宗教法人法を問う

宗教専従職員わずか35人 国と都道府県、18万法人所管も兼務が8割弱

全国約18万の宗教法人を所管する文化庁と都道府県の担当部局で、宗教関連業務に直接携わる専従職員が35人しかいないことが13日、産経新聞の実施したアンケートで分かった。宗教以外の業務との兼務を含めると153人で、兼務が8割弱を占める。休眠状態の法人整理といった複雑な業務などを考慮し、複数の専従職員を置く自治体がある一方、数千の法人を兼務の1人に任せるケースもある。

少ない人員で休眠状態を含む多数の宗教法人を所管するには限界があり、文化庁も都道府県の体制の拡充を求めている。

宗教関連業務には、法人設立や解散の手続き▽役員名簿や財務書類など、法人に毎年提出を義務づける「事務所備(そなえ)付け書類」の写しの確認▽宗教活動の実態がないため解散命令の対象となる「不活動宗教法人」の整理-などがある。

産経新聞が昨年末、所轄庁の文化庁と47都道府県に実施したアンケートによると、宗教関連業務を直接担当する職員数は、正確な人数の算出が困難な北海道の出先機関分を除き全国153人。このうち宗教だけを担当する専従職員は35人にとどまり、残る118人は私立学校や社会福祉法人といった公益法人に関する事務などを兼務していた。

令和3年12月末時点で5962法人が所在する東京都は5人、5563法人の京都府は4人の専従職員を置く一方、4798法人ある福島県は兼務職員が1人で担当。徳島(2269法人)と沖縄(211法人)の2県も兼務の職員が1人で担当している。

文化庁によると、毎年1万を超える法人が、備付け書類を所轄庁に提出していない。永岡桂子文部科学相は8日の衆院予算委員会で、未提出法人への督促の徹底と、応じない法人には行政罰の過料措置を取る方針を明言している。

それでも活動再開が見込めない場合は「不活動宗教法人」と認定され、宗教法人法81条に基づく解散命令も視野に入ってくる。ただ職員の体制が脆弱(ぜいじゃく)な自治体にとっては手続きを進めるにも負担が大きく、文化庁の担当者は「都道府県の人員が増えてほしいというのが率直な願い」と話す。

ある県の担当者は「宗教法人とは別の業務も抱えており、法人側に書類の提出を電話で督促することすら容易ではない。解散命令はおろか、不活動法人の調査ですら今の職員数では難しい」と明かした。(「宗教法人法を問う」取材班)

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