<シリーズ 検証マイナ保険証>
マイナ保険証を持っていない人に交付される「資格確認書」。限定的だった代替保険証の交付対象が広がっている。さらに政府は最近になって積極周知に切り替えた。
そこには、12月に控えた現行の健康保険証廃止への不安を払拭したいという政府の思惑がのぞく。ただ、資格確認書の活用を強調するほど、保険証を廃止する意義は薄れていくばかりだ。(長久保宏美、福岡範行)
◆マイナ保険証を持つ人にも「資格確認書」
厚生労働省は9月になって、マイナ保険証を持っている75歳以上の後期高齢者の一部にも、資格確認書を交付することを決めた。
「国が自らルールを破ってるじゃない」
首都圏のある健康保険組合の担当者は、皮肉を込めて突然の国のルール変更にあきれてみせた。
資格確認書について、政府は「マイナ保険証を持っていない人に限って交付する」との方針を打ち出していたからだ。
◆厚労省「高齢者はITに不慣れなので」
健保や自治体は12月以降、加入者の誰がマイナ保険証を持っていないかを確認し、対象者に資格確認書を交付しなければならない。
この健保では交付漏れを懸念し、加入者全員に資格確認書を交付することも検討していた。ところが、方針に反するとして厚労省が認めなかった経緯がある。
厚労省は9月の変更について「暫定的な運用」と断った上で、「後期高齢者は情報技術(IT)に不慣れで、マイナ保険証への移行に一定の期間を要する」と説明する。
保険証廃止を目前にしたルール変更は、マイナ保険証への移行が拙速であることの裏返しだ。
◆ミス相次ぎ「例外扱い」から方針転換
もともと資格確認書は例外的な位置付けだった。
政府が2023年2月に公表した構想では、マイナ保険証を持っていない人や介護の必要な高齢者などを対象に、本人の申請に基づき交付するとしていた。有効期限は1年を限度として毎年更新が必要だった。
政府の対応が一変したのは、マイナ保険証を巡るトラブルだった。
2023年春以降、他人の情報が誤登録されるなどのミスが多数発覚。保険証廃止に対する国民の批判が高まり、自民党内からも廃止延期論がささやかれた。
◆本人申請がプッシュ型、期限も1年から5年に
政府は、資格確認...
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