写真1 米マイクロソフトのチャールズ・フィッツジェラルド プラットフォーム戦略担当ジェネラルマネージャ |
写真2 左からWindows Liveチームの小野田哲也ディレクター,モバイルチームの磯部伸二郎マネージャー,コミュニケーションサービスチームのホ・チャン プロダクトマネージャ |
マイクロソフトのサービス戦略は「ソフトウエア+サービス」である。その戦略を打ち出した理由を,米国本社のチャールズ・フィッツジェラルド プラットフォーム戦略担当ジェネラルマネージャ(GM)は次のように説明する(写真1)。「顧客の環境が変化してきたことが理由の一つ。ライフスタイルとワークスタイルのIT化が進み,その境界線があいまいになってきた。機器も一つしか持たない時代ではない」。アプリケーションを使う際にそれがサービスかどうかや,どのデバイスから使うかを意識せずシームレスに使いたいというニーズを感じ,「ソフトウエアとサービスのどちらか一方だけでは対応できない」(同GM)と見たのだ。
小野田哲也Windows Liveチームディレクターも,「ソフトウエアのほとんどをネット越しにサービス提供する競合ベンダーもいるが,それですべて賄えるとは思えない」と話す(写真2)。アプリケーションのトレンドは,ネットワークを介して提供される形態と,クライアント側で実行される形態の間を揺れ動く。「それならばネットとクライアントのいいとこ取りをするのがベスト」(同ディレクター)。こうしたシームレスな環境は,マイクロソフトがWindowsをはじめとするソフトウエアで高いシェアを持ち,かつパソコンだけではなく携帯電話など幅広い機器をサポートしているから実現できる。
増殖する「Live」サービス群,対応デバイスも拡大
ここにきて,今後のサービスの大黒柱「Windows Live」が少しずつ姿を見せ始めた。「Informed」(検索,カスタマイズ可能なホームページ),「Connected」(メール,インスタント・メッセージ,ブログ),「Protected」(セキュリティとPCメンテナンス)の3分野にまたがるサービスを提供する。Webを能動的に使いこなすユーザーを対象に,カスタマイズが可能なサービス像を目指すという。つまりコンシューマ向けのSaaSといった位置付けだ。これと並行して,定型的なメニューをそろえたポータル・サイト「MSN」も引き続き提供していく。
デバイスによらずサービスを使える環境整備も着々と進めている。9月28日にKDDIのau携帯電話向け「Windows Live for Mobile」を初公開。併せてベータ版として提供してきたNTTドコモ向けiアプリ版を正式版とした。「幅広いユーザーをIMサービスにつなげるようにすること」(Windows Liveサービスグループのホ・チャン コミュニケーションサービスチームプロダクトマネージャ)が狙いである。
業務アプリもソフトとサービスの両輪で
そして間もなく日本でも,「Office Live」日本語版のベータ・サービスが始まる。Webサイトとメール(ディスク・スペース),Web構築ツール,広告を出すツールなどをセットにして提供する法人向けサービスだ。ビジネスのための基本的なアプリケーションを提供するサービスと言える。
マイクロソフトが推進するCRM(顧客情報管理)アプリケーションの戦略は,ソフトウエア+サービスを体現した典型例となる。フィッツジェラルドGMは,「CRMは三つの形態で提供していく計画。従来のライセンス販売,料金を徴収するサービスのCRM Live,そしてホスティング・サービス事業者がソフトを購入しカスタマイズしたのち提供するサービスだ。いずれの方法もソースコードは共通で,ユーザー企業は別の方法に簡単に切り替えられる」と予告する。業務アプリケーションは,現時点ではソフトウエアの販売がメインだが,こちらもサービスとの融合が進むだろう。