東京大学は2015年8月6日、同年4月1日に設置したサイバーセキュリティの寄附講座「セキュア情報化社会研究(SISOC-TOKYO)」グループを本格的に始動したと発表した(写真)。5年の設置期間を通じて「サイバーセキュリティ問題を、技術偏重ではなく、文理融合の形で解決する」(グループ長に就任した東大大学院 情報学環の須藤修教授)ことを目指す。
この寄附講座は、生体認証機器メーカーであるディー・ディー・エスの三吉野健滋社長が個人で寄付した約3億円の資金をもとに、2020年3月まで設置するもの。グループ長は須藤氏、副グループ長には東大名誉教授 東京電機大学特命教授の安田浩氏が就く。
この寄附講座の大きな柱は、研究開発、政策提言、人材育成の三つから成る。
研究開発では、生体認証、ID管理、セキュアOSなどの要素技術について、内外の研究者を特任教授、客員教授として招聘する。サイバー犯罪の心理学、サイバーセキュリティの法律学といった学際的な分野も扱う。
政策提言では、マイナンバー制度と東京オリンピック・パラリンピックについて、適切なセキュリティ管理体制などを提言する。「マイナポータルなどで使う公的個人認証がサイバー攻撃で破られた場合の責任分界点や賠償範囲、政府に必要なセキュリティ人材の規模など、文理両面で議論すべきことは多い」(須藤氏)。
人材育成では、最新のサーバーやセキュリティ機器から成るサイバー演習設備(サイバーレンジ)を整備し、実地訓練を通じてサイバーインシデント対応の専門家を育成することを検討している。この寄附講座の枠組みとは別に、東大、東京電機大学などが数十億円規模の民間資金を集めて研究センターを設立し、複数の大学がサイバー演習設備を共用できるようにする計画を描いている。