2015年4月3日、政府は労働基準法改正法案を閣議決定し、国会に提出した。裁量労働制の適用対象を拡大するほか、新たな労働法制となる「ホワイトカラー・エグゼンプション」を新設()。フレックスタイム制の見直しも盛り込んだ。6月24日までを会期とする今国会で成立すれば、2016年4月1日に施行する。

図●労働基準法改正法案の主な内容
図●労働基準法改正法案の主な内容
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 「規制緩和により、柔軟な働き方を実現する」。厚生労働省労働基準局の分部唯宇法規係長はこのように説明する。改正法での規制緩和の中身は主に三つある。

 一つめは、実労働時間ではなく“みなし”の時間で労働時間を計算する裁量労働制の適用範囲拡大だ。法人向けの提案営業職などを新たに追加する。IT業界では、顧客が抱える課題を分析し、ハードウエアやソフトウエアを組み合わせたソリューションを提案する営業職が該当する見込みだ。単純な物品販売を手掛ける営業職は、改正後も裁量労働制の対象には含まない。

 二つめは、成果に対して報酬を支払う「特定高度専門業務・成果型労働制(高度プロフェッショナル制度)」、いわゆるホワイトカラー・エグゼンプションの新設である。原則1日8時間、週40時間までとする労働時間規制を外し、成果のみで賃金を決める。

 裁量労働制との違いは、労働時間と報酬とが一切連動しない点だ。裁量労働制は、労働時間の計算を“みなし”で固定にする制度。深夜・休日労働はみなし残業外として、企業は割増賃金を支払う義務がある。一方、高度プロフェッショナル制度では、深夜・休日労働でも割増賃金を支払う必要はない。

 三つめは、フレックスタイム制の清算期間延長だ。現行法では1カ月以内としているが、3カ月以内にする。清算期間とは、最低限働くべき総労働時間を取り決める際に区切りとなる期間のこと。現行法下では、1カ月160時間などと決めるのが一般的だ。これが、3カ月480時間と定められるようになる。労働者は、最初の1カ月は80時間しか働かず、残り2カ月は月200時間ずつ働くといったように、柔軟な働き方を選択ができる。