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日本は20年間で家計所得が100万円減 英米仏は2~2.5倍増

景気低迷が続いている。大前研一氏は、景気反転のカギとして「三大出費」を軽減することを指摘。中間層に所得100万円増の政策を打ち出せば、景気回復に効果があると述べている。

* * *
子ども手当制度が10月から一部変更になり、対象世帯には各自治体から再申請の手続き書類が届いている頃だろう。少子高齢化が進む日本にとって、子育て支援策はもちろん重要だ。

しかし年間10数万円では、ほとんど無意味である。それどころか、子ども手当の対象となる0~15歳の子供がいる世帯の中には、子ども手当の財源をひねり出すために実施された所得税の扶養控除廃止により、かえって負担が増えたケースも少なくない。

とくに子供がいて、マイカーを所有し、マイホームも買った中流層の世帯は「子持ち」「車持ち」「家持ち」の“三重苦”にあえいでいる。20年前は「教育費」「マイカー」「住宅ローン」の三大出費が家計支出に占める割合は30%くらいだったが、今は50%を超えているのだ。

逆にいえば、それ以外の食費、光熱費、被服費、医療費、交際費、小遣いなどの支出の合計が50%を切っているということであり、家計に全く余裕がない状況になっているわけだ。

実は、日本はこの20年間、ほとんどすべての所得層と世代で、家計所得が100万円ぐらい減少している。そういう国は世界の先進国には見当たらない。アメリカ、イギリス、フランスは20年前より2~2.5倍に増えている。もちろん新興国は、もっと伸び率が高い。

生活者の側にも問題がある。日本の子育て世代の中流層は、家計を圧迫している教育費、マイカー、住宅ローンという三大出費を、この間ほとんど見直していない。可処分所得は大幅に減っているのに未だに多くの家庭が、子供を有名校に進学させようと学習塾に通わせ、マイカーを保有し、持ち家にこだわっている。

このため彼らは金銭的、精神的に追い込まれ、買い物をしよう、外食をしよう、旅行に出かけようといった意欲がなくなって消費がシュリンクしているのだ。

つまり、日本の景気が良くならない最大の理由は、若年層や低所得層の貧困化ではなく、子育て世代の中流層(アッパーミドル)に余裕がなくなったことなのだ。そこに政治が気づいて、この人たちの可処分所得がキャッシュで正味100万円増える政策を打ち出さなければ、景気は反転しないのである。

※週刊ポスト2011年11月18日号

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