米国で「ウイグル強制労働防止法」が2022年6月に施行されてから2年が経過した。欧米ではウイグル人強制労働問題への対応が着々と進んでいる。今年2月にも欧州化学最大手のドイツBASFが、強制労働への関与の可能性が指摘された事業から撤退を発表したし、3月には欧州連合(EU)の欧州議会などが、強制労働で生産された製品の流通や輸入を禁止する規制案で暫定合意した。5月には米政府が中国企業26社を新たにウイグル強制労働防止法のリストに追加、6月にも3社を追加し、輸入禁止の対象としたことを発表した。
ただ、このように厳しい措置がとられるようになったのは、近年になってからである。01年12月、世界貿易機関(WTO)に正式加盟した中国は、安い製品を世界市場で自由に売って急成長する陰で、ウイグル人の強制労働を続けてきたが、国際社会がそれを気にすることはほぼなかった。
中国当局が新疆ウイグル自治区カシュガルなどウイグル人集住地から、ウイグル人女性を「余剰な労働力」と称して中国沿岸部の複数都市の工場へ集団移送する政策を始めたのは、WTO加盟から4年後の05年だった。対象となったのは16歳から25歳の未婚女性で、第11次5カ年計画(06~10年)の間に計40万人の移送が目標とされていた。