声優 大山のぶ代さん死去 90歳 多くの惜しむ声

人気アニメ「ドラえもん」の声で知られる声優で俳優の大山のぶ代さんが、老衰のため先月亡くなりました。90歳でした。

ドラえもんの声 26年間にわたり担当

大山さんは東京で生まれ、劇団の養成所に入り、1956年にNHKのドラマで俳優としてデビューしました。

また、声優としてもNHKの人形劇「ブーフーウー」のブー役などで活躍し、1979年に民放で放送が始まったテレビアニメ「ドラえもん」では、ドラえもんの声を26年間にわたり担当しました。

頼りないのび太を時にしかりながらも優しく支えるドラえもんを特徴的な声で演じ、ドラえもんは国民的な人気キャラクターとして親しまれるようになりました。

一方で、NHKの「ためしてガッテン」などの情報番組やトーク番組にも出演し、おちゃめで明るいキャラクターで知られました。

ドラえもんの役を退いたあとの2008年に脳梗塞を患い、認知症の症状が出ていたということで、介護を受けながら生活していたことを9年前に大山さんの夫が公表していました。

所属事務所によりますと、大山さんはことしに入って入退院を繰り返していましたが、先月29日、東京都内の病院で老衰のため亡くなったということです。

90歳でした。

1996年に「スタジオパークからこんにちは」に出演した際には、司会からあいさつをもとめられ、ドラえもんの声でこのようにこたえていました。

「大山のぶ代に代わりまして、ぼくドラえもんから、心よりお礼を申し上げます。バイバイ」

ドラえもんへの強い思い ほかの仕事を断る

大山さんは、ドラえもんへの強い思いを著書の「ぼく、ドラえもんでした。」で明かしていました。

この中では、番組の放送が始まる前の年に役の依頼を受け初めてドラえもんを知り、その日のうちに夢中で漫画を読んだとしています。

そして、自身なりの演じ方を考えた結果、未来のネコ型ロボットとして、おっとりしたのんびり屋であるものの、相手をののしるような悪いことばは使わないようにしようと決め、役に臨んだということです。

その大山さんの声について、作者の藤子・F・不二雄さんには「ドラえもんって、ああいう声だったんですねえ」と感心されたということです。

大山さんは「あの子と一緒に仕事をしている間は、他の声の出演はしたくない」とドラえもんの声を務めている間、ほかの声の出演はすべて断っていたということです。

野沢雅子さん「まだ実感が湧きません」

大山さんと親交があったという声優の野沢雅子さんは、「ペコ(大山さんの愛称)とは初期からの声優仲間で長いお付き合いだったので、まだ実感が湧きません。スタジオで会えば『マコ?!』と元気に声をかけてくれた笑顔を、昨日のことのように思い出します。寂しいけれど、あちらのみんなと集まってまた一緒にお芝居してね」というコメントを出し、別れを惜しみました。

しずかちゃん担当 野村道子さん「楽しかった思い出が沢山」

大山さんと同じ時期に「しずかちゃん」の声を担当していた声優の野村道子さんはコメントを発表し、「26年間、ドラえもんで一緒だった大山さん。本当に仲良くさせていただいて、大山さんと小原さんと私の3人で旅行に行ったり、楽しかった思い出が沢山あります」と当時を振り返りました。

そして、「ここ18年くらいは、大山さんの体調もあってお会いすることが出来ませんでしたが、いつも心に大山さんへの思いはありました。お亡くなりになる前に、写真でもいいから最近の大山さんに会いたかったです。心よりご冥福をお祈り申し上げます」と別れを惜しんでいました。

声優の水田わさびさん「大きなバトンを受け取った」

2006年、水田さん(左)と大山さん

ドラえもんの声を引き継いだ声優の水田わさびさんは、「突然のご逝去の報に、何をどう伝えればいいかわからないくらい心が動いております。それくらい偉大な役者さんであり、とてつもなく大きなバトンを受け取りました。今も演じる中で、大山さんがマイクの前に立つ背中を思い出します。その背中に届くように、のび太君たちとこれからも冒険します。長い間、本当にありがとうございました」とコメントしました。

かかずゆみさん「次の世代にもしっかりと愛される作品に」

かかずゆみさん(左)

また、現在のアニメ「ドラえもん」で「しずかちゃん」の声を担当するかかずゆみさんは、「イキイキとしゃべり動き回る『ドラえもん』を見るのが楽しみな幼少期でした。そのお声を聞くと、こどもの頃のワクワクした気持ちを思い出します。長年愛されるキャラクターに育ててくださりありがとうございました。作品を引き継いだ1人として、次の世代にもしっかりと愛される作品作りにこれからもまい進して参ります」とコメントしています。

黒柳徹子さん「とても面倒見のよい人」

NHKの人形劇「ブーフーウー」などで大山さんと共演した俳優でタレントの黒柳徹子さんは、大山さんとの写真を自身のSNSに投稿し、「とても面倒見のよい人で、美味しいお菓子とか珍しい食べ物をスタジオに持ってきてくれたり、私がお芝居をやってる時は、毎回大勢のお友達にチケットを販売してくれて、大山さん団体様御一行という感じで劇場に観に来てくれました。芝居が終わった後に、みんなで一緒にワイワイ食事をするのが恒例でした」などと思い出をつづっています。

そのうえで「大山さんは旦那様を第一に考えて全面的に尽くすタイプで、とても仲の良いご夫婦でした。その旦那様も亡くなってしまい、大山さんはどうしてるのかなぁ?と思っていました。いつも、私に優しくしてくれて、ありがとう。今頃、天国でみんなで一緒にたくさんのお話をしていることと思います」などと感謝の気持ちをつづっています。

大山さんの事務所代表「まじめな人 よく頑張りましたね」

大山さんの所属事務所の守田洋三代表は、「身の回りの世話などをしていた事務所の担当者が、毎日のように顔を合わせていて食欲もあると話していたのでびっくりしました。29日の夕方、体調が急変したと連絡があって担当者が病院に駆けつけましたが、残念ながら間に合いませんでした。病院では大山さんは眠るように亡くなったと話していたそうです」と話していました。

そのうえで「大山さんが『ドラえもん』を担当していたときは、汚いことばを使わないように台本をチェックするなど、まじめな人でした。よく頑張りましたね、としか言いようがないです」と話していました。

藤子・F・不二雄ミュージアム「笑顔を届けて下さった」

「ドラえもん」の原作者、藤子・F・不二雄さんの作品の原画などを展示している「川崎市藤子・F・不二雄ミュージアム」は、「“ドラえもん”として子どもたちの心に寄り添い、ともに冒険をし、笑顔を届けて下さった大山さんのご冥福を心からお祈りいたします」とホームページにコメントを掲載しました。

テレビ朝日「優しく包み込むような声 夢と希望届けた」

「ドラえもん」を放送しているテレビ朝日は、「訃報に接し、驚きと悲しみでいっぱいです。大山さんの優しく包み込むような声は、世界中の子どもたちの心を動かし、夢と希望を届けて下さいました。その多大なるご功績に感謝致しますとともに、ご冥福をお祈り申し上げます」とコメントを発表しました。

東京 渋谷 幅広い年代から別れを惜しむ声

大山さんが亡くなったことについて、東京 渋谷では、幅広い年代から慣れ親しんだ「ドラえもん」との別れを惜しむ声が聞かれました。

60代の男性は「自分は、大山さんの『ドラえもん』をずっと見てきた世代で、子や孫とも見てきたのでとても残念だ。また、あの声の『ドラえもん』を見たくなりますね」と話していました。

19歳の大学生は「あの声の『ドラえもん』を見ていた世代ではないが、よく知っているし、ネットでも見たことがあります。大事な人を失った感じで、ショックです」と話していました。

また、40代の男性は「驚きましたし、悲しいです。自分にとっての『ドラえもん』は、大山さんの『ドラえもん』で、小さい頃を思い出させてくれる声です」と話していました。

20代と10代の娘とともに取材に応じた50代の女性は、「娘たちはあまり知らないかもしれないが、私たちにとっては『ドラえもん』といえば大山さんです。ひとつの時代が終わったようで悲しいです」と話していました。

【動画】大山さん出演「おかあさんといっしょ ブーフーウー」