沖縄県が米国に設立したワシントン事務所が実態のない株式会社として事業者登録されていた問題の影響で、県議会は12日、午前10時の開会予定時刻を過ぎても開会できない「異常事態」(県議)になった。県が令和7年度の一般会計当初予算案にワシントン事務所の関連経費を計上したことに自民党会派は反発を強めていた。議案の修正などについて協議や調整が行われているとみられる。
2月定例会は12日午前10時に開会予定だった。傍聴人や記者も集まっていたが、予定時刻になっても議員が姿を現さず、議場は閑散としたまま。大画面のモニターには「本会議の開会は若干遅れる見込みです」と表示されていた。
ワシントン事務所を巡っては、県議会の調査特別委員会(百条委員会)で、事務所設立時の手続きや駐在職員の身分に関する法的根拠などが追及されている。県議会は昨年11月、事務所の関連経費を盛り込んだ5年度一般会計決算を賛成少数で不認定とした。百条委では、ずさんな行政運営の実態も次々と明らかになっており、県の統治能力が問われている。
県は当初予算案で、ワシントン事務所の関連経費について、6年度のほぼ半額となる3934万円を計上。玉城デニー知事は今月6日、「予算の幅を縮小し、必要最小限度の活動形態を維持することにした」とし、「トランプ政権がどのような方向性で情報発信するかという情報収集は必要最低限度の活動の範疇だ」などと理解を求めた。
一方、自民党県連幹部は11日、産経新聞の取材に対し「年度末の重要な議会と認識しているが、百条委で審議している内容も予算に入れ、通常通り提案してくる感覚はおかしい」と県執行部の姿勢を批判していた。
ワシントン事務所は2015(平成27)年4月、米軍基地問題を解決するため普天間飛行場(同県宜野湾市)の名護市辺野古への移設に反対していた翁長雄志前知事(故人)の肝煎りで設置。米国務省から「非営利目的の事業者設立は不適当だ」との見解が示されたため、米国の弁護士の助言を得て、県が100%出資する株式会社「ワシントンDCオフィス」として設立された。
これまでに、現地に常駐する県職員のビザを取得する際、県側が肩書を「社長」などとして事実と異なる書類を提出したほか、委託料から支出した出資金の公有財産登録を怠っていたことなどが発覚している。