繊維大手の東レと学生服飾団体「Keio Fashion Creator(以下、KFC)」のコラボレーションを追う連動企画の最終回は、KFCが12月15日に行ったファッションショーをリポート。KFCの活動の集大成として年に一度開催するファッションショーの今回のテーマは「How to Dress Love?」。デザイナーそれぞれが大切にする“愛”という目に見えないものをファッションとして表現し、未来に残したいという思いを込めた。
デザイナーの藤まいかさんと金泉凛さんは、東レが開発する回収ペットボトルをリサイクルした「アンドプラス(&+)」を使った素材を用いてルックを作成した。二人は東レの静岡・三島工場で、テキスタイルの元となる原糸の製造過程やその先進的な技術を体験し、歴史ある繊維産業の今と未来を学んだ。
昨年に続き参加した藤さんは、「『アンドプラス』の糸を使った“KARUISHI”というテキスタイルでレッグカバーを作った。結び目が多くあるフリンジのデザインで、自分の葛藤や絡まった心を表現しながらも、その気持ちを自分らしく認めてあげたいという思いを含め形にした。“KARUISHI”は発色の良さとふわふわとしたテクスチャー、厚みがあるのに軽くて、でも温かさがあるような印象があって面白さを感じた。自分の気持ちがどんなに絡まっていても、心のどこかは温かい。そんな自己愛を具現化することができた」と語った。
デザイナー初挑戦だった金泉さんは、母のウエディングドレスから構想し、手編みのニットと「アンドプラス」で作ったスカートを合わせた。「この生地を選んだ理由は、原料がペットボトルという発想が興味深かったから。工場でたくさんの人と工程を経て作られていると知って、その技術と品質の高さに感動した。初めて本格的に服作りした私にはまだ扱いが難しく制作に苦戦したが、色と生地の風合いの美しさがニットと相まって、心に残る一着を完成することができた」。
今回の企画では、100年近い繊維技術を継承する東レの若手スタッフと、同じくファッションの未来を考えるKFCの学生メンバーが初めて、産業のあり方やこれからのファッションについて見据えた。東レスタッフの産業を支える意義ややりがい、モノ作りの楽しさから、KFCの学生メンバーが感じた繊維のモノ作りの奥深さと面白さにより、新しい価値を生み出す可能性を示した。
注:現在「アンドプラス(&+)」は、回収したペットボトルなどをリサイクルしたポリエステル繊維と、回収した漁網などをリサイクルしたナイロン繊維の2種類を展開している。なお、回収したペットボトルをチップにする工程は社外の協力企業にておこなわれている。
協業して映す「未来のファッション」