(写真はディップ株式会社「マッチ箱」)
「20周年を機に移転 六本木グランドタワー31階の凄オフィス!「バイトル」「はたらこねっと」のディップ株式会社の新オフィス訪問 (オフィス訪問[1])」からの続き。
マッチ箱? ブレストBox?? Pitch square???
取材者も最初は「?」がいっぱいでしたが、「日本一コミュニケーションが取りやすい」をコンセプトに作られた独自の空間は、話を伺うと思わず、なるほど!と膝を打つ仕掛けなのです。
では、順番に見て回りたいと思います!
広いオフィスフロア内に4か所設けられた「マッチ箱」という空間。
こちらには、コートなどを掛けるコートハンガーを始め、傘立て、コピー・ファクス機などの複合機、分別ゴミ箱、文具ストック、社内情報が流れるデジタルサイネージといったオフィス設備が集約された空間になっています。
前出の同社総務部藤川さんに伺いました。
こちらは、打ち合わせスペースとは別に、社内の偶発的なコミュニケーションが生まれる場所として作りました。
会社に出社して来たときに、傘やコートを置きに来たり、何か仕事でプリントアウトしたものを取りに来たり、個人のゴミ箱を廃止していますのでゴミを捨てに来たりと、オフィス内で何かしらの用事で立ち寄るような場所になっています。
「ごみュニケーション」と名付けているのですが、ゴミ箱を収納した大きなカウンターテーブルを中心に置いているのは、ゴミ捨てなどに来た社員同士がここで出会って、カウンターテーブルで立ち止まって立ち話できる空間として作りました。皆が集まる空間でもあるので、社内情報を流すデジタルサイネージもこちらに設置していて、立ち止まりやすいようにしています。
(同社総務部 ファシリティ・マネジメント課 課長 藤川 淳 さん)
こちらはマッチ箱内のコートハンガー。
社員の方のコートやジャケットがかかっています。右側には、「マッチ箱」のアイコンがありますが、会話をしているイメージアイコンになっていますね。
こちらは大きなカウンターテーブルの下に作られた分別ゴミ箱。
「ごみュニケーション」と名付けられています。ゴミを捨てに来た時に、顔を合わせた人同士で最近どう?と声を掛け合うイメージですね。「ごみュニケーション」というネーミングが面白いです。戦略担当の役員の方が命名されたとか。
単にゴミ箱があるだけなら通り過ぎてしまいますが、そこに大きなカウンターテーブルがあることで、立ち止まって話がしやすいですよね。
スペース名 | マッチ箱 |
---|---|
機能性 | 偶発的コミュニケーションを促す |
特徴 |
・オフィス設備の集約で立ち寄る理由づくり ・大きなカウンターテーブルとサイネージで立ち話しやすく |
こちらは、「ブレストBox」。
ファミレスタイプのボックスソファ席で、オフィスフロア内の景色のよい窓際に多く設置されています。商品開発やサイトの運用改善などチームで仕事を進めることが多い同社では、メンバーが集まって打ち合わせしたり作業したりするためのボックスソファ席として作られたとのことです。
かしこまって会議室で打ち合わせするのではなく、景色の良いセミオープンで、カジュアルな場所で、ブレストしたり、皆で作業したりと、チーム作業を円滑に進められるようになっています。
窓際の一番景色の良いところに「ブレストBox」が並びます。人気のエリアとのことで、取材中も多く利用されていました。こちらは予約不要で空いていれば使えます。
チームミーティング中のところを撮影させていただきました。
まるでオシャレなカフェに来たようなカッコイイボックス席で、窓からの景色も最高です。これはミーティングも気分が上がりますね! 距離感が近いタイプの席であることも、距離感の近いチームミーティングには合いそうです。
スペース名 | ブレストBox |
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機能性 | チームコミュニケーションを促進する |
特徴 |
・予約不要ですぐに使える ・執務席近くで移動時間がかからない ・かしこまらないカジュアルな雰囲気 ・適度なオープンさ(セミクローズド) ・メンバーが後から参加しやすい開かれ感 ・ファミレス席的な距離感の近さ |
ほかにも、窓際には次に紹介する「Talk Stand(トークスタンド)」があります。
こちらは「Talk Stand (トークスタンド)」。
スタンディングミーティング専用のハイカウンターになったブース。
「ちょっといい?」「ちょっと確認したいんだけど」といった短時間ミーティングに使われています。
こんな感じで、座席近くに配置されているので、移動時間もほぼゼロで、即席の打ち合わせに良く使われているとのこと。
左側の壁はホワイトボードになっていて、モニターも設置。予約不要でさっと短時間の確認などの打ち合わせができるように作られています。そのため、あえてハイスツールなどの椅子は置いていません。
スペース名 | Talk Stand(トークスタンド) |
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機能性 | 短時間コミュニケーションで生産性アップ |
特徴 |
・予約不要ですぐに使える「ちょっといい?」 ・執務席近くで移動時間がかからない。 ・スタンディングミーティング形式で短時間化 ・そのため椅子は置かない ・適度に開放感あるオープンさ |
社内には「Pitch Square (ピッチスクエア)」という簡単なプレゼン(≒ピッチ)を行う場所もあります。
企画会議など盛んな同社では、企画ミーティングがしやすいよう専用の空間が用意されているのです。
奥の壁に大型スクリーンがあり、写真で見えるカウンター席の内側も座席になっていて、皆でスクリーンを囲んで半円になって参加できるように作られています。30名くらいが参加できるとのこと。
会議の座席と違って、皆がスクリーンに向かっているので、企画内容にフォーカスして話ができるところがポイントです。
正式な企画会議の前にこちらで企画案を皆で話し合ったり、社内プレゼンの練習をする場所になっています。執務スペース近くでオープンになっているのは、社内で興味を持った人がすぐ参加できるようにとのこと。リラックスした雰囲気で作られているのもいいですね!
こちらの小型版もありました。
「Pitch Square Mini (ピッチスクエア ミニ)」。
先ほどの小型版です。
こちらもモニター前にソファ席、その後ろがカウンター席になっています。
スペース名 | Pitch Square (ピッチスクエア) |
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機能性 | 企画会議の練習が気軽にできて事業創造力アップ |
特徴 |
・カジュアルな雰囲気 ・大型スクリーンを皆で半円状に囲んで話せる ・オープンで誰でも参加できる ・最大30名まで、大勢で参加もできる |
というようにコミュニケーションスペースが多くある同社のオフィスですが、息抜きや気分転換したいときや、独り集中して仕事をしたいときもありますよね。そんなときのために作られたのが次に紹介する「dip cafe (ディップカフェ)」と「こもルーム」です。
こちらは「dip cafe (ディップカフェ)」
お昼や休憩に集う場所です。
大きなテーブル席や、窓際のカウンター席、ソファ席など、カフェ空間になっています。
取材時はランチタイム外だったので、こちらに気分転換に仕事をしに来ている社員の方が多かったです。こちらで社内テレワーク的に仕事をするのもokとのことで、利用率は高いそう。
奥には、オフィスファミマやドリンクベンダーがあります。
カップベンダーはお茶30円、カフェオレ40円~。缶飲料は80円~とお財布に優しい。
奥からカフェスペースを撮影。
カフェスペースは景色の良い窓際を効果的に作られています。
スペース名 | dip cafe (ディップカフェ) |
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機能性 | 休憩・息抜き・気分転換する場所 |
特徴 |
・カフェのような雰囲気で執務席とは異なる空間 ・眺めの良い場所 ・仲間と話もできるが、独りにもなれる座席配置 ・ソファ席もある気分を変える環境 |
「こもルーム」。集中作業用ブースです。
明るいグレーカラーのかわいいファブリックの外観。
それぞれの「こもルーム」の上についているエジソン風の電球は、点灯していると使用中のサイン。「こもルーム」内のタスクライトと連動して、外の電球も光って使用中を知らせる仕組みです。ひらめいた!みたいなデザインですよね。
「こもルーム」は、静かに周りから見られず、独りで集中作業したいときに使うため、オフィスの端の方に、デスク側をわざと皆から見えない窓側に向けて設置されています。そのため、使用中のランプを「こもルーム」の上に取り付けてあるんですね。
使用中のところを撮影させていただきました。
こんな感じで自習室のような空間です。囲むパネルも吸音効果があります。
スペース名 | こもルーム |
---|---|
機能性 | 独り集中作業する場所 |
特徴 |
・オフィスの端でパーティションに囲まれて独りになれる空間 ・静か |
こちらは「オープンテーブル」。
出張者などタッチダウン的に使えるよう、各席前には電源を装備。異形天板で中央にグリーンを配置することで、カフェの大テーブルのように各人が思い思いに使えるように配慮したテーブルになっています。
ちょうど、人事部の近くにあることもあって、同社の各拠点の管理者の方が本社にやってきたときのタッチダウンとして使われることが多く、リーダー同士のコミュニケーションの場として活用されているとのこと。
スペース名 | オープンテーブル |
---|---|
機能性 | 出張者などタッチダウンする場所 |
特徴 |
・電源を各席に装備 ・グリーンの配置や異形天板で、各人がそれぞれ使えるように |
通路の建物中央側に見えるグレーのファブリックの壁の裏には、「個人ロッカー」があります。フリーアドレス制になっているため、個人ロッカーに私物や、ノートパソコンを収納します。
こんな感じで、ロッカースペースが執務席近くに目立たないように作られていました。ロッカードアが執務席から見えないようになっているのはいいですね!
「日本一コミュニケーションが取りやすい」をコンセプトに作られたディップ株式会社の新しい本社オフィスはいかがでしたでしょうか。
1フロア約1,000坪の広いオフィスに、パーティションを置かず見通しの良いオープンな執務空間が広がり、そこに様々なタイプのコミュニケーション機能をもたせた場所が作られていました。
順番に振り返ると、社員が立ち寄ったときの偶発的なコミュニケーションを生む「マッチ箱」、チーム作業で人気の「ブレストBox」、「ちょっといい?」という短時間のスタンディングミーティングのための「Talk Stand (トークスタンド)」、企画ミーティングがオープンにできる「Pitch Square (ピッチスクエア)」というように、どれもコミュニケーションを活発にする仕掛けばかりです。
また、コミュニケーションを促進するスペースだけでなく、休憩したり気分転換しながら仕事したりできる「dip cafe (ディップカフェ)」などの息抜きの場所や、独り集中して作業したいときの「こもルーム」など、少し独りになって気分転換したり集中したりする場所もあって、社員の人の気持ちに寄り沿うオフィスといえるのではないでしょうか。
最後にひとつ付け加えると、景観の利用の仕方もとても参考になるものでした。
六本木一丁目という立地にある31階のオフィスフロアですから、そこからの眺望も抜群です。その眺望を最大限活かせるよう、クローズドな会議室はあえて室内側に配置し、オープンなミーティングスペースやカフェを景色の良い窓際に配置するなど、社員の気持ちが上がるように景観を活用している点も秀逸です。
視界を妨げないタイプの設備を窓際に配置することで、執務席側からも景観を楽しめることで二重に景観が活用されています。しかも、窓際は高遮熱ガラスとエアコンで気温変化はあまりないとはいえ、日照の変化などは大きいので、執務席よりも長時間利用しないミーティングスペースにする工夫もあったりして、取材者からは随所に見どころのあるオフィスでした。
同社のオフィスの仕掛けを表にまとめてみました。
スペース名 | 機能性 | 特徴 |
---|---|---|
マッチ箱 | 偶発的コミュニケーションを促す |
・オフィス設備の集約で立ち寄る理由づくり ・大きなカウンターテーブルとサイネージで立ち話しやすく |
ブレストBox | チームコミュニケーションを促進する |
・予約不要ですぐ使える ・執務席近くで移動時間がかからない ・かしこまらないカジュアルな雰囲気 ・適度なオープンさ(セミクローズド) ・メンバーが後から参加しやすい開かれ感 ・ファミレス席的な距離感の近さ |
Talk Stand(トークスタンド) | 短時間コミュニケーションで生産性アップ |
・予約不要ですぐに使える「ちょっといい?」 ・執務席近くで移動時間がかからない ・スタンディングミーティング形式で短時間化 ・そのために椅子は置かない ・適度に開放感あるオープンさ |
Pitch Square (ピッチスクエア) | 企画会議の練習が気軽にできて事業創造力アップ |
・カジュアルな雰囲気 ・大型スクリーンを皆で半円状に囲んで話せる ・オープンで誰でも参加できる ・最大30名まで、大勢で参加もできる |
dip cafe (ディップカフェ) | 休憩・息抜き・気分転換する場所 |
・カフェのような雰囲気で執務席とは異なる空間 ・眺めの良い場所 ・仲間とも話もできるが、独りにもなれる座席配置 ・ソファ席もある気分を変える環境 |
こもルーム | 独り集中作業する場所 |
・オフィスの端でパーティションに囲まれて独りになれる空間 ・静か |
オープンテーブル | 出張者などタッチダウンする場所 |
・電源を各席に配備 ・グリーンの配置や異形天板で、各人がそれぞれ使えるように |
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※こちらのオフィスは株式会社ドラフトによるデザイン
編集・文・撮影:アスクル「みんなの仕事場」運営事務局
取材日:2017年9月12日
2016年11月17日のリニューアル前の旧コンテンツは
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