珍しい動物をペットにする人が増えている。触れ合いができるカフェも人気を集めている。一方で警鐘を鳴らすのが専門家や環境保全団体。人に近い環境に適応させるための品種改良をしていない「野生動物」の飼育はさまざまなリスクがあるとして自粛を呼びかけている。どんな問題があるのか。(中川紘希)
◆ショップ見つからず「逆に何としても手に入れたくなった」
「ユーチューブを見てかわいいと思った」
2023年から夫や子どもとコツメカワウソ1匹を育てる都内の女性会社員(38)。東京新聞「こちら特報部」の取材に、飼育を考え始めたきっかけを明かす。
各地のペットショップなどに問い合わせたものの、販売先を見つけられず「逆に何としても手に入れたくなった」。最終的に、販売している動物カフェを見つけた。
小まめにフンの処理をする必要があることなどに触れ、「飼育は大変。それでも子どもとカワウソが触れ合う姿を見るのは何にも代え難い幸せ。ペットとして勧められる」と語る。交流サイト(SNS)に日常の動画を投稿し、魅力を伝えているという。
一方、専門家でつくる「日本アジアカワウソ保全協会」(福岡県)は、コツメカワウソをペットにしないように啓発している。
鋭い歯でかまれて大けがする可能性があること、泳ぐための水場といった飼育環境を整えることが難しいこと、診てくれる獣医師が少ないことが主な理由だ。
◆ワシントン条約で国際取引が原則禁止
協会理事長で筑紫女学園大の佐々木浩教授(動物生態学)は「ペット化されていない野生動物は人がいる環境に適応しにくい。動物福祉(動物が健康で幸福であること)が実現できない」と語る。
カワウソはテレビ番組やSNSの影響もあり、2012年ごろからペットとして人気が高まったとされる。生息地の東南アジアなどから輸入が増えて密輸問題も顕在化した。
野生生物の取引を監視する国際NGO「TRAFFIC」によると、2015〜17年に発覚した計59匹のカワウソの違法取引のうち、32匹が日本向けに密輸されようとしていた。
乱獲などで個体数が減少したため、2019年にワシントン条約で国際取引が原則禁止となった。現在は国内で繁殖された個体だけが売買されている。
佐々木氏は「日本人のペット利用がカワウソという種を脅かした」と話す。2019年以降に日本への密輸の摘発事例はないが「カワウソの需要が高まれば問題は再燃する」と懸念した。
◆動物福祉、種の維持、在来種への影響…リスクは多い
飼育が推奨されていない動物は他にもいる。
環境保全団体「WWFジャパン」(東京)は2022年、代表例としてサルの仲間のショウガラゴやスローロリス、スナネコなど、6種類のペット利用の見直しを呼びかけるキャンペーンを始めた。
野生動物のペット利用は、動物福祉を実現する難しさのほか、取引が増えて野生個体の乱獲、密猟、密輸を助長させ、種を絶滅させかねない上、飼い主の遺棄などで在来種の生息地を荒らすといった危険性があるという。
キャンペーンでは動物園の協力の下、飼育の難しさなどを「ウラのカオ」として発信している。
WWFの浅川陽子プログラム・オフィサーは...
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