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2015年5月28日木曜日

過熱するオーストラリアの潜水艦商戦。日本の商機は?

日本単独から日独仏の競争入札へ

これまでも「オーストラリアが日本の潜水艦に関心を持つワケ」「日本からの潜水艦導入を巡るオーストラリアの事情」と、オーストラリアの次期潜水艦と日本の潜水艦輸出の可能性についてお伝えしてきましたが、ここにきて事情がだいぶ変わってきました。

昨年末にオーストラリアのジョンストン前国防相が、潜水艦の建造に携わる国営企業ASCについて、「カヌー造りも信頼出来ない」と発言した事で批判を受け、辞任に追い込まれました。それまで日本から潜水艦の輸入を計画していたと報じられていましたが、国防相辞任を受けてアボット内閣は外国との共同開発・生産を行う方針に切り替え、コンペによって今年末までに潜水艦を決定する事になりました。

このコンペにはドイツとフランスが手を挙げ、日本も参加する方針と伝えられています。日独仏の3カ国によるコンペという形になるようです。数百億ドル規模とまで言われている「オーストラリア海軍史上最大の計画」獲得に向け、3国の熾烈な戦いが始まります。

そこで今回は、各国の提案や施策がどのようなものになるか、現時点でわかっている事をまとめた上、比較してみました。


ベストセラー潜水艦の大型化を提案するドイツ

今回の入札に対して、ドイツ鉄鋼・機械大手ティッセン・クルップのグループ企業、ティッセン・クルップ・マリンシステムズ(TKMS)は、U214型潜水艦を基に大型化したU216型を提案しています。原型のU214型はTKMSの輸出用潜水艦の最新モデルで、前のモデルである209型は50隻以上が海外に輸出され、戦後世界で最も普及した通常動力潜水艦です。

ドイツ提案のU216型潜水艦(TKMSサイトより)

U216型は永久磁石を採用する事で従来よりモーターを小型軽量化し、鉛電池より蓄電性能に優れたリチウムイオン電池を採用する等、新機軸を採り入れています。日本との単独契約が伝えられていた頃のオーストラリアは、リチウムイオン電池推進に関心を持っていたと伝えられているので、最新のドイツ潜水艦の特徴であった燃料電池でなく、リチウムイオン電池を搭載してきたのは、大きなアピールポイントになるかもしれません。

潜水艦の輸出大国であるドイツは、豊富な海外輸出経験に加え、高い技術力を持つなど、有力な対抗馬と言えます。


原子力潜水艦の通常動力型を提案するフランス

フランスのDCNSが提案する潜水艦は、現在フランス海軍向けに建造が進められている次期原子力潜水艦シュフラン級(計画名バラクーダ型)の船体を基に、機関を通常動力型に変更したものを提案しています。

フランスが提案するバラクーダ型の原型の原子力推進型(DCNSサイト(PDF)より)

原子力から通常動力に変更されることで、どのくらい原型から変わるのかはまだ明らかではありませんが、原子力型では静粛性に優れたポンプジェットプロペラ推進を採用し、特殊部隊の作戦も考慮した居住スペースを設けており、将来の改良についても柔軟に行える事をウリにしています。



日本の提案と有利なポイント

日本の提案は明らかにされていませんが、オーストラリア側がそうりゅう型潜水艦に興味を示していた事、日本はそうりゅう型そのままの輸出に抵抗を持っていたと報じられていた事から、そうりゅう型を原型としたオーストラリア向け仕様の潜水艦になるのではと推測されます。

海上自衛隊のそうりゅう型潜水艦(海自写真ギャラリーより)

日本が有利な点としては、オーストラリアへの潜水艦技術の輸出にアメリカ側から好意的な反応がある事です。オーストラリア海軍は装備やシステム面でアメリカとの関係が強く、アメリカの協力が得られるならば日本にとり大きな「援軍」となる上、日本も秘密の多い武器システムを渡す事は避けられるので、日豪両国にメリットがあります。

また、オーストラリアが望んでいる水中排水量4,000トン級の通常動力型潜水艦の建造・運用実績は、日本以外に無いのも強みと言えるでしょう。ドイツとフランスも設計案は出しているものの、以前も拙稿「日本からの潜水艦導入を巡るオーストラリアの事情」でお伝えした通り、オーストラリアは過去に潜水艦、防空駆逐艦調達で実績の無いペーパープランを採用して多数のトラブルに見舞われています。高い買い物の潜水艦で、これらの轍を踏む事は避けたいところでしょう。

気になるのは、そうりゅう型の特徴とされるスターリング機関をどうするかです。スターリング機関は非大気依存推進(AIP)機関の一種で、外気を取り込まずに推進力を得る事が出来ます。通常動力型潜水艦の水中での活動時間を向上させる効果があると考えられており、そうりゅう型ではディーゼル機関の補助として搭載されています。しかし、海上自衛隊の次期潜水艦ではスターリング機関を搭載せず、リチウムイオン電池を採用する事で飛躍的に性能が向上すると報じられており、スターリング機関は過渡的な機関として終わる事になりそうです。オーストラリアも過渡的なスターリング機関ではなく、リチウムイオン電池の搭載を望むかもしれません。


受注に向け動いている独仏


元々は日本と単独契約すると伝えられていただけに、日本有利なポイントもある潜水艦商戦ですが、油断はなりません。すでにライバルは受注に向けた布石を打っています。

フランスのDCNSは昨年11月、オーストラリアに現地法人を設立しました(DCNS公式リリース)。狙いはもちろん次期潜水艦です。現地法人設立にあたっては、アンドリュー豪国防相の訪問を受けています。

ドイツは更に踏み込み、TKMSによる豪ASCの取得を検討しているとIHS Jane'sが伝えています(IHS Jane'sリンク)。ASCはその技術力が疑問視されてはいますが、オーストラリアで潜水艦の保守整備を行うのには欠かせない企業です。ASCを手中にすれば、TKMSは製造から保守サポートまで一貫した提案が可能になり、商戦にあたっての強みとなるでしょう。

独仏が既に大きく動き出している中、日本は政治的な繋がりはあるものの、獲得に向けた具体的な施策では出遅れているのではないでしょうか。オーストラリアは防衛分野でアメリカに次ぐパートナーとなると見られているだけに、今回は是非とも日本案を採用してほしいところ。そのためには、日本も思い切った提案が必要になるかもしれません。



【関連記事】

「元艦長に聞く、潜水艦の世界」講演要旨
海上自衛隊の元潜水艦艦長による講演の要旨。日本の通常動力潜水艦の運用や、その優位点、性能等の貴重な話です。


「日本からの潜水艦導入を巡るオーストラリアの事情」
オーストラリアが日本の潜水艦を欲する事情として、過去の艦艇調達プログラムの失敗について紹介。


「オーストラリアが日本の潜水艦に関心を持つワケ」
オーストラリアが日本の潜水艦に関心を持つ理由について解説した過去記事です。理由はオーストラリアの広大な排他的経済水域にありました。


【関連書籍】





2014年10月15日水曜日

日本からの潜水艦導入を巡るオーストラリアの事情

日本を念頭に進むオーストラリア次期潜水艦計画

武器輸出三原則に代わる防衛装備移転三原則を制定し、日本が防衛装備品の輸出を事実上解禁して半年が経ちました。この半年で、早くもオーストラリアとの間で大型商談が浮上しています。今月16日に来日するオーストラリアのデービッド・ジョンストン国防相は、次期潜水艦導入に向けて日本側と協議を行うそうです。「オーストラリア史上最大の防衛調達プロジェクト」とも言われる200億ドルを投じる次期潜水艦計画は、競争入札を経ずに日本のそうりゅう型潜水艦を念頭に交渉が進んでいるとも報じられています。


そうりゅう型潜水艦2番艦「うんりゅう」(海上自衛隊ギャラリーより

オーストラリアが求めているのは、現用のコリンズ級潜水艦の代替となる、長期の作戦が可能な大型潜水艦です。これは、オーストラリアが世界でも有数の排他的経済水域を持ち、その防衛・警備の為に長期作戦可能な大型潜水艦を必要としている為です(詳細は拙稿「オーストラリアが日本の潜水艦に関心を持つワケ」を御覧下さい)。2014年現在、水中排水量4,000トンを超える大型潜水艦は原子力潜水艦を除くと、日本でしか製造・運用されておらず、オーストラリアの要求に応えられるのは日本のみという事になります。



ドイツの対抗案

ところが、戦後で最も成功した潜水艦輸出国のドイツが対抗案を出してきました。News.com.auによると、ドイツで潜水艦を建造しているホヴァルツヴェルケ=ドイツ造船(HDW)社を傘下に持つティッセンクルップ・マリン・システムズ(TKMS)社は、韓国、ギリシャ等で採用実績のある輸出向け潜水艦の214型潜水艦(水中排水量2,000トン前後)を基にした4,000トンの216型を提案するそうです。この提案ではオーストラリア国内で建造を行う旨が示されており、アデレードの造船所で潜水艦を建造する選挙公約を掲げていた現政権にとっては重要な点と言えます。報道では日本で潜水艦建造が行われた場合、3,000人の雇用が失われるとしており、野党を中心に日本からの購入に反対する動きが見られます。


韓国海軍の214型潜水艦「孫元一」(韓国海軍写真ギャラリーより)


対する日本はどのような方法でオーストラリアに潜水艦、あるいは潜水艦技術を提供するのでしょうか。日本国内で製造した潜水艦を輸出する方が日本企業の利益となりそうな上、情報保全の観点からは出来るだけ日本で製造したい思惑もありそうですが、そもそも潜水艦建造には高い技術が求められる為、容易に技術移転出来ないという問題もあります。

また、現代の潜水艦は特殊な鋼材を船体に用いている為、建造には高い溶接技術が求められます。中でも日本の潜水艦に使われている”NS鋼”は日本でしか使われていないので、NS鋼を溶接出来る技術者が国外にいません。潜水艦を建造する川崎重工では、溶接の8割以上をロボット化していますが、仮にこの溶接ロボットをオーストラリアに輸出して溶接技術者問題をクリアしたとしても、オーストラリアは高い初期投投資を行う事になります。もちろん、自国建造では国内産業へのリターンもあるので単純な比較は出来ませんが、輸入より割高な物になるのは避けられそうにありません。



過去に潜水艦で痛い目を見たオーストラリア

そして、過去に潜水艦建造で痛い目を見たオーストラリアの事情もあります。競争入札を経て採用された現用のコリンズ級潜水艦は、スウェーデンのコックムス社の技術をベースに、西欧・米国の様々なメーカーの製品を組み合わせ、オーストラリア国内で建造した大型潜水艦です。ところが、船体溶接の問題、騒音問題、戦闘システムの不具合などの様々な問題に悩まされ、その解決に多くの追加投資と時間を費やす羽目になりました。このような過去の失敗から、オーストラリア政府には自国の建造技術と、現物の無い設計案のみのプランへの不信感があるのではないかと思われます。また、オーストラリアと日本は安全保障上の関係を強化しており、日本から潜水艦を輸入する事で両国の結びつきを強めるという思惑もあるかもしれません。


オーストラリアのコリンズ級潜水艦(米海軍撮影)


ここまでのオーストラリアの事情と、各国の強み、弱みをまとめてみましょう。

オーストラリアが求めるもの:長期の作戦が可能な大型潜水艦。
オーストラリアが心配する事:コリンズ級の失敗を繰り返さない。国内雇用の確保。

日本の強み:大型潜水艦の建造実績が豊富。豪と安全保障関係強化中。
日本の弱み:海外販売経験が無く、サポート体制が未知数。

ドイツの強み:豊富な海外への販売実績とサポート体制。
ドイツの弱み:大型潜水艦建造経験無し。ペーパープランのみ。

また、オーストラリア国内では日本の潜水艦を採用することで、中国との関係悪化を懸念する向きが与党の中にもある点に注意が必要でしょう。競争入札を行わないで潜水艦導入を決める事への反対論も多く、14日に開かれた議会公聴会の外では日本を含む外国での潜水艦建造に反対する労働団体のデモも行われています。オーストラリア国内の状況によっては、日本との交渉も白紙になる可能性もあるかもしれません。

日本としても、秘密の多い潜水艦は出来る限り日本で建造したいところでしょうが、オーストラリアとの安全保障関係強化を優先して譲る所も出てくるでしょう。この場合、どこまで相手を信頼するかという難しい舵取りを日本政府は迫られそうです。



【関連記事】

「元艦長に聞く、潜水艦の世界」講演要旨

海上自衛隊の元潜水艦艦長による講演の要旨。通常動力潜水艦の運用や、その優位点、性能等の貴重な話です。



オーストラリアが日本の潜水艦に関心を持つ理由について解説した過去記事です。理由はオーストラリアの広大な排他的経済水域にありました。



【関連書籍】


浅野亮 (編集), 山内敏秀 (編集) 「中国の海上権力 海軍・商船隊・造船 その戦略と発展状況」

前述の元潜水艦艦長である山内氏による中国の海上権力の分析本。軍に留まらず、商船等の中国海洋勢力に言及している貴重な本です。


中村秀樹「これが潜水艦だ―海上自衛隊の最強兵器の本質と現実 (光人社NF文庫)」

やや潜水艦びいきかなと思う点はありますが、海上自衛隊の元潜水艦艦長による著書で、海上自衛隊内での潜水艦の位置付けや乗員の訓練生活が分かります。


白石光「潜水艦 (歴群図解マスター)」

潜水艦とはなんぞや? という解説本において、歴史からメカニズム、運用まで一冊でカバーした手軽な入門書。



2014年6月2日月曜日

オーストラリアが日本の潜水艦に関心を持つワケ

最近、イギリス旅行にかまけて記事更新を怠ってきましたが、そろそろ通常モードへ移行したいと決心を新たにするdragonerです。

さて、ロイター通信が伝える所によれば、オーストラリアは日本の潜水艦技術に関心を持ち、潜水艦の共同開発等について調整を行っているようです。

[東京/キャンベラ 29日 ロイター] - オーストラリアが関心を寄せる日本の潜水艦技術をめぐり、両国間の協議が本格的に前進する可能性が出てきた。防衛装備品の共同開発に必要な、政府間協定の年内締結が視野に入りつつある。エンジンを供与するだけでなく、日本が船体の開発にも関わる案など、具体的な話も聞かれるようになってきた。ただ、日豪ともに国内での調整課題が多く、実際に計画が合意に至るには、なお時間がかかる見込みだ。

以前からオーストラリアが日本の潜水艦技術に高い関心を示している事は国内外で報道されていましたが、日本政府との調整や潜水艦開発の具体的な内容が報道されるまで話が進んできたようです。現在のところ、オーストラリアは12隻の新型潜水艦の導入を検討していますが、これにどのような形で日本が関わるかはまだまだ予断を許しません。


海上自衛隊の最新鋭潜水艦 そうりゅう型

では、オーストラリアは何故日本の潜水艦技術に興味を持っているのでしょうか。それを考えると、オーストラリアの置かれた立場や狙いが見えてきます。


数か国しかない潜水艦開発国

潜水艦は高い技術が要求される上、秘密にされる部分が多く、自国で建造できる国は限られています。

今現在、潜水艦を自国で開発・建造できる国としては、米英露仏中の核保有国の他にドイツ、イタリア、スペイン、スウェーデン、インド、そして日本が挙げられます。このうち、現在は原子力潜水艦のみ建造している国は米英印で、ディーゼルエンジンを搭載した通常動力型潜水艦の建造技術を持つのはそれ以外の8カ国となります。更に言うなら、イタリアとスペインは共同開発という形で、主要技術をドイツ、フランスに委ねていますので、自力で開発できる国はもっと少なくなります。

また、政治的事情として、アメリカと関係の深いオーストラリアが、ロシアや中国から潜水艦を導入するとは考えられません。よって、これらの国は除外されます。すると、オーストラリアが取れる選択肢はドイツ、フランス、スウェーデン、日本の4つに限られてきます。



オーストラリアの求める潜水艦像

では、オーストラリアが求めている潜水艦とは、どのようなものなのでしょうか?

オーストラリアのコリンズ級潜水艦。多くの不具合が明らかになっている

現在のオーストラリア海軍に配備されている潜水艦は、スウェーデンのコックムス社の協力により1990年代にオーストラリアで建造されたコリンズ級です。スウェーデンは自国での潜水艦開発が出来る数少ない国で、これまでもヴェステルイェトランド級、ゴトランド級などを開発していますが、いずれも排水量は1,000トン台の小型潜水艦でした。しかし、コリンズ級は3,000トン級の通常動力型としては大型の潜水艦で、オーストラリアが単なるスウェーデン海軍仕様のままの小型潜水艦を欲していなかった事が窺えます。しかし、現在配備されているコリンズ級は、開発当初から様々なトラブルに見舞われており、改善事業に多くの予算を費やしていて、評判は今ひとつよくありません。

冒頭のロイターの記事によれば、コリンズ級後継は4,000トン級という条件が付けられており、オーストラリアの強い大型潜水艦志向が窺えます。通常動力型で4,000トン級もの排水量を持つ潜水艦は、現在は日本以外作っておりません。

大型潜水艦は小型潜水艦より取得コスト・維持コストが高くなります。オーストラリアはリーマンショック以降の財政難により、大幅な国防費削減に見舞われています。そのような状況にも関わらず、なぜ高コストな大型潜水艦を望むのでしょうか。


広大な海域を守らなければならないオーストラリア

潜水艦はミサイル攻撃や魚雷攻撃等の派手なイメージがありますが、その主な任務はパトロール、情報収集、哨戒といった隠密性を活かしたものです。これらの任務は平時有事問わず、継続的に長期間行われるため、潜水艦には長期間作戦可能な能力が求められます。この長期作戦能力に重要な要素となるのが、潜水艦の規模です。潜水艦の内部容積が大きいほど、人員や食料、バッテリーが収容できるので、長期の作戦行動に有利になります。オーストラリアの領海と排他的経済水域を足した面積は、世界第2位の約899万平方キロメートルと広大で、6位の日本の倍の広さを誇ります。

排他的経済水域面積、上位7カ国


この広大な海域の権益を守るため、オーストラリアは長期行動可能な大型潜水艦を求めているのです。

では、ここでオーストラリアが取れる選択肢をリストアップして、比較してみましょう。

オーストラリアの潜水艦選択肢

この比較から、オーストラリアが求める大型潜水艦を建造しているのは、選択肢にあるのは日本のみという結果になります。コリンズ級の時と同じく、拡大した設計をヨーロッパのメーカーに求める手もありますが、コリンズ級の開発で失敗した手前、同じ手で失敗を繰り返すリスクを避けたい思惑から、自国で大型潜水艦を設計・開発・運用している日本に大きな関心を抱いても不思議ではないでしょう。

コリンズ級後継艦計画は、現用のコリンズ級6隻を新型潜水艦12隻で置き換える大規模なもので、「オーストラリア海軍史上最大の計画」と呼ばれています。財政難の中でもこのような計画を持っているのは、それだけオーストラリアが海洋とそこから得られる利益を重視しており、莫大な投資に見合うものだと考えている事の証左と言えます。

問題は日本がどこまでオーストラリアに技術を提供できるのか、という判断にかかってきます。オーストラリアはコスト低減や自国企業の利益の為に、自国での建造を含めた技術移転を要求すると思われます。日本にしてみれば、潜水艦は秘密の部分が多いので、出来るだけ技術を国内に留めたいでしょう。この手の技術交渉は破談する事も多々あり、最近も戦車エンジンの技術供与を申し入れていたトルコの提案を、日本は断っています。

まだまだ課題は山積みですが、潜水艦のようなセンシティブな技術情報を共有する事は、それだけ両国の関係が緊密化した事の証であるとも言えます。オーストラリアは日本が情報保護協定を結んだ3カ国目の国で、秘密情報の共有の素地は整っています。あとは政治的決断にかかってきますが、その決断が両国にとって良い結果となればと思います。



【関連書籍】

本当の潜水艦の戦い方―優れた用兵者が操る特異な艦種 (光人社NF文庫)

これが潜水艦だ―海上自衛隊の最強兵器の本質と現実 (光人社NF文庫)


上記2冊はいずれも海上自衛隊の元潜水艦艦長による、潜水艦の任務や戦い方についての本。多少、潜水艦贔屓に過ぎるのではないかというきらいはあるものの、潜水艦の特性を知り尽くした人が書くだけあって、示唆に富んでいます。


潜水艦を探せ―ソノブイ感度あり (光人社NF文庫)


先ほどとは変わって、潜水艦を狩る側からの本。潜水艦がいかに厄介か、それを探知するのにどれだけ苦労するかを知ることで、逆に潜水艦の価値がどういうものか分かります。








2014年1月29日水曜日

インドが購入する救難飛行艇US-2、「輸出」ではなく「協業」に?

以前から輸出に向けて売り込みが行われていた国産救難飛行艇US-2ですが、インドが購入する方向で概ね合意したという話をロイターが報じています。

純国産で水陸両用の海上自衛隊救難飛行艇「US2」について、インドは購入する方向でおおむね合意しており、総額は16億ドルを超える可能性がある。複数のインド当局者が28日、明らかにした。 一機当たりの価格は1億1000万ドルで、最低でも15機購入する公算が大きいとしている。 共同生産など詳細については、3月に開かれる合同作業部会で詰めるという。


まだ口頭での合意で予断を許しませんが、輸出に向けた関門を1つクリアーしたと見ても良さそうです。


インドが購入すると報じられている、海上自衛隊のUS-2救難飛行艇

しかしながら、記事の後段にある共同生産等の協議は、輸出条件を巡って難航するかもしれません。インドは防衛装備の国産化を進めており、時には二国間の関係よりも技術移転を優先させる事がしばしばあります。近年行われたインド空軍の中型多目的戦闘機(MMRCA)のコンペでは、原子力協定締結や武器輸出解禁で関係が深まりつつあったアメリカの機種は選考外となり、広範な技術移転を行うと表明していたフランスのダッソー・ラファールが受注を獲得しました。受注を獲得したフランスも、インド空軍が調達するラファール126機のうち、100機以上をインド国内でライセンス生産されることになっており、インドへの技術移転も含めるとフランス側の旨味はそれほど大きいものでは無さそうです。

インドは装備国産化を推し進めており、2013年8月には国産空母ヴィクラントが進水し、国産原子力潜水艦アリハントも原子炉が臨界に達して稼働を開始するなど、相次いで成果が出ています。特に宇宙分野における国産化は進んでおり、インド独自の航法衛星システムであるIRNSS、地球観測システムは軍民双方での利用され、産業や防災分野における衛星情報利用は日本よりも先進的です。

進水したインド国産空母ヴィクラント(撮影:Drajay1976


このように防衛装備の国産化を進めているインドですが、救難飛行艇であるUS-2は、戦闘機と比べて技術移転の優先度は低いと思われます。しかし、自国航空産業の育成のため、共同生産の配分や技術移転について、インド側への譲歩を求められる事は十分に考えられるでしょう。購入する15機のほとんどが、インド国内で生産されるかもしれません。

しかし、仮にインド側の生産比率が大きくても、悪い話ではないかもしれません。海上自衛隊が運用するUS-2は、2014年1月現在で試作機含め5機で、調達も数年に1機程度と低調です。インド軍が何年で全機配備するかは不明ですが、メーカーの新明和工業の生産能力を超えるスパンで供給を求められた場合、インド国内で生産した方が合理的と言えます。また、これまでのインドは武器輸入大国でしたが、近年は徐々に武器輸出にも力を入れ始めています。同じく日本も武器輸出を模索していますが、仮にインド国内に新たにUS-2の生産工場を作った場合、そこから日印共同で航空機の生産・輸出を行う事も可能になり、武器輸出を拡大したい日印の思惑が一致するかもしれません。先日、トルコの次期主力戦車のエンジン開発を日本とトルコの合弁企業で行う動きがある事をお伝えしましたが、トルコと同じように、インドと航空分野で協業することで、国際市場の足がかりにする事も視野に入っているのかもしれません。

武器輸出は経済的利益の他に、政治的思惑が強く働くビジネスです。目先の利益に囚われて、インドを客としてしか見ないのではなく、パートナーとして取り込み、関係を深化させていく視点も重要となるでしょう。


【関連】

西原正,堀本武功(編)「軍事大国化するインド」亜紀書房

碇義朗「帰ってきた二式大艇―海上自衛隊飛行艇開発物語」 (光人社NF文庫)

「新明和 US-1」(世界の傑作機 NO. 140)




2013年11月13日水曜日

韓国から日本に鞍替え? トルコの戦車開発パートナーと日本の事情

先日、三菱重工業がトルコ企業との合弁会社を設立し、トルコ軍向けの戦車用エンジンを供給する計画が報道されました。


政府がおととし、いわゆる武器輸出三原則を事実上緩和したあと、各国から日本に対し、防衛装備品の共同開発の要請が相次いでいて、トルコのユルマズ国防相も、ことし3月に、小野寺防衛大臣と会談した際、日本との技術協力に期待する考えを示しました。 トルコは、戦車用のエンジンを両国の企業が共同開発することを念頭に技術協力を行いたいとしており、これを受けて防衛省は、「防衛産業の基盤強化につながる」として、具体的な検討を進めています。

出典:トルコと防衛装備品で協力検討

日本とトルコは、今年5月に安倍晋三首相が訪問した際に発表した共同宣言で防衛協力の強化をうたっており、エンジン開発はトルコ政府が日本側に持ちかけた。


出典:トルコと戦車エンジン共同開発=三菱重、合弁会社設置へ

小野寺防衛大臣は具体的に共同開発が決定された訳ではないとしていますが、この合弁企業の話はトルコ側から持ちかけてきた話と報道されており、そうなると後は日本の判断待ちのようです。

トルコは次期主力戦車として”アルタイ”戦車の開発を終え、2015年から配備を開始する計画です。このアルタイ戦車は、韓国で開発中の K2戦車をベースに、トルコの軍用車両メーカーのオトカー社が、韓国の鉄道・軍需機器メーカーの現代ロテム社と共同開発を進めていたものでしたが、ベース となるK2戦車よりも先にアルタイ戦車が完成する事態になっています。

K2戦車の開発が遅れている最大の要因は、エンジン・変速機を統合した”パワーパック”(動力装置)と呼ばれる中核コンポーネントの国産化が上手くいっていない為です。今年の10月にも、K2戦車用パワーパックの開発延期が報じられています。


【ソウル聯合ニュース】韓国陸軍の次期主力戦車「K2」で用いられる韓国製パワーパック(エンジンと変速機を一体化したもの)の開発期間が再び延長された。  防衛事業庁は11日の防衛事業推進委員会で、韓国国内で開発する1500馬力エンジンおよび変速機のK2への搭載時期を来年6月から12月に延期することを決めた。


出典:韓国軍のK2戦車 国産パワーパックの開発期間を再延長


K2戦車がパワーパックで開発に躓いているのを尻目に、アルタイ戦車はパワーパックをドイツのMTU社から購入する事で、パワーパックで躓くこと無く開発を終えました。アルタイ戦車はサウジアラビア向けの輸出も決まるなど、これまでの出足は順調です。しかし、自国の防衛産業育成に熱心なトルコとしては、戦車の中核部品と言えるエンジン・変速機を自国で開発・生産する事で、より強い国際競争力を付けたいと思われますが、まだまだ技術的に他国に頼らざるをえない状況にあります。

アルタイ戦車は将来的に現在のMTU製の1500馬力のエンジンから、より高出力の1800馬力の国産エンジンに換装する計画ですが、トルコ単独での大出力エンジン開発は厳しいものがあると思われます。今までの共同開発国である韓国は、パワーパック開発で躓いているなど技術面で不安があり、技術力のあるドイツのMTU社もおいそれと中核技術を渡す事は無いでしょう。そうした中、日本の武器輸出三原則緩和によって、トルコにとっての新たな戦車 開発パートナーの候補として、日本が挙げられるようになったと思われます。

では、日本の事情はどうでしょうか。トルコが欲しい技術面を見ますと、国産の最新戦車である10式戦車は、世界で初めて戦車に油圧機械式無段変速機(HMT:Hydro- Mechanical Transmission)を搭載しており、スムーズな変速と効率的な出力伝達を可能にしています。これにより、10式戦車は後進でも最大速度の時速70キロを出せるなど、従来の有段変速機搭載戦車(10式以外の戦車全て)と較べて、機動性が大幅に向上しています(下の動画で機動力の一旦をご覧いただけます)。

国産最新鋭の10式戦車






このような高い機動性を誇る10式戦車を生んだ日本の防衛技術ですが、その前途は危ぶまれています。防衛省は戦車の定数を、現在の740輌から300輌へと削減する方針だと報道されています。


防衛省は、陸上自衛隊が保有する戦車数を現在の約740両から6割削減し、約300両とする方針を固めた。


出典:陸自戦車さらに削減300両に…新防衛大綱で


ここまで大量削減が行われると、国内にしか市場がない日本の防衛産業にとり、大きなダメージとなります。防衛省の装備調達数は年々減っており、このままでは日本の防衛産業に壊滅的ダメージを与えると懸念されています。このため、武器輸出三原則の緩和には、海外市場を開拓することで、日本の防衛産業を存続させようとする意向もありました。

このような状況の日本にとり、戦車の中核部品であるエンジン等の動力装置を海外で販売できる事は大きな意義を持ちます。一方、トルコとしても、アルタイ戦車の改良と装備の国産化は重要課題であり、そのために日本の協力を得られるのであれば、渡りに船と言えます。つまり、日本とトルコ双方に大きなメリットがある提案だと言えるでしょう。

問題は日本とトルコが組む事による政治的リスクです。従来から日本と共同開発を行ってきたアメリカや、検討中のイギリス・フランスと比べ、トルコには武器輸出を巡る問題があります。伝統的にトルコへの武器輸出はドイツが大きなシェアを持ちますが、1999年にはトルコへのレオパルド2戦車1000輌輸出計画を巡り、ドイツ政府で大きな政治問題になったこともありました。クルド人に対する人権弾圧をい行うトルコ政府に戦車を輸出する事に、緑の党から反対意見がなされ、緑の党と連立政権を組む社会民主党はドイツ国内の雇用維持を主張して戦車輸出を目指したために、連立政権解消寸前まで至る事態になりました。

武器輸出は国際環境に大きな影響を与える取引であり、その武器の行方にも責任が問われます。過去に日本でも、アメリカへ民間向けに輸出されたライフル銃が北アイルランドに送られて違法改造され、IRAのテロ活動に使われていた事が国会で問題となり、メーカーの豊和工業での製造が打ち切られる事件がありました。武器輸出をすることは、このような政治的リスクを覚悟した上で行う必要があります。

日本とトルコ双方にメリットの大きい合弁会社計画ですが、武器輸出そのものの政治性の大きさと、リスクを理解した上で判断を下す必要があります。過去、武器輸出が政治問題化する恐れが小さかった日本ですが、現在は世界的な装備の国際共同開発の潮流があり、成長戦略としての武器輸出も検討されています。あえて火中の栗を拾うならば、そこから生じる問題を解決するために備える事も、また重要になってくるでしょう。


【関連書籍】

2013年10月17日木曜日

武器輸出問題は完成品の輸出より、今も行われている汎用品に目を向けた方がいいんじゃね?

先日、こんなニュースがありました。

川崎重工業が製造する海上自衛隊艦船用エンジン部品を、英海軍艦船向けに提供することを日本政府が認めたことが分かった。政府関係者が14日、明らかにした。同部品は民生用としても広く使用されていることから、政府は紛争当事国やその恐れのある国への兵器売却を禁じた武器輸出三原則には抵触しないと判断した。



政府判断により、英国海軍に川崎重工が製造するエンジン部品を供給を、武器輸出三原則に抵触しないとして許可したという報道です。その判断の鍵となったのが、当該の部品が民生用としても広く使われている部品であることでした。

ここで、武器輸出三原則とは何かを整理してみましょう。

武器輸出三原則は1967年に佐藤栄作首相が表明したもので、次の3点の場合に武器輸出は認められないとした規定のことです。

  1. 共産圏諸国向けの場合
  2. 国連決議により武器等の輸出が禁止されている国向けの場合
  3. 国際紛争当事国又はそのおそれのある国向けの場合

この3条件を厳格に適用した場合でも、かなりの国(西側諸国はほぼOK)への武器輸出が可能と解釈できますが、1976年に三木武夫首相が三原則について追加で以下の政府方針を表明しています。

  • 三原則対象地域については、「武器」の輸出を認めない。
  • 三原則対象地域以外の地域については、憲法及び外国為替及び外国貿易管理法の精神にのっとり、「武器」の輸出を慎むものとする。
  • 武器製造関連設備の輸出については、「武器」に準じて取り扱うものとする。

現在言われている「武器輸出三原則」は佐藤首相が示した原則より、三木首相が示した方針の方に沿った運用が今もなされており、経済産業大臣の許可を必要とする事で、いくつかの例外(米国向け技術供与、ミサイル防衛等)を除いて武器輸出は行われてきませんでした。

最近は武器輸出三原則を巡って、国際共同開発への参画や航空宇宙産業の振興などの観点から、三原則を緩和しようという動きが出ています。2011年の野田内閣で三原則の一部が緩和され、武器の国際共同開発に道が開かれました。これにより、航空自衛隊の次期戦闘機に内定しているF-35の部品製造に日本企業が参加するため、F-35の部品輸出を三原則の例外にする事や、海上自衛隊の救難飛行艇US-2のインド向け輸出の検討、航空自衛隊のC-2輸送機の民間型輸出などの構想が浮上しています。


民間型のインドへの輸出が検討されている、海上自衛隊の救難飛行艇US-2

しかし、武器輸出の問題は、政府によるコントロールがしやすい上記のような完成品よりも、コントロールが難しい製品にあると言えます。例えば、武器とそうでないものの区別が難しい輸出品がそれです。自動車がその代表で、チャド内戦は政府軍と反政府軍双方がトヨタ製ピックアップトラックに武装を施して戦闘をしている様子が報道されたために「トヨタ戦争」と呼ばれていましたし、アルカイダの指導者だったウサマ・ビン・ラディンはランドクルーザーで移動し、それを捜索する側の米軍もハイラックスの北米仕様であるトヨタ・タコマを使っていました。これらの乗用車やトラックは、軍用と民間用に差がほぼ無く、現在も世界各国で日本製自動車が軍用として使われています。紛争地への小型武器輸出が国際的な問題になっていますが、しばしば紛争地で主力兵器として日本製車両が使われている事実は、あまり好ましいことではありません。




このように、元々武器との区別が曖昧だった製品もある中、近年はさらに問題が複雑化しています。それは、武器開発分野において、標準化・汎用化された民生の汎用品を用いてコスト低減を行う、COTS(Commercial Off The Shelf:商用オフザシェルフ)と呼ばれる開発手法が広まったことです。従来、武器開発では信頼性等の問題から専用部品が多く使われていたのですが、武器開発へのCOTSの普及により、全く武器を連想させないような民生品でも、武器部品として使われる恐れが出て来ました。これに絡んで、先日はこんな報道もありました。

トルコが中国の「紅旗9型(HQ-9)」長距離地対空ミサイル(輸出型FD2000)の購入を決定したというニュースに世界中が注目する中、ネット上でその画像を見た海外のネットユーザーから「HQ-9には、日本製のAZ8112型リミットスイッチが採用されている」との指摘が上がっている。29日付で環球網が伝えた。
出典:中国の「HQ-9」ミサイルに日本製の電子部品、海外ユーザーが指摘―中国メディア

中国製の地対空ミサイルに日本製の電子部品が使われていたという、中国メディアの報道です。ロケット・ミサイルにも使われる部品のうち、経済産業省が定める仕様にあるものは輸出貿易管理令で大臣の許可が必要になりますが、汎用品である場合はそれに引っかからない物も多くあると考えられます。しかし、武器輸出三原則に照らしても、共産圏諸国の中国(今もそうかは議論があるでしょうが)で日本製品が武器部品として使われる事態は、好ましくないものです。

ここで問題になったリミットスイッチを含め、スイッチ・センサーはあらゆる機械製品に使われている部品であると同時に、日本メーカーはこの分野で大きな市場シェアを持っています。他にも、日本メーカーが大きなシェアを持つ半導体や無線通信、光学機器、発動機、バッテリーといった分野の製品が、海外で武器の部品として使われている可能性がありますが、それらの汎用品の武器転用を規制するのは実際には困難でしょう。汎用品とは、言い換えれば何にでも使える部品なのですから、武器開発で汎用品が使われるようになった以上、武器転用される事は避けられません。

では、このような日本製品や汎用品が、紛争地や軍事的緊張下にある国で武器に転用される恐れに対し、日本はどのように臨めば良いのでしょうか。民生品や汎用品として輸出される以上、その武器転用を規制するのは困難です。武器転用する恐れのあるユーザーへの販売に制限をかけるような、従来からの武器輸出規制のスキームをより洗練させる方式にはおのずと限界があります。

むしろ、単純に規制で出口を絞るのではなく、日本製部品の武器転用の事実を把握したなら、その使用者を日本のコントロール下に置くようなアプローチが必要になってくるかもしれません。例えば、継続的メンテナンスが必要となる消耗部品が武器転用されていた場合、その部品の流通をコントロールすることで武器の稼働率に影響を与えられます。また、使われている部品が判明することで、武器の性能や生産数を推測する手がかりになります。使われている部品一つで、武器をコントロール下に置くことが可能になり、武器転用したのが日本と軍事的に緊張関係にある国であった場合、日本の防衛にとっても大きなメリットとなります。そういった事から、これからは輸出規制に加え、輸出された製品の監視・追跡を行い、最終製品が何であるかを把握するトレーサビリティーシステムの構築が、より重要になってくるのではないでしょうか。


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