日本民間放送連盟は2011年9月15日、NHK会長の諮問機関である「NHK受信料制度等専門調査会」が策定したNHKの将来像を構想した報告書に対しての意見を公表した。調査会は、中期的な視野でNHKの業務と財源のあり方を検討し、「地上・衛星受信料の一本化」や「NHKの放送のインターネット同時配信」などを提言している。民放事業者の立場から、これらの提言への意見を取りまとめた。
地上放送とBS放送の受信料一本化については、「衛星放送の受信料は衛星付加料金として地上放送と別立てにしている現行制度は、衛星放送の普及や視聴の実態に即した妥当な体系である」とした。そのうえで、「今後の方向性については、衛星放送の普及の推移や、NHKの業務範囲をどう考えるかによるとする報告書のまとめは適切である」という意見を示した。
NHKの財源・規模の項目に関しては、「放送法の趣旨から、間接的であってもNHKや子会社などが広告収入を得ることは厳に禁止されるべき」「NHKや子会社などが直接・間接に広告収入を得ていないかどうかについて、再確認されるべき」と述べた。このほかに、NHKに適正規模を設定するという概念を示した。「受信料収入という安定的な財源を持つNHKにはコスト意識の欠如、業務拡大や自己増殖的な方向に向かう危険性が常に存在する」としたうえで、適正規模を設定すれば、「例えば適正規模を超える収入がある場合にはおのずと受信料の値下げ・還元が行われる」としている。
報告書が公共放送のありようを議論するうえで「目的・使命」「サービス範囲」「財源(受信料制度など)」の3項目の関連付けを重視すべきという視点を示したことについては、「異論はない」としたうえで、民放事業者の立場からの要望を挙げた。「民間事業者との公正な競争や、地域免許制度など放送制度の根幹との整合、基幹放送の普及・発展における先導的役割といった視点も重視し、バランスの取れた議論が今後展開されることを期待したい」という。
NHKのテレビ放送のインターネット同時配信については、インターネット上で自由かつ多種多様な言論が存在し流通する中で、「強大な言論機関であるNHKの放送を受信料財源で特権的に配信しようとする構想は言論・ジャーナリズムの多様性の観点からも慎重な検討を要する」とした。さらに「経費に受信料収入を充てることには反対」としている。会長の広瀬道貞氏(テレビ朝日顧問)は2011年9月15日の会見で、「すべての世帯がインターネット上で番組の動画をきちんとした形で視聴できる状況にはない。そうしたサービスの財源に受信料収入を充てるのはいかがなものか」と持論を展開した。
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