先月28日に召集された第216臨時国会は、会期末の24日に衆参両院の本会議で閉会に向けた手続きがそれぞれ行われ、27日間の会期を終えて閉会しました。
この国会は、先の衆議院選挙のあと初めての本格的な論戦の場となり、新たな経済対策の裏付けとなる今年度の補正予算が成立しました。
補正予算をめぐっては衆議院の審議で、今年度当初予算の予備費から1000億円を能登半島の支援に充てる修正が、立憲民主党の求めに応じる形で行われました。
衆参両院の事務局によりますと、政府の予算案が国会審議で修正され、成立したのは、第1次橋本内閣の1996年度=平成8年度の当初予算以来28年ぶりで、補正予算では初めてです。
また、焦点となった政治改革をめぐっては、立憲民主党など野党7党が提出した政策活動費を廃止する法律と、公明党と国民民主党が提出した政治資金をチェックする第三者機関を国会に設置する法律、それに、自民党が提出した外国人によるパーティー券の購入禁止や、収支報告書をデータベース化して検索しやすくする制度などを規定した法律のあわせて3つの関連法が24日に成立しました。
このほか、旧文通費、現在の「調査研究広報滞在費」をめぐり、1年ごとに使いみちの公開や残額の返還を行うことを義務づけるなどとした改正歳費法も成立しました。
さらに、国家公務員の給与を引き上げる改正法など、政府が提出したあわせて9つの法律もすべて成立しました。
臨時国会閉会 補正予算や政治改革関連法が成立【反応と解説】
第216臨時国会は、27日間の会期を終え、閉会しました。
自民 森山幹事長「少数与党 各会派の意見は真摯に受け止め」
自民党の森山幹事長は記者会見で「補正予算が一部の野党の理解もいただいて成立できたことは何よりだった。いまは、来年度予算案の編成や、税制改正に向けて全力を傾注していくことが大事だ」と述べました。
また「党内や公明党、そして野党とも政策について向き合って議論できたことは1つの収穫だった。少数与党なので、それぞれの会派の意見は真摯(しんし)に受け止め、政策や予算に反映できるものはその努力をしていくことが大事だ」と述べました。
公明 斉藤代表「少数与党 厳しい状況も成果出した」
公明党の斉藤代表は党の両院議員総会で「少数与党という大変厳しい状況だったが、補正予算や政治改革関連法の成立、それに、税制改正で公明党が合意形成の要となって成果を出した。通常国会では、来年度予算案の早期成立を目指し、自民党と連携して与党として頑張りたい」と述べました。
立民 野田代表「従来動かなかったテーマ 前進できた」
立憲民主党の野田代表は記者団に対し「委員長のポストを補正予算の修正や政策活動費の全廃など、従来は動かなかったテーマを前進できたことは一定の成果だった」と述べました。
その上で「来年度予算案の審議では何を勝ち取るのかよく戦略を練り、充実した審議をしていきたい。企業・団体献金の禁止や選択的夫婦別姓の導入など、30年に1回ぐらいの改革を実現することで野党第一党としての存在感を示していきたい」と述べました。
維新 前原共同代表「野党連携強めていきたい」
日本維新の会の前原共同代表は記者会見し「政治改革では、旧文通費が全面公開することになり、政策活動費の廃止も与党が賛成する形で達成できることになった。企業・団体献金の禁止も野党がすべて賛成すれば実現する状況なので、来年3月に向けて野党の連携を強めていきたい」と述べました。
その上で「今は一定程度の規模を持つ野党の協力がなければ法案も予算案も1つも通らない環境であり、日本維新の会の果たすべき役割は極めて大きい。しっかり政策の弾込めをしていきたい」と述べました。
国民 古川代表代行「年収103万円の壁引き上げ 道半ば」
国民民主党の古川代表代行は記者団に対し「与党が過半数割れする新しい政治状況の中で一定程度の成果が出せたと思っているが、新しい政策決定のプロセスに与野党とも十分に対応できている状況ではない。国民が直面する課題に解決策を見つけて政治を前に進めることが重要だ」と述べました。
その上で「私たちが目指している『年収103万円の壁』の引き上げはまだまだ道半ばだ。本格的な交渉は年明けになると思うが、今後の交渉が来年度予算案などの賛否に影響を与えることは十分考えられる」と述べました。
共産 田村委員長「『裏金』議員 弁明拒否できず 明らかな変化」
共産党の田村委員長は記者団に対し「衆議院選挙での厳しい審判を受けて、自民党の『裏金』議員が弁明を拒否できなくなったことは明らかな変化で、政治改革をめぐっては国民の前での議論が必要だという私たちが求めたとおりに行われた」と述べました。
その上で「残念ながら企業・団体献金禁止の実現には至らなかったが、与党だけで国会運営ができない状況にあることは間違いなく、さらに磨きをかけて『少数与党国会』が国民にとって要求実現の場となるよう力を尽くしていく」と述べました。
れいわ 山本代表「経済不況 底上げの論戦行われなかった」
れいわ新選組の山本代表は記者会見で「30年、日本だけが先進国の中で経済不況が続き、コロナで国民は疲弊して中小企業はバタバタ潰れているのにどう底上げしていくかという論戦は行われなかった。どこの政党も小粒の政策ばかりを出していたが、それで懐があたたまるのは一部だけだ」と述べました。
その上で「国民の6割が生活が苦しいという状況なので次は国民や中小企業が豊かになる番だ。手取りを増やすのであるならば大規模な減税と大胆な社会保険料の減免と給付が必要だ」と述べました。
政治部 田尻大湖記者 解説
Q.少数与党の中、初の本格論戦の場となった臨時国会をどう見たか。
A.与党だけでは政策が決定できず国会の様相は様変わりしました。補正予算の審議では立憲民主党の求めに応じて政府案を修正し、ほかの野党の主張も取り込んで、何とか成立にこぎ着けました。
政治改革をめぐっても政策活動費の扱いなどで大幅な譲歩を余儀なくされました。
石破総理は「100%でなくても一歩でも前に進むことが大事でそれが政治のあるべき姿だ」と振り返りましたが、少数与党として、どう合意形成を図るかが引き続きの課題となります。
Q.年明けに持ち越された課題も多い。来年はどうなるのか。
A.1月は、まずは外交ということになりそうです。石破総理は、上旬から東南アジアを訪問し、中旬には、アメリカのトランプ次期大統領との会談も検討されています。
そして、24日の召集で調整が進められている通常国会で与野党の論戦が幕を開けます。過半数を割り込む与党が来年度予算案の成立にこぎ着けることができるのかが、前半国会の大きなヤマ場となる見込みです。
政治改革も3月末までに企業・団体献金の扱いについて結論を得ることを与野党が申し合わせていますので引き続き焦点となります。
一方「年収103万円の壁」の見直しをめぐる3党協議も予定されています。国民民主党は178万円への引き上げを引き続き求める方針で、協議の行方が来年度予算案の賛否に絡む可能性もあります。
さらに来年は夏に参議院選挙が控えています。国会の会期が延長されなければ、投票日は7月20日になる見通しで、こうした日程もにらみながら与野党の対決色が強まることも予想されます。