1.22
Q:「ウエアラブル・コンピューター」という言葉をよく聞くようになりました。どんな製品ですか?
A:「ウエアラブル端末」とか「ウエアラブル・デバイス」という言い方をすることもありますが、いずれも身につけて持ち歩けるコンピューターのことです。常に電源が入った状態で身につけることを前提として作られた機器で、パソコンやスマートフォンのように「携帯して必要なときに取り出して使う」のではない点が特徴です。
昨年、グーグルからメガネ型の「グーグル・グラス」が発表されて話題になりました。スマホやタブレットと連携してメールやメッセージのやり取りやウェブ閲覧ができる時計型の「スマートウォッチ」やリストバンド型の活動量計もウエアラブル端末の一部です。
さらに今後はどのような機器が登場するのか、ビッグサイトで先週開催された「第1回ウェアラブルEXPO」で注目を集めたアイテムを紹介しましょう。
全体的に目立っていたのは「メガネ型」でした。装着した端末ですぐに情報を見ることができ、両手がふさがった状態でも使えるので汎用性が高いためです。
中でも大行列だったのが美貴本の「ReconJET」=写真(1)=です。スポーツ向けデザインのメガネ型ディスプレーで、視線を下げるだけで視界の下に加速度計や高度計などの情報を見ることができます。約60グラムの軽量で、右側にディスプレーを含む本体、左側にバッテリーを搭載。左右のバランスがよく、ランニングや自転車競技、ゴルフなどの運動時にもズレません。今春発売予定ですが、価格は未定です。同社からは雪山でゴーグルに装着するタイプの「ReconSNOW2」(本体価格は5万4000円)が発売中です。
ビジネス用途では、メガネ型端末の具体的な利用法が提案されていました。とくに工場や医療現場などでは、指示を直接目の前に表示できるので効率的とのことです。
一方、杉原エス・イー・アイでは、ヘルメットやボールペン、靴の裏、IDカード、カバンなど、身に付けるアイテムの各所にID発信をするウエアラブル端末を展示していました=同(2)。作業員の移動を把握することで効率アップや安全性が確保できるというわけです。
身につけるという意味では、一番違和感がないのが服です。ヤマハが開発した「薄型ストレッチャブル変位センサ」はゴムのように伸縮する薄型変位センサーで、身につける服に組み込むことで体の動きを測定し、リアルタイムでグラフ化できます。
デモンストレーションとして、センサーを組み込んだ手袋を付けてプロのミュージシャンが演奏していました=同(3)。「これまでは、耳で聴くことでしか音楽に近づけませんでしたが、手の動きそのものを測定することができるようになりました」(説明員)。また、日本シグマックスはヤマハのセンサーをスポーツ用のサポーターに組み込み、高齢者のロコモ予防の目安にも使えることを提案していました=同(4)。
ペット用途としてAnicall社の「Anicall」も展示されていました=同(5)。ペットの首輪などに装着できるセンサーで、歩いているときの挙動や寝ているときの体の向きなどを計測します。日々の運動量が分かるだけでなく、「寝姿からリラックスしているかどうかが分かり、犬の場合は『排泄したい』などの気持ちも分かります。長期的に記録し続けば、病気や不調の早期発見にもなります。迷子や盗難防止にも役立ちます」(同社取締役の塙杏奈さん)。
ウエアラブル端末の普及で、SF映画のような世界が現実のものとなろうとしています。 (松本佳代子)