経済産業省(経産省)と財団法人 コンピュータ教育開発センター(CEC)は3月7日から3月8日にかけ,「平成19年度Eスクエア・エボリューション成果発表会」を開催した。同会は,経産省とCECが取り組んできた,教育現場へのオープンソース・ソフトウエア(OSS)環境を導入する「Open School Platform事業(OSP事業)」などの結果を発表するもの。
OSP事業はCECが経産省の委託を受け,2005年度から実施してきた。2005年度は4県(関連記事)。2006年度は6県16校に導入(関連記事)。2007年には全国三十数校の合計1400台以上のパソコンにOSSを導入する。(関連記事)。OSのサポートが切れた中古パソコンにLinuxをインストールして再生するリサイクルPCや,シンクライアント形式での導入も行った。CECでは,CD起動のLinux「KNOPPIX」をベースに,OSP事業での成果をまとめた「OSP基本パッケージ」を作成し,無償で公開している(関連記事)。
つくば市は小中学校の完全OSS化を目指す
「OSSが学校にもたらしうるもの」と題したセッションでは,2008年度のOSP事業でオープンソース・ソフトウエアを導入した教育関係者が結果を報告した。コーディネータは教育向けKNOPPIX「KNOPPIX Edu」を開発した東北学院大学 准教授 志子田有光氏が務めた。
国立情報学研究所 教授 新井紀子氏は,同研究所がオープンソースのコンテンツ管理システムXOOPSをベースに教育機関向けCMSとして開発したNetCommonsを紹介。現在約2000団体に導入されており,アンケートでは90%以上の教員が,Webサイト管理の手間が減ったと回答したという。
羽島市立羽島中学校 校長 横山隆光氏は岐阜県でのOSP事業について報告した。県内の4校で児童生徒2152名が参加し,岐阜大学付属小・中学校ではPC室のWindowsパソコン42台をLinuxに入れ替えた(関連記事)。小中学生がLinuxを操作する際の問題はなかったものの,非OSS環境になれた教員はLinuxへの移行に抵抗があり(関連記事),サポートの充実などが改善すべき点としてあげられるとした。
大分県生活環境部 私学振興・青少年課 主査 向智章氏は大分県での導入実証を報告。KNOPPIXを1000人規模で利用,コストも大幅に削減にでき,県下の専門学校へKNOPPIX活用のネットワークが広がっているとした。
京田辺市では中古PCにLinuxを導入し約800名の児童生徒の授業に使用した。教育委員会 学校教育課 統括主幹 田中克佳氏は「非オープンソースの最新OSを導入するには高スペックのパソコンが必要になるが,既存の旧機種をオープンソース環境で活用することで低予算でICTの整備,活用ができる」と述べた。
つくば市では2005年度と2006年度に市内の6校にオープンソース環境を導入した(関連記事)。つくば市教育委員会指導課 指導主事 吉田浩氏は「現在も4校で授業や校務にオープンソース・ソフトウエアが活用されている」と報告した。また2005年度から小中学校のWebサイトへのXOOPSの導入に取り組み,2007年度までにすべての学校にXOOPSを導入した。「自由にカスタマイズできるため教員に大好評」(吉田氏)。
つくば市では,子供用のパソコンについて完全にオープンソース化を目指すという。「時間がかかるが前向きに取り組んでいく」(吉田氏)。また教員用のパソコンについても完全オープンソース化を目指す。ただし,市から,市職員が採用しているソフトウエアに統一し一括管理できるようにすることを求められており,オープンソース化のため「市に理解を求めていく」(吉田氏)としている。