最新記事
独裁者

トランプが決めたことに文句は言えない「文化大革命時代の中国とそっくり」毛沢東との共通項

Trump’s Goal Is Chaos

2024年12月5日(木)10時40分
ハワード・フレンチ(コラムニスト)
トランプが決めたことに文句は言えない「文化大革命時代の中国とそっくり」毛沢東との共通項

Antonello Marangi - shutterstock -

<破壊的な閣僚人事を連発する次期米大統領の言動は、カオスによる権力奪取を狙った中国の文化大革命とよく似ている>

なぜ今、アメリカで毛沢東なのか? キーワードは復活と混乱だ。毛は現代中国「建国の父」だが一度は失脚しかけ、雌伏7年、不屈の闘志で1966年に復活を果たしている。

彼が仕掛けたのは「文化」戦争だ。ある演劇作品への批判をきっかけに、中国共産党に入り込んだブルジョア的要素への攻撃と、自分に逆らう党幹部の排除を始めた。さらに首都・北京の大学生を動かして、体制内エリートに「裏切り者」や「反革命分子」のレッテルを貼らせた。


若者たちは熱狂した。約10年にわたる「文化大革命」の始まりだ。毛沢東は「司令部を砲撃せよ」との檄を飛ばした。「造反」は全国に広がり、国中が大混乱に陥った。若者たちが権威者・権力者に襲いかかり、数え切れないほどの人が死んだ。

2000年代初頭に記者として中国に駐在していた筆者は、初期の中心的活動家だった元大学講師の聶元梓に取材したことがある。当時84歳になっていた彼女は、「まさかあんな大惨事を招くとは思っていなかった。事態を理解してからは、活動をすぐにやめた」と語り、すごく後悔している様子だった。

だが毛沢東に後悔はなかった。むしろ混乱に狂喜し、「天下の全てが大混乱、実に素晴らしい」と述べたとされている。

そもそも、文化大革命は毛沢東が自らの権威と権力を取り戻すために始めたもの。そのため何よりも、49年の共産革命以来一貫して中国を統治してきた諸制度、つまり党と政府の指導部および官僚機構の破壊を目指した。

農業
日本の技術で世界の干ばつ解決へ...ナガセヴィータの研究者に聞く「糖」の意外な活用法
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ウクライナ経由のロシア産ガス輸送停止、契約延長され

ワールド

USスチール生産能力削減に米政府の拒否権、日鉄が提

ワールド

プーチン大統領「自信を持って前進」、新年演説で団結

ビジネス

NY外為市場=ドル上昇、金利差が背景 円対ドルで4
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ISSUES 2025
特集:ISSUES 2025
2024年12月31日/2025年1月 7日号(12/24発売)

トランプ2.0/中東&ウクライナ戦争/米経済/中国経済/AI......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    真の敵は中国──帝政ロシアの過ちに学ばない愚かさ
  • 2
    JO1やINIが所属するLAPONEの崔社長「日本の音楽の強みは『個性』。そこを僕らも大切にしたい」
  • 3
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリスマストイが「誇り高く立っている」と話題
  • 4
    キャサリン妃の「結婚前からの大変身」が話題に...「…
  • 5
    ロシア、最後の欧州向け天然ガス供給...ウクライナが…
  • 6
    カヤックの下にうごめく「謎の影」...釣り人を恐怖に…
  • 7
    スターバックスのレシートが示す現実...たった3年で…
  • 8
    電池交換も充電も不要に? ダイヤモンドが拓く「数千…
  • 9
    「こんな物が危険なの?」運転中に胸ポケットに入れ…
  • 10
    イースター島で見つかった1億6500万年前の「タイムカ…
  • 1
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊」の基地で発生した大爆発を捉えた映像にSNSでは憶測も
  • 2
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3個分の軍艦島での「荒くれた心身を癒す」スナックに遊郭も
  • 3
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリスマストイが「誇り高く立っている」と話題
  • 4
    地下鉄で火をつけられた女性を、焼け死ぬまで「誰も…
  • 5
    ウクライナの逆襲!国境から1000キロ以上離れたロシ…
  • 6
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 7
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命を…
  • 8
    ヨルダン皇太子一家の「グリーティングカード流出」…
  • 9
    JO1やINIが所属するLAPONEの崔社長「日本の音楽の強…
  • 10
    真の敵は中国──帝政ロシアの過ちに学ばない愚かさ
  • 1
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 2
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊」の基地で発生した大爆発を捉えた映像にSNSでは憶測も
  • 3
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が明らかにした現実
  • 4
    ロシア兵「そそくさとシリア脱出」...ロシアのプレゼ…
  • 5
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 6
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 7
    半年で約486万人の旅人「遊女の数は1000人」にも達し…
  • 8
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
  • 9
    「炭水化物の制限」は健康に問題ないですか?...和田…
  • 10
    ミサイル落下、大爆発の衝撃シーン...ロシアの自走式…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中