見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

2022年12月関西旅行:明清の美(大和文華館)

2022-12-11 23:25:33 | 行ったもの(美術館・見仏)

大和文華館 特別企画展『明清の美-15~20世紀中国の芸術-』(2022年11月18日~12月25日)

 忙しくてブログが書けていないが、12月第1週の週末の関西旅行の続きである。日曜は、奈良と神戸の展覧会をハシゴしてきた。本展は、主に15世紀~20世紀初頭における明清中国の多彩な美術を紹介する特別企画展である。大和文華館の明清絵画コレクションは大好きなので、どうしても見たかった。

 展示室に入ってすぐの単立の展示ケースには、まず丁敬筆『花鳥図冊』。あまり記憶にない作品だったが、綴じの左側に文、右側に画が記されている。画題は花でなく果物のようだった。隣りは査士標筆『山水図冊』(兵庫県立美術館)。左手に大河か湖、右手には高い山、橋の上に杖を携えた高士の姿が見える。広々した気持ちのよい風景である。さらに隣りは程邃筆『山水図』。深い山の中に抱かれた村落が見える。墨画の点描がちょっと浦上玉堂っぽいと思った。

 展示室の構成は、おおむね時代順。冒頭の『明皇幸蜀図』は、唐代の原本を元~明代に写したものと言われるが、よく見えない。照明の映り込みも残念。『文姫帰漢図巻』は匈奴の左賢王の妻になった蔡文姫を描く図巻だが、これまで嫁入りの場面を見ることが多かったので、帰還の場面(第11~15拍)が開いていたのが珍しかった。左賢王も子供たちも別れの悲しみで慟哭している。

 「明末清初の地方画壇」にまとめられた作品では、張宏筆『越中真景図冊』が好き。龔賢筆『山水長巻』(泉屋博古館)は、料紙が白いので墨色との対比が際立つ。ベタ塗りではなく、繊細な点描を重ねたような黒と白の風景が、無人のまま続いていく(人跡未踏の地ではないので家はある)。西洋の銅版画の影響があるとも言われるが、本展の解説は「五代北宋(の山水画)を淵源とする」とあったように記憶する。

 清代はおなじみの作品が揃う。『台湾征討図巻』には2本マストのジャンク船が描かれている。今年は、久しぶりに清朝を舞台にした中国古装ドラマにハマったこともあって『閻相師像』を懐かしく眺める。この不思議な作品が、日本にあってよかったとしみじみ思う。

 「来舶清人」の作品では伝・余崧筆『桐下遊兎図』が印象に残った。葉鶏頭(?)の下で三羽のウサギが遊ぶ図だが、目つきが鋭くて、あまり可愛くないウサギである。「中国と琉球」では、座間味庸昌(殷元良、1718-1767)筆『船上武人図』が面白かった。このひとは首里生まれで琉球国の宮廷画家となり、北京大筆者(役職の名前、使節団員の中間管理職)として中国に渡った経験があるという。だから唐名も持っているのか。35歳で中国に渡ったというのは乾隆帝の時代だろうか。琉球と中国(清)の交流史、もっと調べたら面白そうだ。

 そして「清時代の地方画壇」では、何度見ても大好きな方士庶筆『山水図冊』。あと、むかしは特におもしろいと思わなかった羅聘筆『墨梅図』や汪士慎筆『墨梅図冊』が、しみじみよいと感じられるようになってきた。嬉しい。

 戴煕筆『鴛湖春櫂図巻』(兵庫県立美術館)も好きな作品だったので書き留めておく。作者は文人画家であると同時に武将で、太平天国の乱が発生すると団練を組織して杭州の防衛にあたったが、太平天国軍が杭州を陥落させると池に身を投じて自殺したという。画家にもいろいろな人生があるものだ。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする