安心していい。対中露外交は、日本が主導権を握っている!
「格上感」を演出するプーチンと習近平。
だが、その焦りは隠せない

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プーチンが一枚上手だった

ニューヨークで開かれた国連総会を機に、米国と中国、日本とロシアなど重要な2国間の首脳会談が相次いで開かれた。残念ながら、世界の平和と安定に大きく貢献するような成果はなかった。だからといって悲観する必要もない。いまは我慢比べの局面である。

米中首脳会談の不首尾は、オバマ大統領と習近平国家主席が共同記者会見で見せた仏頂面が如実に示している。2人は互いに目を合わそうともしなかった。サイバー攻撃問題で閣僚級の協議続行に合意した程度で、南シナ海問題では完全な物別れに終わった。

日ロ首脳会談も新たな進展はなかった。安倍晋三首相が予定時間に遅れて駆けつけたにもかかわらず、プーチン大統領は穏やかな表情を崩さなかったのが、せめてもの救いである。「けんかにならず良かった」程度なのだ。

両首脳は2013年4月の会談で「(北方領土問題は)双方が受け入れ可能な解決策を目指す」ことで一致し、昨年11月の会談では「適切な時期」にプーチン大統領が訪日することで合意している。今回、具体的な訪日時期を決められなかったのは、あきらかに足踏みである。

米ロ首脳会談も、シリアのアサド大統領を支援するプーチン大統領と、アサド体制の継続を認めないオバマ大統領の対立が際立った。オバマ大統領の手詰まり感が強まる一方、プーチン大統領は総会でシリアを支援する国際連合構想を提唱し、存在感を発揮した。

こうしてみると、攻勢に出ているのは中国とロシアで、米国も日本も押されっぱなしのように見える。言うまでもなく、南シナ海で国際法を無視した岩礁埋め立て・軍事基地化作戦を続けているのは中国であり、クリミアに侵攻したのはロシアだ。

本来、乱暴狼藉を働く国家に懲罰を与えるのが国連の役割である。にもかかわらず懲罰どころか、逆に習主席とプーチン大統領に言いたいことを言わせる場を提供してしまった。国連総会が無法行為の既成事実化に一役買った形になったのは、実に皮肉である。

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