評判のいい優れたヘッドフォンを手に入れたはずなのに、思ったほどいい音がしない……そんな経験はないだろうか? そんなときに試して欲しいのがヘッドフォンアンプなのだ。
ヘッドフォンアンプ。そう聞いてすぐにその物が頭に浮かぶ人はまだあまり多くはないだろう。それなりに高価なヘッドフォンを愛用している人でも「ヘッドフォンアンプは使ったことはない」という人がほとんどだろう。
ところが、このヘッドフォンアンプというのは、ヘッドホンを愛用するすべての人にお薦めしたいほどの優れモノなのである。というわけで、本特集ではヘッドフォンアンプについての基礎から解説していく。
ヘッドフォンアンプを使うと何がいいの?
ヘッドフォンアンプとは、iPodやPC、CDプレーヤーなどの機器と接続して使うヘッドフォン専用のアンプだ。言ってしまえば、スピーカーを鳴らすためにはプリメインアンプなどが必要なのと同じくらい欠かせないものだ。
ただ、少なくとも数10W、本格的なオーディオ用ならば100Wを軽く超える出力が必要なスピーカーのためのアンプに比べ、ヘッドフォンならば数10mWで十分な音量が得られる。このため、わざわざ専用のアンプを使わなくとも、携帯プレーヤーのヘッドホン出力で十分であり、一般的にはあまり使われることが少ない。
ヘッドフォンアンプが必要になる場面とは、能率(出力音圧レベル)が低いヘッドフォンをPCや携帯プレーヤーと直接接続した際に得られる音量が小さいときとなる。
これは、高性能な音楽用ヘッドフォンでは案外珍しくない。最近はヘッドフォンにこだわる人も多く、屋外でもかなり高価なヘッドフォンを使っているのもよく見かけるが、本来オーディオ機器と接続することを前提に設計されたヘッドフォンの場合、携帯プレーヤーでは出力が不足してしまうことが少なくないのだ。
そして、ヘッドフォンアンプにはもうひとつの効用がある。それは音質の向上だ。携帯プレーヤーは電源寿命を延ばすとか、サイズを小さくしたいといった理由のため、オーディオ信号出力には十分なコストをかけることが難しいし、出力する信号も必要最小限のものとなる。これは、特にカードサイズよりも小さな極小サイズのプレーヤーで顕著だ。
極端に言えば、デジタル記録された信号をアナログに変換し、増幅なども行なわずにそのまま信号を出力してしまうものが、携帯プレーヤーのアナログ出力だと考えていい。信号も出しっぱなしだが、本来はきちんと対策して低減するべきノイズまで一緒に出力してしまうこともありうる。
アンプを通すということは信号を増幅するだけではない。きちんとノイズ対策をして音楽信号だけをヘッドフォンに送り出す役目も重要だ。また、スピーカーと同様にドライバーユニットをしっかりと駆動するための数々のノウハウによって、ヘッドフォン本来の性能をフルに発揮できるように音楽信号を整えることなどをすることで、同じヘッドフォンとは思えないほどに音が変化する。
この音の変化というものも、オーディオ趣味の面白さである。ヘッドフォンアンプによっても音の個性が豊かなので、オーディオアクセサリーとして音色の変化を楽しむような使い方もできる。
そんなヘッドフォンアンプだが、ヘッドフォンを使ったリスニングスタイルは、屋外・屋内での使用や、携帯プレーヤー・PCといった接続する機器の違いがあり、それに合わせていくつか種類がある。本特集では実際の製品をいくつかピックアップしつつ紹介していくが、今回はまず据え置き型のヘッドフォンアンプについて紹介しよう。
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