ブログ：米Ｆ２２戦闘機とのレアな「超接近」

William James

［２７日　ロイター］ - 米空軍と過ごす１日の朝は早い。イングランド東部にある空軍基地にロイターの同僚２人と到着した私は、これから何が起きるのか、わずかな知識しかなかった。

空中給油機に乗り、Ｆ２２戦闘機２機にエスコートされながら、欧州の、どこかまだ知らされていない場所まで飛行するのだ。

空中給油機に乗り込むまでの待ち時間に、同乗する乗員らと雑談した。彼らはジャーナリストを迎えて、興奮した様子だった。壁に吊るしてあった写真を手に取り、これから乗るのがＫＣ１３５という空中給油機だと教えてくれた。

飛行の思い出の品々で飾られた小さなバーで、自らの部隊の歴史を説明してくれた。この日の担当官は、私たちのためにバナナパンを焼いてくれた。

給油機に搭乗すると、そこには巨大な輸送用木箱と運搬可能なパワートラック１台があり、同機の両サイドに赤い布地で覆われた１列分の座席スペースを残すのみだった。

事前に飛行中は寒くなることを警告された。そして、実際に寒かった。騒音も激しかった。同行した何人かはすでに横になり、手袋を着用して毛布に包まっていた。身に着けた防寒用下着への信頼は徐々に薄らいでいった。

飛行計画の許可に時間がかかったため、出発が遅れたが、私たちはとうとう離陸し目的地に向かった。目的地はルーマニアだった。そこは、米国が東欧で力を誇示し、ロシアの侵攻を食い止めるため、北大西洋条約機構（ＮＡＴＯ）を支援している場所だ。

私たちはついに何かが起きているとの感触を得た。睡眠中で毛布に包まれていた者たちも目覚め始めた。

ベルトを外し、よろよろと座席と木箱の細い間を歩いて窓の方に向かうと（「すみません、すみません」と言って通ったのは言うまでもない）、私たちの給油機の右翼側でＦ２２を初めてちらっと見ることができた。ものすごく接近しているように思えた。

私は給油機の後方の、床にある２つの小さなシェルターの１つに飛び移ることができた。

私の真正面にＦ２２があった。細い給油ホースで私たちの給油機とつながっていた。

全天周囲でハイテクなチラチラ光るコックピットのガラスを見せながら、Ｆ２２はほんのわずかに揺れるだけで、ときどきぐらつく程度だった。それが、Ｆ２２が欧州上空を時速約３００ノット（約５５６キロ）で飛んでいる唯一の兆候だった。私は、１ノットがどれほどの速さなのか、グーグルで調べるために、頭の中でメモをした。両機をつないだ給油ホースの長さは約１０メートルだと、後で説明を受けた。

同乗したＦ２２の予備パイロットらは、質問されることを喜んでいるように見えた。もしロシアの戦闘機に進路を妨害されたら、パイロットたちは恐怖を感じるかどうかを私は知りたかった。

「注意深いことが最善の策だ。われわれは誰かを挑発するためにここにいるのではない。同盟国と共に働くためにここにいるのだ」。２６歳のダン・「スクリーム」・バリナ氏はこう話した。

戦闘機のパイロットになる人はどんな人か。「かなりの程度、みんながＡ型行動形式（よく遊び、よく働き、競争的でエネルギッシュなタイプ）の人間だ。何でも進んでやる人だ」とバリナ氏は述べた。

ロシアの戦闘機が挨拶代わりに近寄ってくる局面にうまく対処するためには、どんな資質が必要なのか。「おそらく、ただ冷静沈着なこと。軽率な行動をしないこと」

私は敗北を認め、ついに降参した。では、なぜあなたは「スクリーム（叫び）」と呼ばれているのか。「有名な抽象画を知っているかい。私はあれにちょっと似ている」との答えだった。

確かに彼は似ていた。

ルーマニアに着いたが、Ｆ２２の到着を発表する記者会見には間に合わなかった。戦闘機のパイロットと、地元メディア、真面目な感じのするルーマニア空軍とが入り交じった。駆け足の茶色の犬と迷子の子猫が私たちに加わり、一瞬、滑走路にある３億ドル（約３２０億円）相当の戦闘機から、私たちの関心をそらせた。

給油を受けたＦ２２のパイロットたちもまた、すぐに私との対話ゲームに参加した。友好的で自らのミッションに熱心なあまり、彼らは空中給油機での飛行を楽しんだかを、知りたがっていた。私が（本当に）興奮したと伝えると、彼らも心から喜んでいるようだった。

飛行場を離れると、私たちは、草に覆われた入り江にある旧ソ連時代の戦闘機の墓場を通り過ぎた。

バリナ氏は「２機のミグ２９と１機のミグ２３だ」と説明した。彼と彼の同僚１人は、この冷戦時代に最先端だったハードウエアを近くで見るため、野原を横切って通過。そのため、帰りの搭乗にあやうく遅れるところだった。

ルーマニアに９０分間滞在した後、私たちは給油機に戻った。もう一度、軍用機の給油を見るチャンスだ。軍用機をつなぐ給油用チューブは、Kijuan Amey氏によって操作されている。

うつぶせになり、軍用機の背部から眺めているAmey氏は、究極の「アヒル釣り」ゲームをしている。同氏は後で、おそらく戦闘機のパイロットの方が、より大変な仕事をしている、と謙虚に説明してくれた。

戦闘機に給油をする技能は他で転用が可能かと聞くと、Amey氏は「正直なところ、おそらくビデオゲーム以外には、直接関係するものはないと思う」と答えた。どんなゲームか聞くと「飛行シミュレーターゲームだよ」と同氏は話した。

英ミルデンホール空軍基地に着陸する際、操縦席への立ち入りが許された。私の前で、２人のパイロットが交互にヘッドセットに話しながら、スイッチをカチカチと鳴らし、毎秒ごとに目盛り盤を調節していた。およそＡ３サイズのスペースに２６の目盛り盤があった。アラームが鳴り、すぐに静かになった。

「やれやれ、警笛はうまく作動している」。１人のパイロットはこう話した。冗談だったのか、私には分からなかった。

突風に揺れながら、給油機は雪の中を降下していった。制御装置を操るパイロットの動作は一貫性がなく、機体の動きとは対応していないように思えた。しかし、誰も心配はしていない。私もそうだ。私たちは無事、着陸した。

「ありがとう。とても素晴らしかった」と私は述べた。

「はい、確かに。しかし、風が最後の最後に現れた。まったく」。パイロットは笑いながら、こう答えた。冗談なのか、私にはなおも定かではなかった。