正直にいえば、大きなビジョンは持っていなかったなあ。大学(東大工学部・航空宇宙工学科)を卒業するときも宇宙関係の仕事をしたい、というくらいの意識でした。結果的に全日本空輸(ANA)に入って、のちに民間会社のパイロットから初めての宇宙飛行士となるのですが、考えてみれば、学生時代と線でつながりました。
学科が行っている、人力飛行機をつくるサークル活動があったんです。「鳥人間コンテスト」(日本テレビ系)って、ご存じですか。
これに出場するのが目的のサークルで、大学3年のときには勉強そっちのけで打ち込んだものです。30人強のメンバーが機体をつくり、飛ばす。みんなが一つのことに向かってアルバイトをしてためたお金や休みの土、日曜日のフリータイムをつぎ込んで。このときに物づくりとか、ものを飛ばす楽しみを学んだ気がします。宇宙飛行士への素地といってもいいかもしれない。