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倫理よりも値引き!韓国でフォルクスワーゲンが爆売れ 日米英は20%超減なのに金利ゼロに飛びつく浅ましさ…

ディーゼル車の排ガス規制逃れ問題に揺れるドイツ自動車大手フォルクスワーゲン(VW)。ブランドイメージの悪化や不正を指摘された一部ディーゼル車の販売中止もあって、販売台数は世界的に落ち込んでいるが、唯一「爆売れ」している国がある。そんな奇特な国はどこかというと…。そうお隣・韓国だ。VWが客離れを防ぐために実施した値引き販売に食いついているのだ。VWの値引き販売は何も韓国だけではないのに、なぜ韓国だけで売れているのか。そこには、「倫理よりも安さをとる」という世界的にも希有な韓国人の国民性が浮かび上がってきた。

まずは直近の販売データとなる昨年11月の各国別VW車の実績をみてみよう。米国は前年同月比24・7%減の2万3882台で、11月としては5年ぶりの低水準に落ち込んだ。英国は20%減、日本はほぼガソリン車だけの市場にもかかわらず32%減となった。おひざ元のドイツでさえ、2%減少した。世界の消費者を欺き、広範囲に莫大な被害を与えたVWに対し、各国の消費者が「NO」を突きつけた格好だ。

さて、問題の韓国の販売台数はどうだったか。KBSワールドラジオによると、VWの韓国での販売台数は月平均3000台余りだったが、排ガス規制逃れ問題で10月は947台に激減。ところが11月は4500台以上を販売し、VW韓国進出以来最高の実績を上げたという。

韓国でVW車の販売が急増したのは主に大幅値引きが原因だ。VWコリアは11月から全車種を対象に、60カ月にわたって割賦販売の利子をゼロにする前代未聞の措置を講じたり、10~20%の現金値引きも実施した。朝鮮日報によると、3540万ウォン(約360万円)の「ジェッタ」は、韓国・現代自動車の中型車「ソナタ」と同水準の2850万ウォン(約290万円)で購入できるようになったという。

ただ、冒頭でも触れたが、値引き販売をしているのは韓国だけはない。他の国では値引きに冷静な反応を示したのに、韓国の消費者だけがこぞって殺到したのはなぜなのか。

米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)は「韓国の消費者の欧州ブランドへの強い憧れを抱いていることが一因」と指摘する。韓国人の輸入車ブランドをあがめる姿勢は以前から知られている。価格が同じクラスの国産車に比べて3倍高く、修理費が7倍高くても輸入車を盲目的に愛する国民、とVWも皮肉っている。

そして、もう一つの理由は安売りに目がないということらしい。朝鮮日報は、「韓国の消費者はひときわ価格に敏感だ」と専門家らの話を紹介している。

その結果、安くなるなら企業のモラルなど関係ないと、世界的な問題を引き起こしたVW車を買いあさる構図ができあがったようだ。他国の人間にはなかなか理解できない心理だが、韓国人なら普通なのだろうか。

ただ、さすがにこうした消費者の行動を憂う報道も韓国メディアで相次いでいる。ちょっと長いが引用してみよう。

「政治で有権者の選択によって代表者が決定されるように、経済でも消費者の選択によって企業の生産活動が左右される。それで市場経済で消費者が持つ力は強くて重要だ。それがまさに消費者主権だ。消費者主権を放棄し、利己心ばかり蔓延する市場が健全であるはずがない。(中略)フォルクスワーゲンの販売が爆発的に増加しているということに、韓国はまだまだだという思いにしかならない」

中央日報日本語版が韓国経済新聞のコラムをこう伝えている。

また、朝鮮日報も韓国・大林大の金必洙(キム・ピルス)教授が「自動車メーカーが『韓国では大胆な値下げさえすればどんな問題でも許してもらえる』と誤解しかねない。価格に振り回されない先進国の消費者の姿勢や価値観は学ぶに値する」と指摘した話を紹介した。

韓国の民度が問われる今回の出来事。韓国が国際舞台に上がるケースが年々増えているが、まずはこうした点を改めてからにしていただきたい、と思ってしまった。(小熊敦郎)

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