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たまには夜更かしも。 秋にオススメの名映画。(Maki Saijo)

暑さも和らぎ、ちょっぴりしんみりしてしまう秋の夜長には、しっとりゆっくり映画を鑑賞したくなります。夜更かししてでも観たい3本の名作をご紹介します。

見終わった後にそっと背中を押される、21世紀の名作。

『はじまりのうた』(13)Photo: Everett Collection/AFLO

観る予定もなく、何気なくDVDを手にとった『はじまりのうた』。序盤は正直あまりぱっとしない展開ですが、見終わった後に感動の波がどっとくるような、久しぶりにいい意味で期待を裏切られた映画です。

ストーリーは、彼との関係に疲れた女性(キーラ・ナイトレイ)が、仕事と家庭がうまくいかない音楽プロデューサー(マーク・ラファロ)と出会い、ミュージシャンを目指すというもの。 失意のどん底にいた2人が、希望を抱きながら前に進む力を取り戻していきます。

音楽によって傷ついたけれど、起き上がるエネルギー源となったのも音楽。音楽は人の心を癒すものであり、景色を美しく見せてくれるものかもしれない、そう思わされました。主演2人の演技も目を見張りますが、NYの街中で録音するシーンも魅力的。見終わった後、そっと背中を押されるような内容です。

2人の会話がメインのリアルな恋愛映画。

『ビフォア・サンセット』(04)Photo: Album/AFLO

リチャード・リンクレイター監督の作品が大好きです。肩肘張らない演出に親近感を覚え、会話のやりとりに一切退屈を覚えません。

『ビフォア・サンセット』は、前作『ビフォア・サンライズ』で出会った2人の9年後のストーリー。ジェシー(イーサン・ホーク)とセリーヌ(ジュリー・デルピー)が、パリの本屋で偶然再会するところからスタートし、登場人物は2人以外ほとんど登場しません。実際に撮影も9年後に行われており、さらに映画の進行時間と2人が過ごせる時間も同じだという設定がリアリティに満ちています。美しいウィーンの街を見ながら、2人の会話を追っていくだけで、楽しく充実した時間を過ごすことのできる映画です。

この第2弾『ビフォア・サンセット』はいわゆる恋愛映画といったシーンはないけれど、見終わった後、ずっと心に残る恋愛映画。目の前の幸せを噛み締める大切さを教えられる名作です。

少年たちの忘れられない友情の物語。

『スタンド・バイ・ミー』(86)Photo: Everett Collection/AFLO

ストーリーの舞台は、1950年代のオレゴン州の小さな田舎町。『スタンド・バイ・ミー』は、そこで育つ4人の少年たちそれぞれが主人公です。彼らが好奇心に駆られ、“死体探し”の旅に出るという、未知なる冒険が描かれています。

映画に出てくる「子供時代は二度と来ない」という少年1人のセリフが、ずっと心に残っています。子どもの頃に経験した事は、生涯忘れられないもの。この映画も少年たちはいずれも家庭内に問題を抱え、半不良状態だけど、4人でいることが何よりも楽しい時間です。ここまでやんちゃではなかったはずですが、気づいたら自分と照らし合わせてしまいます。

最後に流れるベン・E・キングによる軽快なメロディの名曲「スタンド バイ ミー」もぐっと心を掴み離しません。

Maki Saijo