<書評>『天皇論 「象徴」と絶対的保守主義』子安宣邦(こやす・のぶくに) 著

2024年8月11日 07時00分 有料会員限定記事
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◆戦後ナショナリズムの起源
[評]風元正(文芸評論家)

 91歳の子安宣邦は、最後の市民講座のテーマとして「天皇」と「本居宣長」を選んだ。子安の原点は、新任教員として70年安保闘争の渦中、学生たちの焦燥と絶望を間近に見つつ宣長のテキストを読み込んだ経験にある。同じ時期、小林秀雄と吉川幸次郎が「国粋主義や皇国主義の代名詞」だった宣長を復活させた。子安は、2人の大家は『古事記伝』から神道イデオロギー的序文『直昆霊(なほびのみたま)』をはずし、<古伝説>の注釈学者として脱政治化して、「戦後の所謂(いわゆる)<イデオロギー批判>としての国学批判の不毛さ」を衝(つ)いたとみる。
 東アジア世界を俯瞰(ふかん)して考える子安は、中国では1966年から毛沢東の指導による文化大革命が進んでいたことに着目する。この並行現象は、清が帝国としての体制を整えた乾隆帝の治世と宣長の生涯が重なることを想起させる。つまり、18世紀、中国が国家のアイデンティティの問い直しを進めた時期、わが国では宣長が「日本」を発見した。その1世紀半後、文革の渦中、今度は宣長自身が戦後ナショナ...

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