2次リーグ(L)首位のフォルティウスが4年ぶりの優勝を果たし、26年ミラノ・コルティナ五輪に夢をつないだ。同2位の北海道銀行との“新旧”対決で、延長戦に突入する熱戦を8-7で制した。23年に出産し今季復帰したスキップ吉村紗也香(33)が最終投を冷静に決め、五輪代表候補決定戦(9月、北海道・稚内)への切符を獲得。4年前に大逆転負けを喫し、22年北京五輪を逃した舞台に戻りリベンジする。男子はSC軽井沢クがロコ・ソラーレを7-5で破り2大会ぶりの優勝を果たした。
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りんとした顔が、一瞬にして崩れた。第11エンド(E)のラストショット。吉村は黄色の石を丁寧に投げた。赤い円の上にピタリと止め1点を追加。念願の優勝が決まってもクールな表情だったが、仲間と5人で肩を組むとこらえきれなかった。涙があふれた。
崩れない強さがあった。1次Lから6連勝。2次Lでロコ・ソラーレに敗れても立て直す。この日は第10Eに2点差を追いつかれ焦ったが突き放した。「めちゃめちゃうれしい。ほっとした」と笑みを浮かべた。
激動の4年間を乗り越えた。21年大会は「北海道銀行フォルティウス」の名で優勝。しかし同年11月にスポンサー契約を打ち切られた。会社は20歳前後の若手を集め、女子カーリング部を新設。26年五輪に向けて方針転換された。看板を失い「フォルティウス」として活動。スポンサーゼロが続き、7カ月は貯金を切り崩した。23年度からはクラウドファンディングで遠征費を稼いだ。ラテン語で「より強く」を意味するチームは、必死に前を向いた。
前回優勝時は新婚だった司令塔はママになった。23年12月に第1子を出産。産休期間を仲間は有効活用した。「吉村が帰ってきた時、さらに強い状態になっていよう」と約束。セカンド小谷がスキップを務め、サード小野寺はSC軽井沢クの海外遠征に参加した。戦術の幅が広がり、安定した戦いに進化した。吉村は「チームの理解があったから」と感謝。息子には「メダルをかけてあげたい」と母の顔をのぞかせた。
五輪への道をつないだ。4年前の決定戦はロコに2連勝から3連敗。北京行きを逃した。「逆転負けで悔しいの一言。覚悟を持って今回は臨んだ」。敗戦を糧に最高の結果をつかみ、再挑戦の資格を得た。次は3月の世界選手権で、日本女子として枠確保を狙う。「ここは通過点の1つ。日本代表として出場権を取りたい」と宣言。より強くなった5人が、五輪代表の座をつかみとる。【飯岡大暉】