社民・福島瑞穂党首、政党要件「崖っぷち」も悲壮感なく 無投票で連続3選へ 

記者会見で社民党の経済政策を発表する福島瑞穂党首
記者会見で社民党の経済政策を発表する福島瑞穂党首

任期満了に伴う社民党の党首選が12月1日に告示される。福島瑞穂党首(69)以外に出馬の動きはなく、福島氏の連続3選が無投票で決まる見通しだ。同党は、直近8回の国政選挙で比例代表の得票率が公職選挙法上の政党要件となる「2%」前後をさまよい、「崖っぷち」「存続の瀬戸際」と自らを揶揄する状況が続く。それでも悲壮感はあまりなく、独特の存在感を放っている。

「軍拡・防衛予算を聖域化し、ひた走る今の自民党政権を倒していかないといけない。軍拡反対、社会民主主義で頑張る社民党の出番だ。党をけん引し、頑張りたい」

福島氏は29日の記者会見で、党首選に立候補する決意をこう訴えた。複数が立候補を届け出れば、投票は16、17両日、開票は18日となるが、令和2年と昨年の党首選に続き、無投票で福島氏が再選する。

党所属国会議員は衆参両院で3人にとどまる。野党第一党として自民党に対峙し、55年体制の一翼を担った前身の旧社会党時代の存在感は見る影もない。

平成元年の参院選では、源流の旧社会党で、土井たか子委員長が「マドンナブーム」を巻き起こし、改選議席数で自民党を上回る勝利を収め、6年には自民などとの連立政権で村山富市委員長が首相に就任した。しかし、自衛隊は憲法違反だとした党の憲法解釈を覆し、合憲を明言するなど政策転換したことで旧来の支持を失った。8年に党名を「社会民主党」に変更したものの、同年発足した旧民主党に多くの議員が流出し、長い低迷期に入った。

国政選挙の比例得票率は22年参院選の3・84%を最後に下落傾向が続き、最近は1~2%台にとどまっている。ここ10年は党の存続をかけた背水の陣で戦い続けている。

一方、福島氏らは愛嬌ある独特の言い回しで、国会質疑では存在感も発揮する。

11月29日の参院予算委員会では、斉藤鉄夫国土交通相に対し、福島氏が「私が大臣の時は社民党の立場はどうかと自民党から散々質問を受けた」などと追及した。斎藤氏は「大臣としてこの場に立っているので答弁は差し控える」と答えるのみ。福島氏は「私の時となぜ違う‥」などとカタコトで述べると、議場内は笑いに包まれた。

一方、社民党宣言に掲げる「弱い立場に置かれている人々の利益を実現」する方針を急進的に進めるあまりか、同党は最近、女性や被災地の人々の権利をどう考えているのか、疑問を持たれる場面も目立っている。

11月20日の参院本会議では、自民党の片山さつき元地方創生担当相がLGBTなど性的少数者への理解増進法を巡り、学校トイレなど「女性専用スペース」の利用は女性に限るべきだと主張。このとき、議場で最も声を張り上げてヤジを飛ばしたのは社民党の大椿裕子副党首だったという。大椿氏はその後、X(旧ツイッター)で「堂々と、トランスジェンダーへのヘイトスピーチが垂れ流された。許しがたい」と投稿したが、片山氏はトランスジェンダーに対する憎悪表現を用いたわけではなく、女性や子供の権利を守ると主張したに過ぎない。

福島氏や大椿氏らは8月に海洋放出が開始された東京電力福島第1原発処理水についても「汚染水」と呼び続けている。国際安全基準に合致している処理水の放出について、核燃料(デブリ)に触れて放射性物質を含んだ「汚染水」を多核種除去設備(ALPS)で処理せずに海洋放出すると誤解を与えかねず、被災地で風評被害の助長も懸念される。

福島氏は参院当選5回。平成15年に土井氏の後を継いで党首に就任し、25年まで5期務めた。令和2年に再登板し、昨年は無投票で再選された。(奥原慎平)

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