トラック運転手に外国人が増えた理由㊦
母国語でも受験可能な「外国免許切替」のテストに埼玉県のベトナム人女性が合格した日の3日前、横浜市戸塚区の市道交差点で、横断歩道を渡っていた自転車の女性(73)が左折のダンプカーにひかれて亡くなる事故があった。
着物姿が印象的
神奈川県警戸塚署は運転手の埼玉県川口市に住むトルコ国籍の男(57)を自動車運転処罰法違反の現行犯で逮捕。男は現場近くの解体資材置き場に空のダンプで向かう途中だった。日本語があまり話せず、取り調べは通訳を介したが、容疑を認めたため釈放されたという。
被害女性は日本舞踊の教室に通っており近所の人は「着物姿が印象的だった。身近な場所で外国人がダンプを運転していたと聞いて驚いた。手荒な運転をしていたとは思いたくないが…」と話した。
むろん外国人だけが、外国人だから、事故を起こすわけではない。ただ、こんなデータもある。公益財団法人交通事故総合分析センターの西田泰・元特別研究員(72)らが、運転者が最も過失の重い「第1当事者」となる事故リスクを示した「相対事故率」を調査した結果だ。
平成26年からの5年間にレンタカーを運転した日本人4520人と在日外国人341人を比べたところ、外国人の事故率は日本人の約4倍にのぼる高リスクだった。
交通安全の意識に差
西田氏は「外国で運転した経験のある人ならわかると思うが、現地語ができないからといって必ずしも事故につながるわけではない」とした上で、日本と外国の交通安全に対する「意識の差」を指摘する。
戦後、わが国の交通事故死者数は昭和40年代の16000人台をピークに減少、近年では2000人台で推移している。むろん道路整備や技術革新などが進んだ側面はあるが、地道な交通安全運動や啓発活動が寄与したことも否めない。
さらに日本では、どんなに交通量が少ない交差点でも、あからさまに信号無視をする車は少ないし、対向車同士が互いに譲り合う光景は決して珍しくない。
西田氏は「コロナ禍のマスクがそうだったように、日本人は法律があってもなくても周囲の行動に合わせる。一方で海外ではクラクションは鳴らすのが当たり前、遅い車は追い抜いて構わないと考える国もある。自動車運転とは、その国の文化や習慣が非常に表れる行為だと思うのです」。
不法滞在者もそのまま運転
コロナ禍も終わり2024年は外国人運転手がさらに増える可能性もある。入管関係者によると、約8万人にのぼる不法滞在者や難民認定申請中の仮放免者でも、正規滞在中に取得した免許は免許停止とはならない。そのまま運転免許を所持してトラックを運転し続けている事案は散見されるという。
ただ、その免許を使って働けば入管から不法就労と認定され、スピード違反すれば警察に摘発されることに変わりはない。所有者不明、無保険など危険な車に乗っていても個別に取り締まるしかないのが実情だ。
入管関係者は「交通警察と入管行政は制度的にひもづけられておらず、縦割り行政と言われても仕方がない。われわれとしては不法就労は警察とも連携して取り締まっている」。
都道府県公安委員会も、不法滞在の外国人が窓口に来た場合は警戒するよう努めているが、限界はあるという。