安倍晋三元首相銃撃事件で、山上徹也容疑者(41)=殺人容疑で送検=の供述によりクローズアップされた宗教団体「世界平和統一家庭連合(旧統一教会)」。山上容疑者は、母親が入信後に破産するほどの献金をして家庭が崩壊したため同会への恨みを持ち、同教会とのつながりが深い安倍氏を狙うことにした、などという趣旨の供述をしているという。同会と自民党との関係は、半世紀以上前までさかのぼるとされるが、その経緯や実態はどうなのか。(特別報道部・宮畑譲、北川成史)
◆霊感商法や合同結婚式が社会問題に
旧統一教会とはどんな団体か。フランスの経済紙「レゼコー」は襲撃事件後、欧米では「カルト宗教」と認識されていると報じた。上越教育大の塚田穂高准教授(宗教社会学)は「活動の基軸はあくまで宗教的理念と実践。その活動の中において多くの問題を抱え、人権侵害や違法行為を積み重ねてきた宗教団体だ。他の宗教一般と同列には扱えない」と話す。
旧統一教会は教祖の故・文鮮明氏が1954年、韓国で創設した。間もなく日本でも布教活動が行われ、59年には日本の旧統一教会ができた。ホームページによると、教義は文氏が考案した「統一原理」と呼ぶ思想・理論によって、理想の家庭や世界平和を実現する指針を与えるとする。
宗教学者の島薗進氏は「ある時期までは、『異端のキリスト教』という枠内にあったと思うが、70〜80年代にかけ、非キリスト教化し、同時期に霊感商法に傾いていった」と分析する。島薗氏によると、新興宗教の中では比較的若い人の入信が多く、高学歴の者も少なくなかったという。「現代文明への失望感が背後にあった。また、離婚が増え始め、家族的な道徳基盤を求める人の流れもあっただろう」
多くの信者を獲得したが、80年代には、先祖供養などを名目につぼや宝石といった高価な品を訪問販売する「霊感商法」や巨額の献金が社会問題に。歌手の桜田淳子氏が92年に信者であることを明かし、教団が配偶者を推薦する合同結婚式に参加したことも話題になった。この合同結婚式は信者の「婚姻の自由を侵害する」として違法と判断された判決も出ている。
2000年には、旧統一教会系の企業が米国の通信社UPIを買収したこともニュースになった。この企業は米保守系日刊紙ワシントン・タイムズも所有している。
◆理念の近さで「右派政治家と互いに利用」
旧統一教会が拡大していく過程で見過ごせないのが、政治との関係だ。特に旧統一教会の実質的な政治部門として機能してきたのが、保守系政治団体「国際勝共連合」(勝共連合)だとされる。
勝共連合は1968年、文氏が韓国と日本で設立した。目的は反共運動。時代は東西冷戦が激しさを増し、米国はベトナム戦争を泥沼化させていた。共産主義の脅威が今より切迫して語られていた。
初代名誉会長には、右翼の大物で戦後政界のフィクサーと言われ、日本船舶振興会(現日本財団)の会長を務めた笹川良一氏を迎えた。岸信介元首相を名誉実行委員長とする集会も開かれたという。
塚田氏は「勝共連合の設立経緯から岸信介や福田赳夫といった理念的に近い保守政治家と結び付いていった」との認識を示す。その上で、「今は改憲や家族観、反ジェンダーフリーなどで考えが合致する政治家との距離が近い。団体にとっては理念の実現や運動が守られることへの期待があるのだろう。一方で、政治家は選挙などで支援が得られる。右派政治家と団体がお互いに利用し合う関係になっている」と解説する。
◆第2次安倍政権でさらに接近
問題となっている安倍氏との関係はどうなのか。
「各地の紛争の解決に努力してきた韓鶴子総裁をはじめ皆さまに敬意を表します」。昨年9月、旧統一教会の友好団体「天...
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