30人くらいに声をかけたが、全滅だったので…
いま、全国の町や村では、議員のなり手不足が深刻化しています。
「無投票で当選した新人全員が、現職議員の親族だった」という町議会も現れました。
地方議会の現状を取材しました。
(京都局記者 大本亮 ・山崎麻未、ニュースウオッチ9ディレクター 石川理詩)
「無投票で当選した新人全員が、現職議員の親族だった」という町議会も現れました。
地方議会の現状を取材しました。
(京都局記者 大本亮 ・山崎麻未、ニュースウオッチ9ディレクター 石川理詩)
NHKプラスで配信中 配信期限 :12/23(月) 午後10:00 まで↓↓↓こちらで見られます↓↓↓
地方議員企画
「無投票で当選した新人全員が、現職議員の親族」という町議会
人口がおよそ1000人の京都府笠置町です。
定数が8人の町議会。
10月の議員選挙後、初めての定例議会が12月中旬に開かれました。
定数が8人の町議会。
10月の議員選挙後、初めての定例議会が12月中旬に開かれました。
議場には山本議員。山本議員。山本議員。
中央に座る山本議員の息子と親せきが新人として当選しました。
中央に座る山本議員の息子と親せきが新人として当選しました。
「笠置町議会定例会を開会します」
議長の西昭夫さん。その妻、朋子さんも今回当選した新人です。
議長の西昭夫さん。その妻、朋子さんも今回当選した新人です。
8年前に初当選し、ふるさとのためになりたいと活動してきた昭夫さん。
今回の選挙では告示1週間前の時点で立候補予定者は5人だけで、欠員が出る可能性がありました。昭夫さんは当初、知人らに声をかけたといいます。
今回の選挙では告示1週間前の時点で立候補予定者は5人だけで、欠員が出る可能性がありました。昭夫さんは当初、知人らに声をかけたといいます。
昭夫さん
「だいたいたぶん30人くらいに声をかけましたが、全滅でした」
「だいたいたぶん30人くらいに声をかけましたが、全滅でした」
最後に声をかけたのが、妻の朋子さんでした。
朋子さん
「夫の『出てみないか』というのがきっかけになりましたが、町のために何か関わっていけて何かしたいということで今回議員になろうと思ったのが一番の思いですね」
「夫の『出てみないか』というのがきっかけになりましたが、町のために何か関わっていけて何かしたいということで今回議員になろうと思ったのが一番の思いですね」
昭夫さん
「複雑でした。実際声をかけたのは自分なんですけど…」
「家族や妻を出すというのが悪いとは思っていない。ただ、いいとも思っていない」
「複雑でした。実際声をかけたのは自分なんですけど…」
「家族や妻を出すというのが悪いとは思っていない。ただ、いいとも思っていない」
深刻な「なり手不足」の要因の1つが議員報酬の低さです。
議長の仕事のかたわら、土木工事のアルバイトをしている昭夫さん。
議長の仕事のかたわら、土木工事のアルバイトをしている昭夫さん。
笠置町の議員報酬は月額17万円、議長は27万円ですが、調査研究のための経費の一部として交付される政務活動費はありません。
昭夫さん
「これがスケジュール。赤は議員とか公務で動いてるところですね」
「(アルバイトは)緑色」
「これがスケジュール。赤は議員とか公務で動いてるところですね」
「(アルバイトは)緑色」
月に10回ほどアルバイトを入れている昭夫さん。
議会では、議員報酬の引き上げについて話し合おうとしているもののまだ道半ばです。
議会では、議員報酬の引き上げについて話し合おうとしているもののまだ道半ばです。
Q.「議員報酬だけで生活は難しい?」
昭夫さん「難しいですね、ほんまに難しいです。議員活動に力を入れれば入れるほど生活は苦しくなる。議長になって、議員報酬+アルファはあるんですけど、貯金切り崩してます」
昭夫さん「難しいですね、ほんまに難しいです。議員活動に力を入れれば入れるほど生活は苦しくなる。議長になって、議員報酬+アルファはあるんですけど、貯金切り崩してます」
「なり手不足」は笠置町議会だけではありません。
いま、全国の町や村では、定数割れを含め無投票で議員が決まるケースが増え、議員のなり手不足が深刻化しています。
いま、全国の町や村では、定数割れを含め無投票で議員が決まるケースが増え、議員のなり手不足が深刻化しています。
なり手不足対策で注目 11人中3人が20~30代の女性議員
こうした中、独自のなり手不足対策で注目される地方議会があります。
北海道の浦幌町議会です。
北海道の浦幌町議会です。
11人の議員のうち3人が20代から30代の女性議員です。投票が行われた去年の選挙で、初めて当選しました。
竹田議員
「一番若いので、一番身近でありたい。一部の声だけじゃなくて、みんなにとっていいことを言えたなっていうような議員になりたい」
「一番若いので、一番身近でありたい。一部の声だけじゃなくて、みんなにとっていいことを言えたなっていうような議員になりたい」
森秀幸議長です。
9年前の選挙で欠員が出たことをきっかけに、なり手不足対策に取り組んできました。
議員報酬を月17万5000円から21万2000円に引き上げ。
若い世代や女性が働きやすいよう議会のオンライン出席や産休などの制度も導入しました。
9年前の選挙で欠員が出たことをきっかけに、なり手不足対策に取り組んできました。
議員報酬を月17万5000円から21万2000円に引き上げ。
若い世代や女性が働きやすいよう議会のオンライン出席や産休などの制度も導入しました。
「町民と接点を作りたい」と、スーパーや図書館の一角を借りて、こうした議会改革の取り組みなどを町民に伝えることにも力を入れてきました。
去年当選した議員らは、先輩議員と話して「自分でも議員活動ができる」と思えたことが立候補につながったといいます。
去年当選した議員らは、先輩議員と話して「自分でも議員活動ができる」と思えたことが立候補につながったといいます。
高橋議員
「(議員に)なったらどういう日程でとかどのくらいのスケジュールでというのを教えてもらったので仕事と両立できるかなって」
「(議員に)なったらどういう日程でとかどのくらいのスケジュールでというのを教えてもらったので仕事と両立できるかなって」
本間議員
「『産前産後の制度とか、いろんな人が関われる仕組みを議会のなかで作っているから大丈夫だよ』って言ってくれたのが最後の一押しになった。やってみようと踏み出せてよかった」
「『産前産後の制度とか、いろんな人が関われる仕組みを議会のなかで作っているから大丈夫だよ』って言ってくれたのが最後の一押しになった。やってみようと踏み出せてよかった」
議長の森さんは、これからも町議会の存続にむけて模索を続けたいと考えています。
森議長
「なり手不足というのは今まで協議したがこれは終わりのないもの。町民の皆さまと向き合いながら、議員になっていただくような話しをしていきたい」
「なり手不足というのは今まで協議したがこれは終わりのないもの。町民の皆さまと向き合いながら、議員になっていただくような話しをしていきたい」
専門家は
地方自治などに詳しい専門家は。
河村和徳 准教授
「まず議会としてやらなければいけないのは本当に多様な声を聞ける議会として機能してきたかっていう反省はあると思う。うちの地域をよくするためには誰かがやらなきゃいけないんだという形の中で1歩踏み出せるような、その次の世代を1人でも2人でも議会自体が育てなきゃいけない」
「まず議会としてやらなければいけないのは本当に多様な声を聞ける議会として機能してきたかっていう反省はあると思う。うちの地域をよくするためには誰かがやらなきゃいけないんだという形の中で1歩踏み出せるような、その次の世代を1人でも2人でも議会自体が育てなきゃいけない」
取材後記
住民に議会の活動を知ってもらおうという取り組みは京都府の笠置町議会でもいま議論しているということです。
一方で、専門家は「人口減少が進むとやがて限界も出てくる。たとえば、複数の自治体の議員らでつくる広域連合の議会のさらなる活用なども検討する時期に来ている」とも話していました。
地方議員に加え、いま自治会長や民生委員なども担い手不足で岐路に立たされています。
専門家は、そういった役割はかつて地元の「名士」たちの「奉仕の精神」に支えられてきましたが、高齢化や少子化とともに崩壊しつつあると指摘しています。
地方議会は、地域の課題を解決したり、行政が税金を適切に使っているかチェック機能を果たしたりするなど、日々の暮らしに直結する重要な役割を担っています。
議会が住民に議員活動への関心を高めてもらい、担い手を増やそうとする取り組みは欠かせません。
一方で住民側も、みずから町づくりに参加することが人口減少社会を迎えてこれまで以上に求められていると感じました。
(12月16日 「ニュースウオッチ9」で放送)
一方で、専門家は「人口減少が進むとやがて限界も出てくる。たとえば、複数の自治体の議員らでつくる広域連合の議会のさらなる活用なども検討する時期に来ている」とも話していました。
地方議員に加え、いま自治会長や民生委員なども担い手不足で岐路に立たされています。
専門家は、そういった役割はかつて地元の「名士」たちの「奉仕の精神」に支えられてきましたが、高齢化や少子化とともに崩壊しつつあると指摘しています。
地方議会は、地域の課題を解決したり、行政が税金を適切に使っているかチェック機能を果たしたりするなど、日々の暮らしに直結する重要な役割を担っています。
議会が住民に議員活動への関心を高めてもらい、担い手を増やそうとする取り組みは欠かせません。
一方で住民側も、みずから町づくりに参加することが人口減少社会を迎えてこれまで以上に求められていると感じました。
(12月16日 「ニュースウオッチ9」で放送)
京都局記者
大本亮
2016年入局 大津局・鳥取局を経て現所属
現在は文化や宗教を担当
地域経済や人口減少社会の取材にも注力
大本亮
2016年入局 大津局・鳥取局を経て現所属
現在は文化や宗教を担当
地域経済や人口減少社会の取材にも注力
京都局記者
山崎麻未
2017年入局 松江局を経て現所属
現在は京都市政や選挙を担当
山崎麻未
2017年入局 松江局を経て現所属
現在は京都市政や選挙を担当
ニュースウオッチ9ディレクター
石川理詩
2016年入局 千葉局・おはよう日本などを経て現所属
ニュース番組でさまざまな分野を取材 趣味は筋トレ
石川理詩
2016年入局 千葉局・おはよう日本などを経て現所属
ニュース番組でさまざまな分野を取材 趣味は筋トレ