の関与を大きくし、少子高齢化への支援策のみならず、万博やオリンピック誘致なども含めて、およそすべての政党が大きな政府を志向しています。官僚が自らの影響力、職権を確保したいこともあって、規制は増えることはあってもなかなか減りません。
自民党までもが中国共産党と変わらないような、国民の統制管理、政府関与を志向しています。マイナンバー保険証など、国民から反発される問題まで押しとおし、国民の情報をすべて政府が把握し、管理しようとしています。それだけ予算も膨れ上がります。
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