内製化時代におけるSIerの新たな収益戦略:SREとAIOpsが切り拓くビジネスのシナリオ
ユーザー企業が、内製化を拡大させようとしています。その背景にあるのは、ユーザー企業が、ITを前提に『新たな事業の創出』や『事業の変革』に、積極的に取り組もうとしているからです。
自社の競争力や収益の根源をSIerへの外注に頼らず、自分たちの意志や判断で行うことは、当然のことと言えるでしょう。特に、予期せぬ市場の変化に俊敏に対処することは、VUCAの時代にあっては必須であり、そのためにも自分たちで内製し、臨機応変に対応できる能力を持たなくては、事業を継続することは難しくなります。
こうした内製化の取り組みを支えるには、クラウドの活用やアジャイル開発、DevOpsは不可避です。AI駆動開発やAIOpsは、この動きを支え、加速していくでしょう。このような状況に対処し、SIerはユーザー企業の取り組みに対して、どのような役割を果たし、どのようにして収益を上げられるでしょうか。
従来の運用管理とSREの違い
従来の運用管理は、主に定型的な監視や手動による障害対応、そして作業のアウトソーシング(人月ベースの請求)に依存していました。これらは、問題発生後に対処するリアクティブなプロセスが中心であり、障害対応やシステム改善は経験や暗黙知に大きく依存していました。
一方、SRE(Site Reliability Engineering)は、ソフトウェア工学の原則を運用に適用することで、以下のような特徴を持ちます。
自動化と予防重視: 障害の早期検知(MTTDの短縮)や迅速な復旧(MTTRの短縮)を実現するために、運用タスクの自動化や自律的な改善を重視します。
信頼性と可用性の設計: システム設計段階から「設計上の前提」として障害発生を見越した設計(Design for Failure)や回復性設計(Design for Resiliency)を組み込みます。
データ駆動型の意思決定: 膨大な運用データ(ログ、メトリクス、イベントなど)をリアルタイムで解析し、問題の予兆や根本原因を定量的に把握することで、迅速かつ客観的な対応を可能にします。
このように、SREは従来の運用管理とは根本的にアプローチが異なり、技術の自動化と予防的改善、そしてデータ解析を通じた意思決定が求められるため、従来の知識やスキルだけでは対応が難しく、より高度な技術とマインドセットが必要となります。
SIerがSRE・AIOpsに取り組む理由と収益化への転換
ユーザー企業が内製化を進め、自社で事業変革を推進する背景には、予期せぬ市場変化に迅速に対応し、競争力を自律的に高める必要があります。こうした企業は、従来のSIerに依存した人月ベースのアウトソーシングではなく、自社内で運用基盤を整備するための技術支援を求めています。
SREとAIOpsは以下の点で重要です。
自動化と効率化の実現: SREは運用の自動化と継続的改善を実践し、AIOpsは膨大な運用データをAIで解析して問題を予兆検知・自動修復することで、内製運用の信頼性を大幅に向上させます。これにより、ユーザー企業は自社内で安定した運用を行い、変化に迅速に対応できる体制を確立できます。
技術支援とコンサルティングの提供: SIerは、SREおよびAIOpsの導入・運用に関するノウハウを活かし、ユーザー企業の内製化支援や運用プロセスの改善を実現する技術コンサルティングサービスを展開できます。従来の単なる作業請負型から、成果報酬型やサブスクリプション型といった付加価値の高いサービスへのシフトが収益拡大の鍵となります。
プラットフォーム提供による新たな収益モデル: 自社開発の運用自動化ツールやAIOpsプラットフォームをSaaSとして提供し、ライセンス収入や定期利用料を得ることで、従来の人月請求に頼らない収益モデルを確立できます。
具体的な取り組み
SIerがこれらの新たな収益モデルを実現するためには、以下の取り組みが不可欠です。
内部体制の再構築と人材育成
SREとAIOpsのベストプラクティスを社内に浸透させ、最新技術に基づいた運用自動化の文化を構築する。また、エンジニアに対する継続的な研修やワークショップを実施し、従来の運用管理スキルだけではなく、クラウド、コンテナ、AIツールの活用など新たなスキルセットを習得させる。
パートナーシップの強化と技術投資の拡大
クラウドベンダーや先進的なAIOpsツールプロバイダーと連携し、最先端技術を取り入れた運用基盤の設計・導入支援を実現する。また、ユーザー企業が内製化する際の技術戦略やプロセス改善を支援するコンサルティングサービスを展開し、成果に基づく料金体系やサブスクリプションモデルを採用する。
プラットフォーム提供と新サービスの開発
自社で開発した運用自動化ツールやAIOpsプラットフォームをSaaSとして市場に提供する。これにより、定期的な利用料金やライセンス収入を得るとともに、顧客の運用改善効果を継続的に評価・フィードバックし、サービスを進化させる。また、成果指標(MTTDやMTTRの改善、ダウンタイム削減など)を明確にし、これらの数値に基づいたプレミアムサービスや成功報酬モデルを構築する。
ユーザー企業が内製化を推進し、新たな事業変革や市場変化に迅速に対応するためには、従来の運用管理と比べて自動化・予防重視、データ駆動型のアプローチが不可欠です。SREは従来の手動的な運用管理とは異なり、自動化や継続的改善、そして信頼性設計に重点を置くため、従来の知識やスキルだけでは対応できません。これに加え、AIOpsは大規模データ解析とAIによる異常検知・自動修復を実現し、内製運用の基盤を支えます。
SIerは、こうしたSREとAIOpsの導入を支援することで、単なる人月請負型から、内製化支援、戦略的技術コンサルティング、そして自社プラットフォームの提供など付加価値の高いサービスへと事業モデルを変革し、収益の多角化を図ることが可能となります。これにより、SIerはユーザー企業が自らの意思と判断で市場変化に臨機応変に対応できる環境を提供しながら、持続的な成長と収益拡大を実現できるのです。
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