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エンジニアリング企業の独FEVは2024年12月5日、最新世代のラージフットプリント型リチウムセラミックバッテリー(LLCB:Large-Footprint Lithium Ceramic Battery)を発表した。これは、台湾の全固体電池メーカーProLogiumとの共同開発の成果だ。 LLCBは、100%シリコン複合材料からなる負極をもつ。同製品は、従来の黒鉛負極に比べて10倍の容量密度を達成した。車両に搭載する際の効果は、車両セグメントや使用目的にもよるが、最大300kgの軽量化と最長1000kmの航続距離が見込まれている。 LLCBを構成する固体電解質は、現行品の液体電解質とは異なり不燃性だ。これにより、熱暴走に対する安全性が向上するとともに、万が一電解液が流出した場合でも、漏れた電解液によるショートを防止できる。 従来品の場合、急速充電の間隔に約30分を要するのに対し、シリコン
英ブリストル大学と英国原子力公社(UKAEA)は、2024年12月4日、数千年もの間デバイスに電力を供給できる可能性がある、世界初の炭素14ダイヤモンド電池を開発したと発表した。 この電池は、放射性炭素年代測定に使用することで知られている、「炭素14」という炭素の放射性同位体を利用するものだ。炭素14は、原子力発電所で減速材として使用されるグラファイト(黒鉛)ブロックで生成されるが、ブリストル大学の研究により、炭素14はグラファイトブロックの表面に集中していることが明らかになっている。 英国が保有している大量のグラファイトブロックから炭素14を抽出することで、放射性物質の大部分を除去する処理が可能となり、放射性廃棄物を安全に保管するためのコスト削減が期待される。 研究チームは、グラファイトブロックから抽出した炭素14をダイヤモンドに組み込んで原子力を利用した電池を製造した。この炭素14ダイ
信州大学の研究チームが、太陽光を用いて水から直接的に水素を得る水分解プロセスとして、新しい光触媒によりシンプルな構造で大規模化が容易な低コストの手法を開発した。ペロブスカイト系光触媒Y2Ti2O5S2表面における水の分解において、水素と酸素を2段階で発生させたものであり、面積100m2のシート形状の実証装置を数カ月間作動させることによって、太陽光から水素への変換効率STH(Solar-To-Hydrogen energy conversion efficiency)が向上することを確認した。 研究チームの研究成果が2024年11月27日に『Advanced Science』誌に公開されるとともに、太陽光で水から直接的に製造するソーラー水素の技術開発に関する研究チームによる総説が、2024年12月3日の『Frontiers in Science』誌に掲載されている。 現在、水素燃料の多くは天
STEMやコーディング教育向けの四足歩行ロボットのメーカー米Petoiは、音声コマンドで操作でき、プログラミングが可能なロボット犬「Bittle X」を販売している。価格は279ドル(約4万4000円)となっている。同社は2024年10月、ChatGPTと統合することで、より自然に会話をしてコミュニケーションを取る方法を公式サイトで紹介した。 Bittle XをChatGPTと統合するこのプロジェクトは、トルコのデータサイエンティストでロボット工学者のÖmer Çolakoğlu氏によるものだ。Bittle XはChatGPTとの統合により、より高度な会話が可能になり、賢くなっただけでなく、人間の指示や命令をより正確に理解できるようになった。ChatGPTと統合するための方法はすべて公開されている。 Bittle Xは、手頃な価格でリアルな動きをする手のひらサイズのロボット犬で、ST
北海道大学は2024年12月20日、東北大学などとの研究グループが、全固体電池に用いられる固体電解質を合成する際、材料を装置に入れる前に短時間の手混ぜをするだけで、合成された固体電解質のイオン伝導度が劇的に変化することを発見したと発表した。 固体電解質の合成では、ボールミル装置を使って原料を混合し、化学反応を進める手法がよく使われ、特に硫化物やハロゲン化物などの柔らかい固体電解質の合成では標準的な手法となっている。これまで、合成時間や回転速度、発熱の有無などの違いによる効果の差が検証され、議論されてきた。 これに対し研究グループは、これまでほとんど取り上げられてこなかった、装置に投入する前の手混ぜに注目した。実際には乳鉢と乳棒を使ってかき混ぜるだけの簡単な工程で、これを「予備混合」と名付けて、効果を検証した。 研究グループは硫化物固体電解質のLi7P3S11を使って、予備混合をしたときとし
米マイアミに拠点を置くSea Cheetahは、水素を動力源とする地面効果翼機の開発に取り組んでいる。地面効果翼機とは、地面や水面に近い高度を飛行すると揚力が大きくなる、地面効果という性質を利用して低空で飛行する航空機または船舶のことで、Sea Cheetahの地面効果翼機は水面から約3m以下の高度を飛行する。 地面効果翼機はボートなどの船舶より速く、通常の航空機と比べて積載量が大きいのが特徴で、同社は開発中の地面効果翼機について「ボートより10倍速く、積載量は航空機の3倍、燃料効率はボートや航空機の10倍」と強調する。 最高で135ノット(時速約250km)超の速度に達し、燃料補給なしで数百kmを飛行する。また、同社が開発する水素燃料供給システム「H2Hub」により、現地生産した水素を補給することもできる。 同社は地面効果翼機について3タイプ(旅客輸送、貨物輸送、個人利用)を開発中で、「
カナダのウォータールー大学は9月11日、同大学と香港理工大学の共同研究チームが、太陽エネルギーの93%を利用して海水から飲料水を製造する装置を開発したと発表した。 海水淡水化は、世界の人口と水消費量の急速な増加による水不足に対して、多くの沿岸国や島国の淡水利用に不可欠な技術だ。「国連世界水開発報告書2024」によると、世界でおよそ22億人がきれいな飲料水を利用できない状況にあり、淡水を生成する新技術の必要性が高まっている。 従来の海水淡水化技術は、海水を膜に通して塩を分離する方法であり、エネルギー集約的で運転上の問題が生じやすい。特に、装置表面に蓄積する塩に対して頻繁なメンテナンスを必要とし、連続運転を妨げる。 そこで、研究チームは、自然の水循環過程から着想を得て、樹木が根から葉へと水を運ぶ仕組みを模倣した装置を開発した。 同装置は、ニッケルフォーム表面上の多孔質ポリドーパミン層と熱応答ス
カナダのウォータールー大学で数学を専攻するHudZah氏は2024年8月24日、自身の寝室で核融合装置を構築し、プラズマを生成したとX(旧Twitter)に投稿した。ハードウェアの組み立てや回路設計の経験がまったくない中、Anthropicの生成AI「Claude 3.5 Sonnet」と友人たちの支援を得て、たった4週間でこのプロジェクトを成し遂げた。Claude 3.5 Sonnetについては、PDFなどをAIの知識源としてアップロードできる「Projects」機能を活用した。 HudZah氏は、Olivia Li氏の「ニューヨークのアパートの6階に核融合炉を構築する」プロジェクトに影響を受けている。Li氏が目指したのは静電核融合炉で、静電場を使ってイオン(ここでは重水素)を中心点に向かって加速し、そこで衝突させて融合させるというものだ。その組み立てには、高真空、高電圧、重水素ガス源が
ニューサウスウェールズ大学(UNSW)は2024年8月5日、同大学の研究チームが太陽光を利用して廃液中の硝酸を肥料用の硝酸アンモニウムに変換する「人工葉」を開発したと発表した。従来のアンモニアの工業的製法とは異なり、製造過程で温室効果ガスを発生しないため、環境に優しい肥料製造の道を開く可能性がある。 アンモニアは、世界の農業と食糧生産を支える肥料の生産に不可欠だ。しかし、従来の製造方法は水素を必要とし、高温、高圧の条件下で合成されるため、化石燃料を必要とする。 研究チームは温室効果ガスを排出することなくアンモニアを生産する技術の開発に取り組み、人工の葉のように働くソーラーパネルのみを使って、硝酸塩を含む排水からアンモニウムイオンを生成する技術を開発した。この技術は光合成に着想を得ている。従来のシリコンソーラーパネルの表面に導入された銅と水酸化コバルトからなる薄いナノ構造層が、光電気触媒(P
航空宇宙企業の米Rocket Labが2024年8月8日、新型ロケット「Neutron」用エンジン「Archimedes」の初燃焼試験に成功したと発表した。 Neutronは2段式ロケットで、1段目は再利用可能、2段目は最大1万3000kgの積載物を運搬でき、打ち上げのサイクル短縮とコスト削減が可能になる。Archimedesは1基当たり最大推力16万5000ポンド(約734kN)を発揮し、Neutronの1段目に搭載できる9基合計の推力は145万ポンド(約6450kN)に及ぶ。推進剤には液体酸素と液化天然ガスLNGを混合した極低温推進剤が使用され、多くのエンジン部品が3Dプリンターで製作されている。 初燃焼試験でArchimedesは102%の出力に達するなどの試験目標を達成し、2025年半ばに予定されているNeutronの初飛行に先立ってエンジン性能を実証した。スケジュールどおり進めば
ハワイ地域開発局(HCDA)は、2024年7月3日、ホノルルに日本のクリーンエネルギー技術を導入するため、Kanoa Windsと提携して研究実証用の風力タービン1基を稼働し、ハワイ島での実現可能性を調査すると発表した。 ハワイへの導入が予定されているのは、日本で15年以上にわたって交通ハブの近くや産業施設、住宅地に設置され、効果的に使用されてきたトルネード型風力発電機だ。 Kanoa Windsの創設者兼CEOであるKaname Takeya氏は「日本のトルネード型風力発電機には鳥が巣を作ることが知られており、この技術の安全性と鳥類との共存を証明している。日本ワシタカ研究センターは、環境への影響を最小限に抑えながら、安全性と信頼性を備えたこの技術を承認している」と説明した。 こうした安全性に加えて、トルネード型風力発電機の重要な特徴の一つは広い範囲の風速で発電できることだ。従来の水平軸風
アメリカ・ペンシルベニア州立大学は2024年6月26日、同大学の研究者らが高い導電性を持ち、伸縮可能かつ自己組織化する新素材を開発したと発表した。皮膚と接するひずみセンサーや筋電位センサーといったウェアラブルな医療機器を、3Dプリントによって容易に造形することができる。 研究チームによると、伸縮性を備えた導電体の開発は10年程前から進められているが、従来の製造方法で作成した素材は導電性が高くないといった欠点がある。液体金属ベースの導電体を使うことで導電性を高められるが、その場合は造形した素材に導電性を与えるため、二次的な加工を施して活性化する必要があった。具体的には延伸や圧縮、せん断摩擦、焼結、音波による加圧、レーザーでの活性化などが使われるが、いずれも複雑なプロセスであり、加工時に液体金属が漏れ出して電気回路が短絡し、デバイスの故障につながる危険性があった。 研究チームは、液体金属とPE
ニュージーランドの宇宙関連スタートアップ企業であるDawn Aerospaceは2024年7月12日、同社のロケット推進無人航空機「Mk-II Aurora」が、超音速を含む無制限の速度で高度8万フィート(約24km)までの飛行許可を民間航空局より取得したと発表した。これにより制限空域なしで目視外飛行(BVLOS)が可能となる。 Mk-II Auroraは、高度100kmまで1日2回の飛行を想定して設計されている。2021年7月の初飛行以来、ロケットとジェットの両動力で50回の飛行試験を完了した。2023年の飛行では高度約2.7kmで時速約370kmを達成。以来、広範囲のアップグレードを重ねてきた。 同社CEOのStefan Powell氏は、「Mk-IIはフルパフォーマンスでは、現在の記録保持者であるSR-71を含め、滑走路から離陸するこれまでのどの航空機よりも速く、2.5倍高く飛行しま
米ジョージア工科大学を中心とした研究チームは2024年6月3日、物理実験とシミュレーションを組み合わせた研究により、編み物の技術的なノウハウに対しての数学的な裏付けが明らかになったと発表した。糸の操作や編み目のデザインによって、ニット生地の伸縮性や硬さを変えられる編み物に着目したこの研究は、ソフトロボット、ウェアラブル、ハプティクスといった最先端のインタラクティブ技術に応用できる可能性を提示するものだ。 古くから続く手工芸の1つである編み物が、先端製造業用途への転用の可能性から再び注目を集めている。編み物は1次元の織り糸を、柔軟で耐久性がある2次元の生地に変える。何世紀にもわたり、手編み職人たちはさまざまな種類の編み目を使い、異なる種類の編み目を組み合わせることで、衣服の形状や伸縮性を調整してきた。 他の機械的メタマテリアルと同様に、ニット生地の伸縮性(弾性)は、織り糸自体だけに起因するも
名古屋大学は2024年7月9日、同大学大学院工学研究科の研究グループが、電力を使用せずに10kW以上の熱を輸送できるループヒートパイプ技術を開発したと発表した。 近年、これまで活用されていなかった工場排熱や太陽熱などの熱エネルギーを有効活用する技術が注目を集めている。同技術を実用化するにあたっては、排熱源から離れた利用先まで熱を損失なく運ぶ技術が必要となる。 既存の機械式ポンプは電力を必要とし、顕熱輸送で効率が悪く、機械的な機構の寿命も短いといった点が課題となっていた。このため、無電力で半永久的に、高効率で熱を輸送する技術が望まれていた。 同研究グループが今回開発したループヒートパイプは、電力不要の熱輸送デバイスだ。ウィックと呼ばれる多孔質体が液を吸収する「毛管現象」を、ポンプの動力に用いる仕組みとなっている。 ループヒートパイプの性能向上にあたっては、ウィックで運んだ液体を高効率で蒸気に
マサチューセッツ工科大学(MIT)は2024年6月3日、生成AIを用いて多種多様なデータを組み合わせ、多目的ロボットの学習能力を向上させる新技術「Policy Composition(PoCo)」を発表した。この研究は、同年7月15日~19日にオランダのデルフトで行われるRobotics: Science and Systems会議で報告される予定だ。 ロボットにツールの使い方を理解させるには、ツールの使用方法を示す膨大な量のデータが必要だ。しかし、ロボット向けのデータセットには、色や触覚といった幅広いモダリティや、シミュレーションか人間のデモかといったドメインなど、多様なソースがある。このようなたくさんのソースから得たデータを1つの機械学習モデルに効率的に組み込むことは難しい。そのため、1種類のデータのみを使用してロボットをトレーニングした場合に、未知の環境での新しいタスクをしばしば実行
フィンランドのスタートアップ企業Flowは、2024年6月11日、あらゆるCPUの性能を100倍に向上させるという、「Parallel Processing Unit(PPU)」アーキテクチャを発表した。同時に、北欧のVCなどからの総額400万ユーロ(約6億9000万円)の調達も公表した。 PPUは、従来のCPUにおける並列処理の問題を解決するもので、あらゆるCPUアーキテクチャ、命令セット、プロセスジオメトリに統合できる。既存のソフトウェアと下位互換性があるため、PPU用に再コンパイルすることで大幅に高速化される。 従来のマルチコアCPUでは、共有メモリの参照処理に起因する実行速度の低下や、コア間通信ネットワークでの遅延の増大などの問題があった。PPUは、メモリにアクセスしながら他のスレッドを実行することで、メモリ参照の遅延を隠す仕組みを持っている。 PPUコアの数、機能ユニットの種類と
CREDIT: ADAPTED FROM ACS APPLIED MATERIALS & INTERFACES 2024, DOI: 10.1021/ACSAMI.4C02741 中国の華東理工大学(ECUST)の研究チームが、非接触で物体を感知する柔軟なフィルムを開発した。まつげの近接を検出してまばたきを信号に変換する「まばたき検知メガネ」の実証にも成功している。研究成果は2024年5月22日、『ACS Applied Materials & Interfaces』誌に掲載された。 同フィルムには、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)が使われている。FEPは外部静電場を生成するエレクトレット(電石:磁場を形成する磁石のように、電場を形成し続ける物質のこと)で、物体が表面に近づくと固有の静電荷によりセンサーに電流が流れる。研究チームは、2~20mm離れたところにあるガラスやゴム、アルミニウ
ハーバード大学とGoogleの研究チームは、細胞とそのネットワークを鮮明に示す、これまでで最大のヒトの脳の3Dマップ化に成功した。3D化された脳組織は1mm3とわずか米粒半分ほどの大きさに過ぎないが、その中には5万7000個の細胞、230mmの血管、1億5000万個のシナプスが含まれている。すべての画像データを合わせると1400テラバイトになるという偉業だ。研究成果は『Science』誌に2024年5月10日付で公開されている。 脳3Dマップ化された脳組織は、てんかん患者由来のヒト側頭皮質だ。研究チームは約10年前から、ハーバード大学の電子顕微鏡イメージング技術とGoogleの最先端のAIアルゴリズムを組み合わせて、ヒトの脳のきわめて複雑な配線を色分けして再構築するプロジェクトに取り組んでいる。今回の研究成果は、その最新の進展だ。 今回の研究では、最大50個ものシナプスが結ばれる強力な軸索
スタートアップ企業の米Reach Powerは2024年5月23日、無線周波数(RF)を利用したワイヤレス給電(WPT: wireless power transfer)システムを開発し、無人航空機(UAV)に給電するデモの成功を発表した。 このシステムの開発は、米DARPA(国防高等研究計画局)のBAA(広域機関公示)資金提供プロジェクトに基づいて実施された。アメリカ航空宇宙局(NASA)でのデモでは、飛行中のドローンに向けて256Wの電力を照射した。 同システムは、送電側装置からの距離が約6mの範囲で飛行中のドローンに給電できる。デモでは、4台の送電装置がメッシュネットワークを構築して協調することで、ドローンに搭載された受電装置に50Wの電力を供給した。 この給電装置は、Wi-Fiのメッシュネットワークの動作と同じように、カバー範囲内にある機器に途切れることなく給電する。そのため、工場
オーストラリアのニューサウスウェールズ大学は2024年5月7日、超音波を使って、味を損なうことなくコールドブリュー(低温抽出)コーヒーを3分以内で作る方法を開発したと発表した。この研究についての論文は『Ultrasonics Sonochemistry』に掲載されている。 ホットコーヒーと比べて、滑らかで酸味や苦みが少ないコールドブリューコーヒーを好む人は少なくない。しかし、冷水でゆっくりと風味を抽出するのには12時間から24時間かかるため、飲みたい時に手軽に用意できないのが難点だった。 研究チームは、コールドブリューの抽出プロセスをスピードアップすることを目指し、挽いたコーヒー豆の抽出を早めるために超音波リアクターを使用する手法を開発した。具体的には、既存のBrevilleのエスプレッソマシンに、研究チームが特許を持つ独自の音波伝達システムを搭載。ボルトで固定された変換器を、金属のホーン
長期水力エネルギー貯蔵システムを開発しているイギリスの企業RheEnergiseは2024年4月29日、水の2.5倍の密度を持つ流体を用いた、高密度水力貯蔵システム「HD Hydro」の実証機を建設すると発表した。この種のシステムの実証機建設は世界初のことだという。建設作業は間もなく開始され、9月には試運転が開始される予定だ。 長期エネルギー貯蔵技術のHD Hydroシステムは、低コストでエネルギー効率が高く、環境にも優しいのが特徴だ。水力発電は、高い所に貯めた水を低い所に流すときに生じる位置エネルギーを利用して電気を生み出す仕組みだが、このシステムでは水の代わりに、同社が開発した高密度の流体を使用。密度は水の2.5倍になるという。それにより、スコットランドのハイランド地方やウェールズなど世界各地で稼働している従来の低密度水力発電システムと比較して、2.5倍のエネルギーを供給できる。 今回
インド宇宙研究機関(ISRO:Indian Space Research Organisation)は、2024年5月10日、3Dプリント技術によって製造した液体ロケットエンジンの高温試験を実施し、665秒間の燃焼に成功したと発表した。 試験の対象は、ISROの主力ロケット「PSLV」の第4段で使用される「PS4」エンジンが使用された。酸化剤として四酸化二窒素、燃料としてモノメチルヒドラジンを使用し、真空中で7.33kNの推力を発生する性能をもつ。 従来、このエンジンは機械加工と溶接で製造されてきた。ISROの液体推進システムセンター(LPSC:Liquid Propulsion Systems Centre )は、3Dプリント技術の一種である積層造形に適した設計コンセプト「DfAM(Design for Additive Manufacturing)」によって、PS4ロケットエンジンを再
イギリスのノッティンガム大学化学工学科の研究チームが、金属機械加工産業における廃棄物である切削屑の表面に、プラチナ(Pt)やコバルト(Co)の原子をスパッタリングで堆積させることで、水の電気分解用途の高効率な触媒を作製することに成功した。チタンやニッケル合金の切削屑の表面にある数10nmの溝や段差が、PtやCoのナノ粒子やナノフレークの形成に適しており、実用化されている触媒と比較して10分の1のPt量とCo量で、水の電気分解により効率100%で水素(H2)と酸素(O2)を製造できることを確認した。研究成果が、2024年4月16日にイギリス化学会の『Materials Chemistry A』誌に公開されている。 H2は熱や自動車などの動力を発生するのに使用できるクリーン燃料であり、燃焼によって生じる副産物は水蒸気だけだ。H2製造技術の多くは原料として化石燃料に依存しているが、水と電気からH
科学論文誌のNatureは、2024年4月6日、室温超伝導スキャンダルの渦中にある物理学者のRanga Dias氏についての調査結果を発表した。趣旨として同氏が、データの捏造、改ざん、盗用をしていたことを明らかにした。 今回の調査は、ロチェスター大学が採用した独立した科学者グループが10カ月にわたり実施した。同グループはDias氏に対する16件の不正行為の申し立てを調査し、それぞれのケースにおいて、科学的な不正行為があった可能性が高いと結論づけた。 この調査は、同誌に掲載された2件の論文において、Dias氏が室温超伝導を示すデータをどのように歪曲したか、また、それらのデータを学生たちに知られないかたちで、どのように操作したかという詳細を明らかにした。 Nature誌の論文でDias氏は、最初は炭素と硫黄と水素(CSH)、次にルテチウムと水素(LuH)による化合物で、室温で電気抵抗ゼロの室温
塩分を含む水を新鮮な飲料水に変える、太陽光発電駆動の新しい淡水化システムが開発された。これは従来の手法よりも20%以上安価で、世界中の農村部で導入可能だという。この研究は英キングス・カレッジ・ロンドン(KCL)と米マサチューセッツ工科大学(MIT)らが共同で行ったもので、2024年3月26日付で『Nature Water』に掲載された。 世界の人口のおよそ4分の1は「極めて高い」レベルの水ストレス下にあり、水不足に陥る可能性が非常に高いという。水ストレスとは、淡水需給がひっ迫して日常生活に不便が生じている状態のことだ。 世界の農村人口のうち16億人は水不足に直面しており、その多くが地下水に依存している。しかし、世界の地下水のうち56%は塩分を含んでおり、飲用には適していない。この問題は特にインドで顕著で、国土の60%で塩水が存在するため、飲用に適さない水を抱えている。 しかし、従来の脱塩技
弾性熱量効果(Elastocaloric effect)を利用し、ニッケルチタン(NiTi)合金であるニチノールで作られた「人工筋肉」で冷却する世界初の小型冷却機が開発された。この研究は独ザールラント大学と独メカトロニクス・自動化技術センター(Center for Mechatronics and Automation Technology:ZeMA)によるもので、ドイツのハノーバーで2024年4月22〜26日に開催された国際見本市「Hannover Messe 2024」でプロトタイプが展示された。 弾性熱量効果とは、弾性体の形状が急激に変形する際に発熱や吸熱が起こるというものだ。円筒形のプロトタイプに組み込まれている新技術は、ワイヤーに力を加えて引き伸ばしてから力を取り除き、ワイヤーが元の状態になると、その際に空間から熱が取り除かれるという単純な原理に基づいている。 研究チームは、熱を
米コーネル大学の医学部と工学部の研究者らは、最新の組織工学技術と3Dプリンターを使って、見た目や感触が実物に近い移植用の耳を作製した。 この研究に取り組んでいるのは同大学で形成外科を専門とするJason Spector教授が率いるチーム。今回Spector氏らは耳のレプリカのために、構造を保持しながら細胞の増殖を促す足場となるスキャフォールドを、3Dプリンターを用いてプラスチックで作製した。 以前の研究では、コラーゲンで作られたスキャフォールドに動物由来の軟骨細胞を植え付けていた。この方法だと、初めはうまく成長するのだが、時間が経つにつれてタンパク質の網目構造に引っ張る力が加わり、形成された耳の大きさが半分程度に縮んでしまった。 この課題に対処するために3Dプリンターを導入し、移植対象者の一方の耳からデータを取り、精巧な耳の形のプラスチック製のスキャフォールドを作製した。 コラーゲンででき
ドイツのデザイナー兼職人のKevin Noki氏は、2024年3月18日、自身のYouTubeチャンネルで、Macintosh 128Kの外観を再現したPCを発表した。同氏は、自作PC「Homebrew」とMacintoshの名称を組み合わせて、「Brewintosh」と命名した。 Brewintoshのハードウェアは、プロジェクト始動時に半導体不足に遭遇したことでRaspberry Piが入手できなかったため、代わりに旧型のシンクライアントを使用した。 ソフトウェアは、OSとしてLinuxを搭載し、さらに、1984年から1996年までに販売された初期のMacintoshのソフトウェアを動かすためのエミュレータ、「Mini vMac」を改造して搭載した。 外装は、故障したMacintosh「Plus」の筐体を利用して、パーツを3Dプリントし、研磨してオリジナルと同色で塗装した。ディスプレイ
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