<独自>軍艦島映像、NHK「坑内の確認得られず」元島民に調停で認める 抗議重ね4年

「緑なき島」の坑内映像について自民党の山田宏参院議員が令和3年5月の参院決算委員会で取り上げた資料(山田宏事務所提供)
「緑なき島」の坑内映像について自民党の山田宏参院議員が令和3年5月の参院決算委員会で取り上げた資料(山田宏事務所提供)

長崎市の端島炭坑(通称・軍艦島)を巡るNHK番組「緑なき島」の坑内とされる映像について、NHKが端島炭坑内の映像であるという確認が得られていないと元島民側に認めたことが30日、分かった。東京簡裁で行われた元島民有志との調停で、NHK側が文書で認めた。元島民は令和2年以降「端島坑内ではない」と訂正を求めてきたが、NHKは「端島以外のものとの結論に至らない」として応じてこなかった。

映像の風景は当時の保安規定や元島民の証言と食い違っているが、映像は韓国で朝鮮人の戦時労働者が非人道的な待遇を受けた証拠として引用されている。

元島民有志は1月に東京簡裁に調停を申し立て、12月17日に成立した。NHKは「緑なき島」を巡り、①作業員全員がヘッドランプ(ヘルメットに装着する照明灯)を付けていない場面②坑道内で裸電球を使用している場面ーの2つの映像について、文書で「端島炭坑内で撮影されたものであるという確認が得られていない」と認めた。

「緑なき島」は昭和30年にNHKが制作・放送した短編映画。坑内とされる場面には、ふんどし姿の作業員が裸電球がつるされた狭い坑道をヘッドランプを装着せず、はって進み、人力で石炭を運搬する様子が映し出されている。

「緑なき島」の映像は、NHKが平成22年に韓国の公共放送KBSに提供した。それ以降、他の韓国メディアも使うようになった。令和5年1月までに、KBSやMBC、JTBCなどのテレビ局の計20本の徴用に関する番組で使用が確認された。韓国・釜山の「国立日帝強制動員歴史館」でも展示され、軍艦島が戦時中、朝鮮人作業員が劣悪な環境下で働かされていたとの印象作りに利用された。

元島民有志は令和2年11月にNHKに対し、検証と訂正を求める抗議書を通知。NHKは改めて調査した結果、3年12月に「端島炭坑以外のものであるとの結論に至らなかった」とする報告書をまとめた。

自民党議員も国会で4年近く追及を重ねている。映像の撮影時期に関し、NHKは5年6月に自民党の会合で終戦後の昭和30年だったと報告した。

今回の調停で元島民側は名誉を傷つけられたとして謝罪を求めたが、NHKは強い遺憾の意の表明にとどめた。

NHKは産経新聞の取材に、「今回の調停の内容は、令和3年にNHKが行った調査の結果で『端島炭坑以外のものであるとの結論に至らなかった』とする見解と何ら変わるものではない」とコメントした。(奥原慎平)

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