想像と創造の力を引き出す「遠回り」のすすめ 物語の視点でみる未来

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コーディネーター・黒田早織
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「地球会議2024」オンラインセッションから

 「対話でさぐる 共生の未来」をメインテーマに10月下旬に開かれた「朝日地球会議2024」のオンラインセッションの一つ、「『8がけ社会』を生きる~希望を持ち続けるためのヒント」では、物語の作り手と働き手が減る社会を分析する研究者が、縮小する未来の捉え方について語り合いました。主な内容は以下の通り。

 現役世代が2割減り、人手不足が深刻化する「8がけ社会」が到来する近未来。「私たちは誰かの労働がなければゴミ一つ捨てられない。働く力が乏しくなった先に、どんな日本社会がありうるのか」。リクルートワークス研究所主任研究員の古屋星斗(しょうと)さんの問いかけに、芥川賞作家の九段理江さんと映画プロデューサーで小説家の川村元気さんが、クリエーターの視点から語り合った。

 ディストピアにも思える8がけ社会だが、九段さんは「ユートピアもディストピアも人間が作り出した概念。人間の解釈次第で展開が変わる」と話した。

 川村さんは「ドラえもん」などの作品を挙げ、物語の作り手はプラスマイナス両方の未来をシミュレーションしてきたと指摘。物語は「あり得る未来の中でどれが居心地が良いのか、悪いのかを人間に認識させ、未来への想像力を喚起させる」ことができるとした。

 それは、コスパ重視で最適解を求めることが多い現代で、遠回りと思われがちな「物語」の存在意義である。九段さんは「人間が一番クリエーティブになれるのは、最短ルートの正解をただなぞっている時じゃなく、失敗を何とか軌道修正していく時」だと、自身の創作の過程も踏まえて語った。

 古屋さんは、過疎に悩む自治体に成功事例はないかと聞かれることがよくあるが、「最短ルートの解決策をまねしてもあまり意味がない」。地域の未来に重要なのは「解決策を導き出すためにどんな議論があったか、解決のプロセスを楽しめたかどうかだ」と話した。

 サービスが縮小する8がけ社会では、享受できる物理的豊かさも縮小することが見込まれる。豊かさに慣れてしまった私たちは、心穏やかにそれを受け入れられるのか。

 そんな問題意識で「口紅3本…

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この記事を書いた人
黒田早織
ネットワーク報道本部|東京駐在
専門・関心分野
司法、在日外国人、ジェンダー