サンケイスポーツが各界のトップランナーに迫る大型インタビュー企画『我は行く』の第3回。米大リーグ、パドレスのダルビッシュ有投手(37)が3日連続で登場し、第1回は日本球界へ提言を行った。日本のプロ野球がメジャーリーグを超えることを願って一部の指導者を「勉強不足」と指摘し、進化を求めた。(取材構成・山田結軌)
ダルビッシュの提言には日本球界への願いが込められていた。年下の選手たちを常日頃から「自分の子供のよう」と愛情を注ぎ、助言を惜しまない。一方で指導者に対してはときに、厳しく持論を語る。根底には「日本球界がメジャーリーグを上回ってほしい」との夢があるからだ。
――WBCで日本球界にいる若い選手たちと接して何か感じたことは
「今回WBCを見て思うのは、ちょっと指導者と選手の溝が深いということですね。今の指導者は(現役の時に)『走れ』『投げ込め』と言われ、殴られ、水を飲めない時代だった。精神的に我慢して我慢して、やっと今のポジションを勝ち取った人たち。とにかくコーチに『これだ!』って言われたら『はい!!』の時代だったじゃないですか。そのまま年齢を重ねてコーチになって、その方法しか知らない。でも、そのやり方だと選手たちに響かない。その反応を見てイライラする。僕が若いときよりも、今の若い選手の方が頭が良いです。時代が進んでいるのもあると思うんですけど、どうしても(指導者と選手の考えに)乖離(かいり)があって、選手たちが指導者を信頼しきれない状態になっているのかな」
――旧態依然とした指導者が少なからずいる
「それだけ自分に対しての自信もちゃんと持っているし、それは良いところなんですよ。精神論とか、自分がやってきたことに対する自信とか、厳しいときに乗り切る力を持っている人たち。ただ同時に、物事を論理的に考えて、この選手はどうやって(育成するか)1年間を考えるのは、あんまり得意じゃない世代というか」
――科学的に証明されていることを分かろうとしない指導者がいる
「走り込み(が重要視される考え)は、コーチたちがそれしか手段を知らないから。手段はいろいろあるのに、何となく『お前は下半身が弱いから走れ』っていう方法しか示すことができない。これは、やっぱりその人の人生を考えてもリスペクトに欠けるし、これだけいろんな情報があふれている世の中で、まだそこですかって。その選手の野球人生を終わらせかねない。常にその選手のベスト、今の世の中で提供できるベストを考えるのが指導者だと思う。そこに対する努力はしないといけない」