サッカーの11年女子W杯ドイツ大会で日本代表「なでしこジャパン」の主将として初優勝に貢献し、得点王と最優秀選手にも輝いたMF澤穂希(37=INAC神戸)が今季限りで現役を引退する。16日、マネジメント会社が発表した。17日に東京都内で記者会見を開く。8月にJ1仙台の運営・広報部長の辻上裕章氏(39)と結婚。来年のリオデジャネイロ五輪出場を目指すと公言してきたが、突然の引退発表となった。
日本の女子サッカー界を背負ってきた澤がユニホームを脱ぐ決断をした。午後1時半すぎ、マネジメント事務所から今季限りでの引退が発表された。8日に都内で行われたイベントでは「来年はすぐにリオ五輪の予選もありますし、今年以上に忙しい1年。トレーニングして、リオ五輪を目指したい」と、現役続行の意思を示していたが、正反対の発表となった。
「なでしこジャパン」の大野、近賀、川澄ら、所属するINAC神戸のチームメートには神戸市内の練習場で行われた午前の練習後に、自ら「今年で引退します」と伝えた。仲間も声を発することができないほど驚いていたという。INAC神戸は今季最後の公式戦として皇后杯全日本女子選手権を戦っており、19日には準々決勝のAS埼玉戦(味フィ西)がある。練習ではフルメニューをこなしており、クラブ関係者は「妊娠はしていないと思います」と説明した。
11年女子W杯ドイツ大会優勝で「なでしこジャパン」の存在を確固たるものに変えた。12年ロンドン五輪以降、代表に選出されない時期も乗り越え、今夏の女子W杯カナダ大会では男女通じて史上初の6大会連続出場。プレーだけでなく宮間主将らを支える立場でチームに貢献する新たな役割も担った。近年は全盛期のようなプレーができていない不安も周囲に漏らしており、決断の一因となったようだ。日本女子の第一人者として長く引っ張ってきた背番号10の勇姿はもう見られない。
澤は今日17日、午前中に神戸市内で練習してから都内に移動し、午後5時半から永田町で記者会見を開く。8月8日に結婚後は、辻上氏がいる仙台とINAC神戸の本拠地のある神戸を往復したり、澤の実家のある都内で会うなど遠距離婚が続いている。約30年の現役生活に終止符を打つに至った思いや、「第2の人生」について自らの口で説明する。【鎌田直秀】
◆澤穂希(さわ・ほまれ)1978年(昭53)9月6日、東京・府中市生まれ。93年、中学3年の15歳で日本代表にデビューし、通算205試合出場、83得点はいずれも男女を通じて史上最多。主将を務めた11年女子W杯ドイツ大会では、米国との決勝の延長後半に同点ゴールを決め、日本を初優勝に導いてMVP。5ゴールで得点王にも輝いた。12年1月には世界年間女子最優秀選手賞を受賞し、ロンドン五輪では銀メダル。準優勝だった15年W杯カナダ大会にも最多の6大会連続で出場した。8月にJ1仙台の運営・広報部長の辻上裕章氏と結婚した。