海が嫌いだ。
いや、海自体は嫌いではない。
小さい頃、父と行った地元の海を思い出す。誰もいない、だだっ広い波の上を浮き輪でぷかぷか浮いてみたり、砂場に埋まっているアサリを片っ端から掘ったりするのは好きだった。
声が届かなくなるくらい沖の方まで泳いでいくと、心配してくれた父が迎えに来てくれるのも好きだった。
そう、わたしは海が好きなのだ。
私が苦手なのは海ではなく、海に遊びに来ている人々。
愛読書である「女性セ●ン」で読んだのだが、海水浴場周辺に住んでいる地域住民の方たちは、毎年海水浴客から大迷惑を被っているのだという。
ゴミを敷地内に投げ入れられたり、玄関前で嘔吐されたり、勝手に庭に入って来て排尿されるなどの例があるらしい。
とんでもない話だ。
とかく海はなぜかそういう人たちが集まる傾向にあるようなので、関東の海には行こうとも思わなかったし、そういう私を海に誘う人もまたいなかったのである。
「水着て・・・」
友人:みどり
『暇女のやつ…わたしを江ノ島なんかに呼び出しやがって…』
『大体わたしは海なんて場所、全然好きじゃないんだよ…』
『浮ついたリア充ばかりだし、日に焼けるし…』
海水の塩で体はベトベトになるし・・・ん?
なんだ・・・? あいつ・・・
ザッパーン!
ぷはあっ
暇「待たせたな。」
「お元気?」
「無駄な抵抗はやめろ。お前に谷間はつくれん」
暇「1か月ぶりだな」
みどり「まさか大学卒業した後もこんなに頻繁に会うことになるとは思ってもみなかったよ」
「まあまあそんなこと言いなさんな。仲良くやろうぜ」
「・・・」
みどり「こうなったらヤケだ。海の家でビール飲むぞ」
みどり「ねえねえ、これさ…ぐるなびの取材なんでしょ?逆ナンしなくていいの?」
「心の中の小人がハッキリと『嫌』と言ってる場合、どうしたらいい?」
みどり「この砂肝、冷えてる…高かったのに、冷えてる…」
海の家というアウェーすぎる環境に、私たちの心はだんだん曇ってきた。実際に天気まで曇って来てしまった。
「雨だ!」
次第に土砂降りになり、パラソルの下にいてもびしょ濡れになってきたので海の家にある座敷スペースに移ろうとしたのだが、追加料金がかかるという。
江ノ島という未知の島で屋根のある場所を彷徨い歩く我々はさながら難民のようだった。
傘を差して歩いていると、ピザ屋さんを見つけた。
落ち着いた店内。
かなり順番待ちをしていたが、「屋根がある」ということと「チャラそうな人がいない」という安心感からここに留まることにした。
順番待ちを乗り越えて、やっとありつけたピザ。
しらす×ニンニクのピザ
江ノ島スペシャル(しらす)
なぜか二人ともしらすのピザを注文しているところが私たちのダメさを物語っていると思う。どちらか一人は別の種類のピザを頼んでシェアするというのが「デキる女2人組」の正しい姿だろう。
『美味ければあとはどうでもいい』モード
しらすを一度に大量摂取してしまい、しらすに対しての罪悪感が込み上げてくる。しかし美味い。美味すぎる。
暇「あーあ、やっぱり私に江ノ島なんていうリア充スポットは鬼門だったみたい。何一つ上手くいかないよ…」
「・・・・」
みどり「ねえ、その水着さ...今回のために新しく買ったんじゃないの?」
みどり「それにシュノーケルも・・・」
みどり「あんたさ・・・」
「実は死ぬほど海楽しみにしてたんだろ・・・」
暇「正直…水着きてれば逆ナンなんかしなくても向こうから話しかけてくれるんじゃないかって思ってた…」
「甘いんだよ」
みどり「そんな幼児体型のやつがロリ水着なんて着ても誰も寄ってこないよ。海にいるのは三代目 ● Soul Brothersを彷彿とさせるようなゴリゴリのにーちゃんばっかなんだから。あんたがいつも相手してるような色白軟弱メガネとは話が違う」
『あっ やべ』
みどり「ねえ、大仏でも見に行こうよ…」
江ノ電に乗って「長谷駅」で降りると、長谷寺の大仏に会える。
江ノ島で心身共にボロボロになっていた私たちは、大仏の穏やかな表情に癒されたのだった。
※逆ナンは出来ませんでした
暇な女子大生(id:aku_soshiki)
「暇な女子大生が馬鹿なことをやってみるブログ」を書いている女子大生もといフリーライター。好きな男性のタイプは洗濯物の畳み方が几帳面そうな人で、好きな食べ物はエビチリです。
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