ガザ地区 約3時間遅れで停戦開始 合意の着実な履行が焦点に

パレスチナのガザ地区での停戦合意をめぐり、イスラエル政府はイスラム組織ハマスから、19日に解放される人質の名簿を受け取ったと発表し、当初、日本時間の19日午後3時半から予定していた6週間の停戦が3時間ほど遅れて開始されました。

またイスラエルの首相府は、人質の解放は日本時間の午後11時以降、現地時間の19日午後4時以降に実施される予定だと発表しました。

今後、双方が合意を着実に履行するかが焦点です。

2023年10月からガザ地区で戦闘を続けるイスラエルとハマスは、停戦合意に基づき19日午前8時半、日本時間の午後3時半から6週間の停戦期間に入ることになっていました。

合意では停戦期間中にハマスが33人の人質を解放する一方、イスラエルは刑務所などに収容しているパレスチナ人を釈放し、ガザ地区の人口密集地域から軍が撤退することになっています。

しかしイスラエルの首相府は、停戦期間に入る1時間ほど前にハマスから、解放される人質の名簿が提出されるまで停戦は開始されないとする声明を発表し、イスラエル軍は日本時間の午後4時すぎにガザ地区北部と中部で攻撃を続けていると明らかにしました。

その時間帯にガザ地区の中継映像で煙があがる様子が見られ、ガザ地区の当局は、イスラエル軍の一連の攻撃で19人が死亡し、36人がけがをしたとしています。

一方、ハマスは名簿の提出が遅れているのは現場での「技術的な問題だ」などとしていましたが、日本時間の午後5時半すぎに3人の女性の人質の名簿を仲介国に提出し、19日に解放すると発表しました。

イスラエル首相府もハマスから人質の名簿を受け取ったとして、当初の予定から3時間ほど遅れて、日本時間の午後6時15分から停戦が開始されると発表し、6週間の停戦期間に入りました。

また首相府は、人質の解放は日本時間の今夜11時以降になるとしています。

ガザ地区での1年3か月以上にわたる戦闘の終結に向けて今後、双方が合意を着実に履行するかが焦点です。

停戦当日を迎えて 住民は

NHKガザ事務所のサラーム・アブタホンカメラマンが、当初予定されていた停戦開始の時刻を過ぎたあとに南部ハンユニスで撮影した映像では、多くの住民が停戦当日を迎えたことを喜ぶ一方、不安を口にする市民もいました。

住民の男性は「また戦争が始まるのではないかと不安に思っている。いつ空爆されるか分からないので不安だ」と話していました。

別の男性は「合意が履行されることを願っている。住民は本当に苦しんでいて、停戦を待ち望んでいる。しかしイスラエルが停戦を宣言しないかぎり、安心することはできない」と話していました。住民の女性は「みんな不安を感じている。停戦が履行されなければさらなる犠牲が増えてしまう。一刻も早く停戦が実現することを願う」と話していました。

エジプト側には支援物資載せたトラック

イスラエルとイスラム組織ハマスの停戦合意では、ガザ地区での停戦の発効とともに、人道状況の改善を図るため、1日あたりトラック600台分の食料が搬入されると報じられています。

ガザ地区のラファ検問所からおよそ80キロ離れたエジプトの幹線道路沿いでは19日、支援物資を載せたトラックが待機していました。

トラックの運転手は主に食料が積まれていると話していました。

《停戦までの動き》

ガザ地区では

NHKガザ事務所のサラーム・アブタホンカメラマンが19日、南部ハンユニスで当初予定されていた停戦開始時間の1時間ほど前に撮影した映像では、多くの住民やジャーナリスト仲間が停戦を待ち望む様子が見られました。

ジャーナリストの男性は「喜び、恐怖、不安と悲しみ、複雑な感情だ。まもなく停戦合意の時間だが、何が起きるか分からない。これまでの経験に照らし合わせると不安を隠せない」と話していました。

別の男性は「戦争には戻りたくないし、家に帰って復興を進めて、以前よりもガザをよくしたい」と話していました。

また、ジャーナリストの女性は「言葉では言い表せない。この瞬間を470日以上待っていた。ここまで生き残れたことをうれしく思う」と話していました。

ネタニヤフ首相 停戦発効を間近に控え強硬姿勢示す

イスラエルのネタニヤフ首相は18日夜、ビデオ声明を出し「イスラエルが第2段階に向けた協議が実を結ばないと結論づけた場合、戦闘を再開する権利はアメリカのトランプ次期大統領とバイデン大統領から全面的な支持を受けている。戦闘を再開する必要がある場合は強力に行う」と述べました。

ネタニヤフ首相が停戦発効を間近に控えて強硬な姿勢を示した背景には、ハマスに対し、警告を行うとともにみずからが率いる連立政権内部で停戦に強く反対する極右勢力に配慮を示したものとみられます。

停戦期間に入るのを前にテルアビブでは

停戦期間に入るのを前に、イスラエル最大の商業都市テルアビブでは18日夜、多くの市民が集まり、33人の人質が無事に解放されるよう祈りをささげていました。

また、協議を続け、第2段階で残る人質の解放を実現させるよう、イスラエル政府とハマスの双方に訴える声をあげていました。

集会に参加していた男性は「33人だけでなくすべての人質がいますぐ解放されてほしい」と話していました。