11月のアメリカ大統領選挙で政権奪還を目指す野党・共和党は、15日午後、日本時間の16日未明から、4日間の日程で中西部ウィスコンシン州ミルウォーキーで全国党大会を開き、大会期間中、トランプ氏を党の大統領候補に正式に指名する予定です。
トランプ氏は東部ペンシルベニア州で13日、選挙集会の演説中に銃撃を受け、右の耳にけがをしましたが、当初の予定を変えず党大会に出席するため、事件翌日の14日、開催地ミルウォーキーに到着しました。
トランプ氏はアメリカメディアのインタビューで、事件を受けて、指名を受諾する際に行う演説の内容を書き換えていると明らかにし、国民を団結させる機会になるという認識を示しました。
トランプ氏は党大会を通じて事件に屈しない姿勢を強調するとともに、秋の大統領選挙に向けて弾みをつけたい考えです。
【詳細】 トランプ氏 党大会で銃撃に屈しない姿勢強調へ
アメリカ大統領選挙に向けて野党・共和党の全国党大会がまもなく開幕します。選挙集会の演説中に銃撃されたトランプ前大統領は、党大会を通じて事件に屈しない姿勢を強調するとともに、秋の大統領選挙に向けて弾みをつけたい考えです。
※日本時間7月15日の動きを随時更新してお伝えします。
【ノーカット映像】複数の発砲音 退避するトランプ氏
トランプ前大統領銃撃事件 アメリカ国内や海外の反応は
共和党 全国党大会へ トランプ氏を大統領候補に指名予定
米紙 銃撃受けたあとのトランプ氏のインタビュー記事を公開
アメリカのタブロイド紙「ニューヨーク・ポスト」は14日、トランプ前大統領が選挙集会で銃撃を受けたあとインタビューに応じたとして、電子版で記事を公開しました。
この中でトランプ前大統領は事件を振り返り、「私はここにいるはずではない。死んでいるはずだった。病院の医者は『奇跡だ』と言っていた」と述べました。
そして、不法移民のグラフを見るために頭をわずかに右に向けたことで、致命傷となるはずの弾が右耳に当たるだけで済んだと明らかにしました。
また、銃撃が始まるやいなやシークレットサービスがアメリカンフットボールの選手のように飛んできたのには驚いたとしたうえで、シャツの袖をまくり、その衝撃で右腕にできたというあざを示したほか、靴も脱げたと説明しました。そして「シークレットサービスはすばらしい仕事をした」と称賛しました。
さらに、右耳のあたりから血を流しながらも、拳を上げ、屈しない姿勢を示したトランプ氏の写真について、「多くの人がこれまでで最も象徴的な写真だと言う。彼らは正しい。ただ私は死んでいない。通常、象徴的な写真となるのは死ぬ時だ」と、冗談めかしながら語りました。
このインタビューは、トランプ氏が共和党の全国党大会に出席するため中西部ウィスコンシン州ミルウォーキーに向かう専用機の中で30分以上にわたって行われたということです。
バイデン大統領 国民に冷静な対応と結束呼びかけ
トランプ前大統領は、13日にペンシルベニア州での選挙集会で演説中に銃撃を受け、右の耳にけがをしました。また集会の参加者1人が死亡し、2人が大けがをしました。
FBI=連邦捜査局は、銃撃に関与した疑いでその場で射殺された男について、地元に住むトーマス・クルックス容疑者、20歳と特定し、トランプ氏への暗殺未遂事件として捜査を進めています。
この事件を受け、バイデン大統領は日本時間の15日午前9時ごろからホワイトハウスで国民に向けて演説しました。
この中でバイデン大統領は「アメリカでは意見の違いは投票によって解決する。銃弾ではない」と述べ、事件を改めて非難しました。
そのうえで「この国の政治的なレトリックはいま、熱を帯びているが、冷ますときだ」と述べ、党派対立の先鋭化や社会の分断が懸念される中、国民に対し冷静な対応と結束を呼びかけました。
またバイデン大統領は「銃撃犯の動機や意見、所属団体は分かっていない。捜査当局が調べている」と述べました。
一方、アメリカ ABCテレビによりますと、FBIは現時点で、事件はクルックス容疑者による単独の犯行とみているということで、捜査当局は事件の背景や動機の解明を急いでいます。
米雑誌「タイム」“トランプ前大統領の写真 最新号の表紙に”
アメリカの雑誌「タイム」は、選挙集会の演説中に銃撃されたトランプ前大統領の写真を、最新号の表紙にすることを、SNSで明らかにしました。
表紙の写真には、シークレットサービスらに囲まれ右耳のあたりから血を流しながら拳を上げるトランプ氏の様子が映っていて、後ろにはアメリカの国旗もたなびいでいます。「タイム」は「トランプ氏は銃撃を生き延びた」と投稿しています。
トランプ氏 共和党の全国党大会出席でミルウォーキーに到着
トランプ前大統領は14日、共和党の全国党大会に出席するため、中西部ウィスコンシン州ミルウォーキーに専用機で到着しました。
トランプ氏の選挙陣営の上級顧問がSNSに投稿した映像では、トランプ氏はタラップを下りる際、右手の拳を振り上げるしぐさを見せてアピールしていました。
ミルウォーキー市内では厳重な警備態勢
共和党の全国党大会の開幕を15日に控え、ミルウォーキー市内では厳重な警備態勢が敷かれています。
市の中心部にある会場の周辺は許可された関係者以外立ち入りが認められず、関係者も入る際には手荷物検査と金属探知機によるチェックを受ける必要があります。
また会場から1キロ以上離れた場所でも道路が一部封鎖され、一般の車両は通れなくなっています。
市内には多くの警察官が配置され、警戒にあたっています。
支持者「トランプ氏はファイターだ」
トランプ前大統領が銃撃された事件について、共和党の全国党大会に向けてミルウォーキーを訪れた女性は、「トランプ氏はファイターだ。彼が銃撃されたあと、立ち上がり拳を振り上げて戦うよう呼びかけるのを、私たちは見た。彼を支持し、彼の考えに賛同するために、ここに集まっている」と話していました。
容疑者は地元の20歳男 “車から爆発物の材料”
アメリカのABCテレビなど主要メディアは、クルックス容疑者が使用したのは殺傷能力が高いライフル銃「AR15」で、容疑者の父親が合法的に購入したものだと報じました。
また、AP通信は、捜査関係者の話として、容疑者の車や自宅から爆発物の材料が見つかったと伝えています。
クルックス容疑者は共和党員として有権者登録をしていたと、アメリカのメディアが伝えていて、過激派組織とのつながりがあったのかなど詳しいことは分かっていません。
アメリカ社会では今回の事件に大きな衝撃が広がっていて、今後の選挙戦にどのような影響を与えるのかにも関心が集まっています。
容疑者を知る人たちは
クルックス容疑者について、同じ高校に通っていた元生徒たちはNHKの取材に対し、「もの静かで内気な人だった」と証言しました。
クルックス容疑者の1学年上だった22歳の男性は、「彼はとてももの静かな普通の生徒だった。少し引っ込み思案で、知的な印象もあった」と話しました。クルックス容疑者はこの男性が所属していたライフル部の入部テストを受けにきたものの、技能が足りず、入部が認められなかったということです。
2学年下だった18歳の男性は、通学に使うバスで容疑者と一緒だったとしたうえで、「彼はとても静かで内気な人だった。誰にも話しかけなかった。彼が使うバス停に行ったとき話をしたことがあるが、とても親切でいい人だという印象だった」と話していました。
別の2学年下の男性は、容疑者について「迷彩やハンティングの服を着て学校に通っていた。よい生徒だと思っていたが少し変わっていた。よくいじめられていたと聞いた」と話していました。
米複数メディア“容疑者は介護施設に勤務 食事補助など担当”
アメリカの複数のメディアによりますと、クルックス容疑者は東部ペンシルベニア州のベセルパークにある介護施設に勤務し、利用者の食事の補助などを担当していたということです。
この介護施設の責任者は、容疑者の働きぶりに問題はなかったとしたうえで「彼の関与を知り、ショックを受けるとともに、悲しんでいる」という声明を出したということです。
またCNNテレビは、介護施設の同僚の話として、施設の利用者がドレッシングの包装をより簡単に開けられる方法を容疑者と一緒に考えたというエピソードを紹介したうえで、この同僚はクルックス容疑者を「最高に優しい男」と評し、「職場で政治的見解を示すことはなく、過激派でもなかった」と証言したと伝えました。
欧米メディア 容疑者の顔写真伝える
欧米のメディアは、FBI=連邦捜査局が容疑者として特定したトーマス・クルックス容疑者の顔写真を伝えています。
写真はクルックス容疑者が高校に通っていた2020年に作られたイヤーブックに掲載されたもので、メガネをかけてTシャツを着た容疑者が写っています。
CNNテレビは、容疑者の人となりについて、在学当時、学校生活になじめずいじめられていたとする同級生の話を報じています。
トランプ氏 銃撃から一夜明け SNSに投稿 “団結が重要”
銃撃事件から一夜明けた現地時間の14日朝、トランプ前大統領は自身のSNSに「皆さんのきのうの思いと祈りに感謝する。われわれは恐れない。信仰を保ち、邪悪に抵抗し続ける」と投稿した上で、事件で亡くなった人に哀悼の意を表して、けがをした人たちの回復を願うとしています。
また、トランプ氏は「私たちが団結してアメリカ人としての真の姿を示し、強く決意を固めて、悪に勝たせないことが、いま、これまでになく重要だ」としています。
そして「ウィスコンシンから偉大な国民に向けて話すことを楽しみにしている」と投稿し、15日から中西部ウィスコンシン州で開催される、大統領選挙の共和党の候補者を正式に決定する、党大会に出席する意向を示しました。
また、トランプ氏は14日、みずからのSNSに投稿し、「前日の恐ろしい事件を受け、共和党大会への出発を2日間遅らせることを考えたが、銃撃犯によってスケジュールの変更が余儀なくされるのは許されないと判断した」として、共和党大会が開かれるミルウォーキーに向けて、予定どおり14日午後に出発すると明らかにしました。
容疑者が狙撃したとみられる建物は
容疑者がトランプ氏を狙撃したとみられる建物は、トランプ氏が演説をしていたステージから見て右の方向にあります。
建物の周りには高い木があり、傾斜がそれほどない屋根にうつ伏せになっていたとみられる容疑者の姿は、周囲から見えにくかったことがうかがえます。
事件のあと、選挙集会の参加者やメディアはシークレットサービスからすぐに会場を出るよう指示されましたが、敷地内の駐車場ではNHKの取材班も中継や目撃者のインタビューを行うことができました。
しかし、一夜明けた14日朝からは警察が駐車場を含む敷地のすべての出入り口を封鎖しています。
容疑者の自宅とみられる場所の周辺は
アメリカ東部ペンシルベニア州のピッツバーグから南に10キロほど離れたべセルパークにある、クルックス容疑者の自宅とみられる場所の周辺は、現地時間の14日朝、広い範囲にわたって閉鎖されています。
規制線が張られた場所からは住宅を直接確認することはできず、閉鎖された区域内には複数の警察官の姿が見られます。
また、複数のメディアが遠くからカメラを構えていますが、大きな動きは見られません。
警備員によりますと、住民たちは警察の指示で一時的に別の場所に移っているということです。
バイデン大統領 トランプ氏と電話
ホワイトハウスは14日、バイデン大統領がハリス副大統領とともに、危機管理にあたるための「シチュエーション・ルーム」で、ガーランド司法長官やマヨルカス国土安全保障長官、それにFBI=連邦捜査局のレイ長官らから最新の捜査状況などについて説明を受けたと発表しました。
バイデン大統領はそのあと、ホワイトハウスで会見し、13日に行ったトランプ前大統領との電話について、「彼が元気で回復していることを心からありがたく思う。短時間だったが、よい会話だった」と述べました。
そして「このような暴力はアメリカにふさわしくない」と述べて、今回の事件を重ねて非難しました。
また、容疑者については「動機に関する情報はまだ何もない」とした上で、捜査中であり動機などを推測することは避けるべきだとして、国民に結束を呼びかけました。
さらにバイデン大統領は、シークレット・サービスに対し、トランプ氏の警護を改めて徹底することや、15日から開催される共和党の全国党大会の警備を見直すよう命じたことを明らかにしました。
一方、ホワイトハウスは、バイデン大統領が15日にイベントに出席するため予定していた南部テキサス州への訪問を延期すると発表しました。
イギリスのスターマー首相もトランプ氏と電話
イギリスの首相官邸は14日、スターマー首相がトランプ前大統領と電話で話をしたと発表しました。
この中でスターマー首相は、暴力を非難し、事件の犠牲者と家族への哀悼の意を表すとともに、トランプ氏やけがをした人たちの早期回復を願う気持ちを伝えたということです。