朝ドラ効果で満員御礼「今が頑張りどき」 OSKの新トップスター翼和希が描く歌劇の未来

「『ダンスのOSK』と言い続けていただける劇団にしないといけない」と語る翼和希=大阪市中央区(南雲都撮影)
「『ダンスのOSK』と言い続けていただける劇団にしないといけない」と語る翼和希=大阪市中央区(南雲都撮影)

美しくもたくましいエネルギッシュな舞台が魅力の「OSK日本歌劇団」に昨年9月、新しいトップスターが誕生した。その半年前の3月に放送を終えたNHK連続テレビ小説(朝ドラ)「ブギウギ」で、OSKをモデルとする劇団のトップスター役を演じ、注目を集めた翼和希(かずき)だ。朝ドラをきっかけに人気に火が付き、拠点の大阪から一気に全国区に躍り出た劇団を率いる翼は、「せっかく温まったものをぬるま湯にしちゃいけない。進化し続ける劇団でありたい」と瞳に力をみなぎらせる。

大阪府枚方市出身で、平成25年に入団した。ダイナミックで情熱的なダンスと伸びやかな歌声で、舞台に艶やかな花を咲かせる。切れ味鋭い男役姿そのままに、朝ドラでは硬派で情の厚いトップスターを演じたが、素顔は関西人らしいおしゃべりでユーモアあふれる人柄で、その親しみやすさも人気の理由だ。

昨年10月の山口を皮切りに、今年4月の京都までほぼ毎月、国内外で就任記念公演が続く。朝ドラをきっかけにしたファンの激増が追い風となった結果で、「これほどたくさんの公演が決まっているなんて正直経験がなくて…本当にありがたいです」。公演内容は月替わりで、同時並行で複数公演の稽古をこなす毎日。目が回るほど多忙だが、「今が頑張りどきやなって」とはつらつとした笑顔を見せた。

歴史の重み

OSK日本歌劇団トップスターの翼和希(南雲都撮影)
OSK日本歌劇団トップスターの翼和希(南雲都撮影)

トップスターは歌劇に入った頃からの目標だった。前トップの楊琳(やんりん)の後任に決まったときは、「もちろん喜びはありました。でもそれは本当に一瞬で。いよいよ腹くくらなあかんねんなと思った」と語る。

覚悟の裏には、OSKが歩んだ歴史の重さがある。大正11年に前身の「松竹楽劇部」が大阪で誕生して以降、昭和8年には待遇改善を求めるストライキ、平成15年には解散も経験したが、そのたびに劇団員たちが自ら突破口を見つけ、歴史を未来につないできた。

創立100周年の令和4年も新型コロナウイルス禍で記念公演が一部中止になるなど大打撃を受け、「これはまずいぞ、と思っていて。その後訪れた『ブギウギ』というチャンスに、わらにもすがる思いでチャレンジしました」と振り返る。朝ドラ出演が終わっても満員御礼の公演が続いたが、「これを一時的なものにしちゃいけない、と思ってきた」と明かす。

心強い相方

2024年11月の「レビューRoad to 2025!!」で踊り歌うトップスターの翼和希(中央)=大阪市中央区(南雲都撮影)
2024年11月の「レビューRoad to 2025!!」で踊り歌うトップスターの翼和希(中央)=大阪市中央区(南雲都撮影)

トップになった今、並々ならぬ責任感を共に背負ってくれるのが、3年から娘役トップスターを務める千咲(ちさき)えみだ。長年苦楽を分かち合ってきた同期で、「歌劇ではヒロインを『相手役』と呼ぶけれど、千咲は『相方』という感じ」。千咲にフォローされることも多く、「舞台上ではアイコンタクトで分かり合えるし、絶対の信頼がある。なんて心強いんじゃ!と思っています」とはにかんだ。

大阪での就任記念公演は昨年11月の「レビューRoad to 2025!!」に続き、今年2月はミュージカル「三銃士」を予定。6月にはホームグラウンドの大阪松竹座で、トップお披露目公演としてOSKの代名詞レビュー「春のおどり」の幕が開く。

華やかな門出に翼は、「トップの役目は、OSKの玄関としてお客さまを『いらっしゃいませ!』とアテンドすること。OSKの魅力である生命力と、世界に誇れる歌劇という日本の文化をもっと知ってもらいたい。頑張らないといかんですね」。上昇気流に乗り、大きく羽ばたく。(田中佐和)

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