AEX2025受賞:ディーアンドエムホールディングス 岡田一馬氏
【インタビュー】プレミアムに進化するマランツブランド、最高峰モデル「10シリーズ」の新たな挑戦
オーディオ銘機賞2025
受賞インタビュー:ディーアンドエムホールディングス
国内オーディオマーケットに展開される数々の製品の中で、卓越した性能、革新的な内容を持ち、かつオーディオマインドに溢れる “真の銘機” を選定するアワード「オーディオ銘機賞2025」において、マランツのSACDプレーヤー「SACD 10」、プリメインアンプ「MODEL 10」が金賞を受賞した。こだわりを結集させたブランド最上位クラスの製品群の投入、その狙いと意気込みを、ディーアンドエムホールディングスの岡田一馬氏が語る。
―― オーディオ銘機賞において、マランツブランドでは初の金賞受賞ですね。おめでとうございます。
岡田 このたびは本当にありがとうございます。「SACD 10」「MODEL 10」でマランツとして初めて、この最高賞を頂戴したということで一同非常に感謝致しております。
―― 2024年8月に発表された金賞受賞2モデルと、10月に発表されたネットワークプレーヤー「LINK 10n」が “10シリーズ” ということですね。これらの価格帯は200万円前後とトップエンドに位置付けられていますが、マランツブランドがハイエンドオーディオの領域に新たに参入したとして注目を集めています。
岡田 おっしゃるとおり、10シリーズはハイエンドオーディオの領域で語られる存在と自負しています。ただ、私どもとしては、2006年発売のモノラルパワーアンプ「MA-9S2」、ステレオプリアンプ「SC-7S2」、そしてSACDプレーヤー「SA-7S1」に続く存在をようやく作ることができたという思いで、新規参入ではなく再参入のつもりでおります。
従来のトップエンドモデル「PM-10」「SA-10」のさらに上の存在であり、「MODEL 30n」「MODEL 40n」から続くデザインの系統をさらに進化させ、中身も一新しました。マランツはブランドをよりプレミアム化する方向で展開していますが、新たな10シリーズは、トップエンドでそういった取り組みを象徴するものとも言えます。
マランツが追求することをあらためて申し上げますと、プレミアムオーディオとしてブランドをあらためて構築すること。そしてオーディオファイルのお客様はもちろんですが、オーディオへの関心が今まで薄かったラグジュアリー層のお客様に新たにリーチすることです。10シリーズはそういった目的のもとで製品ラインナップの一番上に位置するものであり、今後さらにラインナップを充実させていきたいと考えております。
―― 「MODEL 10」は、ハイエンドの価格帯でもセパレートアンプではなく、プリメインアンプとされたのはなぜでしょうか。
高山 昨今はハイエンドの価格帯でも、一体型アンプが受け入れられるようになってきました。ライフスタイルの変化もありますが、技術的な進化がその大きな要因です。私どもにとっては、D級アンプと呼ばれるスイッチングアンプの進化が背景にありました。
スイッチングアンプには10年前から取り組み、当初は外から調達したブラックボックスの状態のアンプだったものが、今ではPURIFI社と協業し、私どもも設計から関与して意図するものが作れるようになりました。オーディオに関わるパーツも我々が選定し、白河工場で組み立てています。
ここに至るには随分時間がかかりましたが、我々にとってブラックボックスの限りなく少ない、オリジナルのスイッチングアンプを作れる環境が整った。そういったテクニカルな背景がまずベースにあるのです。
この新しいスイッチングアンプをもってすれば、従来のオーディオの形やサイズに必ずしもはめ込む必要はないわけです。私どもの展開するBowers & Wilkinsのような最先端のスピーカーがどんどん進歩していますので、それを鳴らす最適な形を我々が再定義し、私たちにしか出せない音を出していこうということです。
結果的に「MODEL 10」でご提案させていただいたのは、従来のプリメインアンプとセパレートアンプのそれぞれの長所を融合し一筐体に収めた新しい形のアンプです。そしてさらに発展形として、LとRチャンネルにそれぞれ1台ずつ「MODEL 10」を使用し、連動して駆動させる非常にユニークな方式も提案しています。これは、通常のセパレートアンプとはことなり、L/Rを完全に独立させた駆動方式で、近代スピーカーが本来もつ壮大な空間表現能力を引き出すことができました。
―― 「SACD 10」も、マランツのSACDプレーヤーの集大成に相応しい内容となっていますね。
高山 はい、ありがとうございます。私どもマランツは、CDプレーヤーに関する技術に自信と誇りをもっています。1982年にフィリップス・マランツ陣営としてCDプレーヤー「CD-63」を、そして1999年にSACDプレーヤー「SA-1」を発売させていただき、オリジネーターとしてCD、SACDの時代を歩んできました。所有する技術もユニークです。まずは、フィリップスのD/Aコンバーターの遺伝子を受け継いだ、世界にひとつだけのオリジナルDACを所有しています。そして、数多くのハイエンドブランド様にも供給しているSACDドライブを自社で開発していることなどです。
今、CDの発売から40年が経ち、もちろん “SACD” 再生機の集大成でもありますが、それ以上に、“コンパクトディスク” 再生機の集大成をつくりたいという思いで開発しました。私たちが40年かけてゆっくりと積み上げてきたヘリテージをすべてアップデートし、考えうる最高の筐体に収めたのが「SACD 10」です。
―― 10シリーズはデザインも非常に印象的ですが、どういった経緯で決定されたのでしょうか。
岡田 10シリーズのデザインは一目見てマランツとわかってもらえるように、70年の歴史が培ってきたアイコニックな要素を大切にしています。たとえば、アンプの前面にあるポートホール(丸窓)などです。モダンデザインのなかに、どこか懐かしさも感じていただけるものとなっています。また、オーディオファイルの方のみならず、ご家族の方にも所有する喜びを感じていただくために、今のリビングルームともマッチするように、デザイナーが信念をもって作りました。
そして、私どものインダストリアルデザイナーは、常に、音質への影響も意識しながらデザインを形にしています。マランツの創業者であるソウル・バーナード・マランツ氏自身がインダストリアルデザイナーで電気技術者でもあったので、外観と音質とを包括したものづくりは今も常に意識されているのです。
「MODEL 10」は天板の部分が透かしになっていて、電源を入れると中のアンプの発光が見えるといったギミックもあります。コストも手間もかかり、設計者にとっては当初抵抗があったでしょうが、そんな中で皆で意見を出し合いながら、最終的にいい形になりました。
カラーも、かつての「Model 7」「Model 9」のような “シャンパンゴールド” が久しぶりに復活して、非常に好意的に受け止めていただいています。新しい製品のデザインは一般的に好みが分かれるものだと思いますが、10シリーズに関しては否定的なご意見を伺ったことはないですね。
―― 既存のオーディオファイルの方々と、オーディオに関心の薄いラグジュアリー層の方々、それぞれに10シリーズをどのようにアピールされますか。
岡田 オーディオファイルのお客様には音質的なパフォーマンスにより10シリーズの存在感を強く示せると自負していますが、オーディオ機器をそれほどご存知ないお客様にどうアプローチするかは今後の課題だと思っています。ただ、弊社が展開するスピーカーブランドであるBowers & Wilkinsとの連携がひとつの手段になります。彼らのスピーカーと10シリーズの組み合わせを活用しつつ、いろいろな試行錯誤をしながらぜひチャレンジしたいと思っています。
オーディオファイルの方々に対しての訴求は、今まで同様に、専門店様と手を携えながら聴いていただく機会を広げて参ります。試聴イベントなどの地道な活動を続けていくということですね。
―― マランツとデノン、2つのオーディオブランドの差別化や展開はどのようにお考えでしょうか。
岡田 2つのブランドを合わせてカバーする市場領域を広げていきたいと考えております。マランツは先ほど申し上げたように、オーディオに今まで関心の薄かったラグジュアリー層のお客様にもオーディオを所有する素晴らしさを訴求していきたいと思っております。
デノンはプレミアムなハイファイオーディオも充実させながら、ヘッドホンなど新たなカテゴリーでより幅広いお客様層にアピールし、我々のカバーするマーケットを拡大するという方針です。初めての試みとして、セレブリティのキャラクターを起用したキャンペーンも行いましたが、今後もいろいろなアイデアで試行錯誤しながら推進していきたいと思います。
―― 最近の市況の様子、手応えはいかがでしょうか。
岡田 日本の市況は安定しており、手応えは悪くありません。他の国々はコロナで伸びた需要のあおりで落ちている状況が続いておりました。アメリカは下げ止まった感はありますが、ヨーロッパは戦争の影響もありまだ見通しが不透明です。
日本での販売状況は、2024年は若干落ちましたがそれでも安定していて、月々の変動はありますが、振り返ると2024年からは年間でみれば堅調な状況です。ここ数年、日本は世界中の中でもかなり安定している市場と言えると思います。
―― 新たな存在感を示す製品の投入で、今後の動向も期待されますね。有難うございました。
受賞インタビュー:ディーアンドエムホールディングス
国内オーディオマーケットに展開される数々の製品の中で、卓越した性能、革新的な内容を持ち、かつオーディオマインドに溢れる “真の銘機” を選定するアワード「オーディオ銘機賞2025」において、マランツのSACDプレーヤー「SACD 10」、プリメインアンプ「MODEL 10」が金賞を受賞した。こだわりを結集させたブランド最上位クラスの製品群の投入、その狙いと意気込みを、ディーアンドエムホールディングスの岡田一馬氏が語る。
■ハイエンドオーディオの世界で新たな存在感を示す、偉大な進化を遂げた10シリーズ
―― オーディオ銘機賞において、マランツブランドでは初の金賞受賞ですね。おめでとうございます。
岡田 このたびは本当にありがとうございます。「SACD 10」「MODEL 10」でマランツとして初めて、この最高賞を頂戴したということで一同非常に感謝致しております。
―― 2024年8月に発表された金賞受賞2モデルと、10月に発表されたネットワークプレーヤー「LINK 10n」が “10シリーズ” ということですね。これらの価格帯は200万円前後とトップエンドに位置付けられていますが、マランツブランドがハイエンドオーディオの領域に新たに参入したとして注目を集めています。
岡田 おっしゃるとおり、10シリーズはハイエンドオーディオの領域で語られる存在と自負しています。ただ、私どもとしては、2006年発売のモノラルパワーアンプ「MA-9S2」、ステレオプリアンプ「SC-7S2」、そしてSACDプレーヤー「SA-7S1」に続く存在をようやく作ることができたという思いで、新規参入ではなく再参入のつもりでおります。
従来のトップエンドモデル「PM-10」「SA-10」のさらに上の存在であり、「MODEL 30n」「MODEL 40n」から続くデザインの系統をさらに進化させ、中身も一新しました。マランツはブランドをよりプレミアム化する方向で展開していますが、新たな10シリーズは、トップエンドでそういった取り組みを象徴するものとも言えます。
マランツが追求することをあらためて申し上げますと、プレミアムオーディオとしてブランドをあらためて構築すること。そしてオーディオファイルのお客様はもちろんですが、オーディオへの関心が今まで薄かったラグジュアリー層のお客様に新たにリーチすることです。10シリーズはそういった目的のもとで製品ラインナップの一番上に位置するものであり、今後さらにラインナップを充実させていきたいと考えております。
■“ハイエンド” に相応しい音と風貌。10シリーズの誕生を実現した技術の進化
―― 「MODEL 10」は、ハイエンドの価格帯でもセパレートアンプではなく、プリメインアンプとされたのはなぜでしょうか。
高山 昨今はハイエンドの価格帯でも、一体型アンプが受け入れられるようになってきました。ライフスタイルの変化もありますが、技術的な進化がその大きな要因です。私どもにとっては、D級アンプと呼ばれるスイッチングアンプの進化が背景にありました。
スイッチングアンプには10年前から取り組み、当初は外から調達したブラックボックスの状態のアンプだったものが、今ではPURIFI社と協業し、私どもも設計から関与して意図するものが作れるようになりました。オーディオに関わるパーツも我々が選定し、白河工場で組み立てています。
ここに至るには随分時間がかかりましたが、我々にとってブラックボックスの限りなく少ない、オリジナルのスイッチングアンプを作れる環境が整った。そういったテクニカルな背景がまずベースにあるのです。
この新しいスイッチングアンプをもってすれば、従来のオーディオの形やサイズに必ずしもはめ込む必要はないわけです。私どもの展開するBowers & Wilkinsのような最先端のスピーカーがどんどん進歩していますので、それを鳴らす最適な形を我々が再定義し、私たちにしか出せない音を出していこうということです。
結果的に「MODEL 10」でご提案させていただいたのは、従来のプリメインアンプとセパレートアンプのそれぞれの長所を融合し一筐体に収めた新しい形のアンプです。そしてさらに発展形として、LとRチャンネルにそれぞれ1台ずつ「MODEL 10」を使用し、連動して駆動させる非常にユニークな方式も提案しています。これは、通常のセパレートアンプとはことなり、L/Rを完全に独立させた駆動方式で、近代スピーカーが本来もつ壮大な空間表現能力を引き出すことができました。
―― 「SACD 10」も、マランツのSACDプレーヤーの集大成に相応しい内容となっていますね。
高山 はい、ありがとうございます。私どもマランツは、CDプレーヤーに関する技術に自信と誇りをもっています。1982年にフィリップス・マランツ陣営としてCDプレーヤー「CD-63」を、そして1999年にSACDプレーヤー「SA-1」を発売させていただき、オリジネーターとしてCD、SACDの時代を歩んできました。所有する技術もユニークです。まずは、フィリップスのD/Aコンバーターの遺伝子を受け継いだ、世界にひとつだけのオリジナルDACを所有しています。そして、数多くのハイエンドブランド様にも供給しているSACDドライブを自社で開発していることなどです。
今、CDの発売から40年が経ち、もちろん “SACD” 再生機の集大成でもありますが、それ以上に、“コンパクトディスク” 再生機の集大成をつくりたいという思いで開発しました。私たちが40年かけてゆっくりと積み上げてきたヘリテージをすべてアップデートし、考えうる最高の筐体に収めたのが「SACD 10」です。
―― 10シリーズはデザインも非常に印象的ですが、どういった経緯で決定されたのでしょうか。
岡田 10シリーズのデザインは一目見てマランツとわかってもらえるように、70年の歴史が培ってきたアイコニックな要素を大切にしています。たとえば、アンプの前面にあるポートホール(丸窓)などです。モダンデザインのなかに、どこか懐かしさも感じていただけるものとなっています。また、オーディオファイルの方のみならず、ご家族の方にも所有する喜びを感じていただくために、今のリビングルームともマッチするように、デザイナーが信念をもって作りました。
そして、私どものインダストリアルデザイナーは、常に、音質への影響も意識しながらデザインを形にしています。マランツの創業者であるソウル・バーナード・マランツ氏自身がインダストリアルデザイナーで電気技術者でもあったので、外観と音質とを包括したものづくりは今も常に意識されているのです。
「MODEL 10」は天板の部分が透かしになっていて、電源を入れると中のアンプの発光が見えるといったギミックもあります。コストも手間もかかり、設計者にとっては当初抵抗があったでしょうが、そんな中で皆で意見を出し合いながら、最終的にいい形になりました。
カラーも、かつての「Model 7」「Model 9」のような “シャンパンゴールド” が久しぶりに復活して、非常に好意的に受け止めていただいています。新しい製品のデザインは一般的に好みが分かれるものだと思いますが、10シリーズに関しては否定的なご意見を伺ったことはないですね。
■既存のお客様と新規のお客様、それぞれに進めていくアプローチの方策
―― 既存のオーディオファイルの方々と、オーディオに関心の薄いラグジュアリー層の方々、それぞれに10シリーズをどのようにアピールされますか。
岡田 オーディオファイルのお客様には音質的なパフォーマンスにより10シリーズの存在感を強く示せると自負していますが、オーディオ機器をそれほどご存知ないお客様にどうアプローチするかは今後の課題だと思っています。ただ、弊社が展開するスピーカーブランドであるBowers & Wilkinsとの連携がひとつの手段になります。彼らのスピーカーと10シリーズの組み合わせを活用しつつ、いろいろな試行錯誤をしながらぜひチャレンジしたいと思っています。
オーディオファイルの方々に対しての訴求は、今まで同様に、専門店様と手を携えながら聴いていただく機会を広げて参ります。試聴イベントなどの地道な活動を続けていくということですね。
―― マランツとデノン、2つのオーディオブランドの差別化や展開はどのようにお考えでしょうか。
岡田 2つのブランドを合わせてカバーする市場領域を広げていきたいと考えております。マランツは先ほど申し上げたように、オーディオに今まで関心の薄かったラグジュアリー層のお客様にもオーディオを所有する素晴らしさを訴求していきたいと思っております。
デノンはプレミアムなハイファイオーディオも充実させながら、ヘッドホンなど新たなカテゴリーでより幅広いお客様層にアピールし、我々のカバーするマーケットを拡大するという方針です。初めての試みとして、セレブリティのキャラクターを起用したキャンペーンも行いましたが、今後もいろいろなアイデアで試行錯誤しながら推進していきたいと思います。
―― 最近の市況の様子、手応えはいかがでしょうか。
岡田 日本の市況は安定しており、手応えは悪くありません。他の国々はコロナで伸びた需要のあおりで落ちている状況が続いておりました。アメリカは下げ止まった感はありますが、ヨーロッパは戦争の影響もありまだ見通しが不透明です。
日本での販売状況は、2024年は若干落ちましたがそれでも安定していて、月々の変動はありますが、振り返ると2024年からは年間でみれば堅調な状況です。ここ数年、日本は世界中の中でもかなり安定している市場と言えると思います。
―― 新たな存在感を示す製品の投入で、今後の動向も期待されますね。有難うございました。