2016/07/05(火) - 03:50
再びマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ディメンションデータ)が勝利。緩斜面を先頭で駆け上がったアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)をフィニッシュ手前で差し切ったカヴがツール・ド・フランス第3ステージを制した。
開幕から2日間にわたってコタンタン半島の海岸線を駆け抜けたツールは内陸。グランデパールを迎えたマンシュ県に別れを告げて、第3ステージはノルマンディーらしい緩やかなアップダウンを繰り返す平野を走る。223.5kmコースは概ねフラット。ピレネー山脈まで南下する5日間の行程が始まった。
海に突き出た岬の街グランヴィルをスタートしてすぐにアルマンド・フォンセカ(フランス、フォルトゥネオ・ヴァイタルコンセプト)がファーストアタック。フォンセカの動きには誰も反応せず、メイン集団はすんなりと単独逃げを容認する。ここから3年連続ツール出場中の27歳による長い長い逃げが始まった。
ワイルドカード枠で出場しているフォルトゥネオ・ヴァイタルコンセプトは、昨年までブルターニュ・セシェとして活動していたことからもわかるように、ノルマンディー地域圏の隣に位置するブルターニュ地域圏に拠点を置くUCIプロコンチネンタルチーム。この第3ステージは中盤に70kmだけ(72km〜143km地点)ブルターニュを通過するだけに、逃げに選手を送り込むことがチームの至上命題。しかもフォンセカは同チームの出場メンバーの中で唯一のブルターニュ出身。まさにローカルチームのローカルライダーがソロエスケープを敢行した。
タイム差は25km地点で最大11分05秒まで拡大。総合97位・3分06秒遅れのフォンセカがバーチャルマイヨジョーヌとなるが、総合リーダーチームのティンコフが集団先頭で隊列を組むとタイム差はすぐに6分差まで縮まる。
地元ブルターニュの応援を一身に受けながら、34km/h前後のペースを刻んだフォンセカ。風も緩く、メイン集団は束の間のリラックスタイムを満喫する。「逃げを捉えたくなかったから集団のスピードは常にスロー。カフェに立ち寄ってコーヒーでも飲みたいぐらいだった」とマイヨジョーヌのペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ)が振り返るほど、主催者の予想を大幅に下回るペースでレースは進んだ。
タイム差が6分を推移する中、残り87kmでトマ・ヴォクレール(フランス、ディレクトエネルジー)が突如メイン集団を飛び出して単独でフォンセカにブリッジ成功。ヴォクレールが強力に牽引したが、同時にメイン集団とのタイム差は急速に縮まり始めた。
171km地点の中間スプリントポイントはフォンセカが先頭通過。わずか40秒後方にまで迫ったメイン集団の先頭はマルセル・キッテル(ドイツ、エティックス・クイックステップ)が獲る。
フィニッシュ地点のアンジェはヴォクレールが2004年に初めてマイヨジョーヌを着て走ったステージのフィニッシュ地点。思い出の地に向かって力強い走りを見せたヴォクレールだったが、スプリンターチームが束になってペースを上げるメイン集団には対抗できずに残り8km地点で吸収された。敢闘賞は序盤から逃げたフォンセカではなくヴォクレールに贈られている。
エティックス・クイックステップ、カチューシャ、ロットNLユンボ、ディメンションデータに加え、危険回避のために総合系チームまで集団先頭に上がってペースアップ。アンジェの街に差し掛かるとロット・ソウダルとディメンションデータが先頭でリードアウトトレインを走らせる。
大通りに設置されたフラムルージュを過ぎるとそこからフィニッシュまでは勾配2〜3%の上り坂。ユルゲン・ルーランズ(ベルギー、ロット・ソウダル)とマーク・レンショー(オーストラリア、ディメンションデータ)を先頭に残り350mコーナーに抜け、その後ろからグライペルとカヴェンディッシュ、サガンが発進した。
先頭に立ったドイツチャンピオンジャージのグライペルを、マイヨヴェールのカヴェンディッシュと、マイヨジョーヌのサガン、そしてブライアン・コカール(フランス、ディレクトエネルジー)が追い上げる。最終的にはグライペルとカヴェンディッシュの一騎打ちに。両者ともにフィニッシュラインにハンドルを投げ込んだ。
グライペルが左手を挙げたものの、その後すぐカヴェンディッシュが右手で小さくガッツポーズする。およそ5cmの差でカヴェンディッシュが先着。集団スプリントで負け無しのステージ2勝目が決まった。
「どんなに僅差のスプリントでも、大抵は勝ったか負けたか自分には分かる。今日よりも小さな差で負けた経験もあるし、勝ったという確信はなかった」と、カヴェンディッシュは僅差のフィニッシュについて語る。
第1ステージに続くスプリント勝利。一通りチームメイトを抱き寄せてから表彰台に向かったカヴは「今日は最後の追い込みが勝利につながると思っていたんだ。グライペルの後ろからスプリントするのが得策だと思っていた。その狙い通り差し切る事が出来てよかったよ。今朝のミーティングでロジャー・ハモンド監督が告げた作戦をチームとしてやり遂げた。ディメンションデータにとってこの上ない勝利。このチームのエースとして走ることを誇りに思っている」と語る。カヴェンディッシュはポイント賞トップに返り咲くとともに、ステージ通算勝利数をベルナール・イノーに並ぶ歴代2位の28勝に伸ばした。
ステージ4位のサガンはボーナスタイム獲得を逃したものの、マイヨジョーヌを危なげなくキープ。マイヨヴェールがカヴェンディッシュの手に戻っている。
ツール・ド・フランス2016第3ステージ結果
1位 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ディメンションデータ) 5h59’54”
2位 アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)
3位 ブライアン・コカール(フランス、ディレクトエネルジー)
4位 ペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ)
5位 エドワード・テウンス(ベルギー、トレック・セガフレード)
6位 ソンドレホルスト・エンゲル(ノルウェー、IAMサイクリング)
7位 マルセル・キッテル(ドイツ、エティックス・クイックステップ)
8位 クリストフ・ラポルト(フランス、コフィディス)
9位 ダニエル・マクレー(イギリス、フォルトゥネオ・ヴァイタルコンセプト)
10位 ディラン・フルーネヴェーヘン(オランダ、ロットNLユンボ)
67位 新城幸也(日本、ランプレ・メリダ)
マイヨジョーヌ(個人総合成績)
1位 ペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ) 14h34’36”
2位 ジュリアン・アラフィリップ(フランス、エティックス・クイックステップ) +08”
3位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) +10”
4位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) +14”
5位 ワレン・バーギル(フランス、ジャイアント・アルペシン)
6位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)
7位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、ティンコフ)
8位 トニー・ギャロパン(フランス、ロット・ソウダル)
9位 ファビオ・アル(イタリア、アスタナ)
10位 ダニエル・マーティン(アイルランド、エティックス・クイックステップ)
マイヨヴェール(ポイント賞)
1位 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ディメンションデータ) 123pts
2位 ペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ) 116pts
3位 アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル) 79pts
マイヨアポワ(山岳賞)
1位 ヤスパー・ストゥイフェン(ベルギー、トレック・セガフレード) 4pts
2位 ポール・ヴォス(ドイツ、ボーラ・アルゴン18) 2pts
3位 アルマンド・フォンセカ(フランス、フォルトゥネオ・ヴァイタルコンセプト) 1pt
マイヨブラン(ヤングライダー賞)
1位 ジュリアン・アラフィリップ(フランス、エティックス・クイックステップ)8h34’50”
2位 ワレン・バーギル(フランス、ジャイアント・アルペシン) +06”
3位 ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、ロットNLユンボ)
チーム総合成績
1位 オリカ・バイクエクスチェンジ 43h44’30”
2位 チームスカイ
3位 モビスター +21”
ステージ敢闘賞
トマ・ヴォクレール(フランス、ディレクトエネルジー)
リタイア
なし
text&photo:Kei Tsuji in Angers, France
開幕から2日間にわたってコタンタン半島の海岸線を駆け抜けたツールは内陸。グランデパールを迎えたマンシュ県に別れを告げて、第3ステージはノルマンディーらしい緩やかなアップダウンを繰り返す平野を走る。223.5kmコースは概ねフラット。ピレネー山脈まで南下する5日間の行程が始まった。
海に突き出た岬の街グランヴィルをスタートしてすぐにアルマンド・フォンセカ(フランス、フォルトゥネオ・ヴァイタルコンセプト)がファーストアタック。フォンセカの動きには誰も反応せず、メイン集団はすんなりと単独逃げを容認する。ここから3年連続ツール出場中の27歳による長い長い逃げが始まった。
ワイルドカード枠で出場しているフォルトゥネオ・ヴァイタルコンセプトは、昨年までブルターニュ・セシェとして活動していたことからもわかるように、ノルマンディー地域圏の隣に位置するブルターニュ地域圏に拠点を置くUCIプロコンチネンタルチーム。この第3ステージは中盤に70kmだけ(72km〜143km地点)ブルターニュを通過するだけに、逃げに選手を送り込むことがチームの至上命題。しかもフォンセカは同チームの出場メンバーの中で唯一のブルターニュ出身。まさにローカルチームのローカルライダーがソロエスケープを敢行した。
タイム差は25km地点で最大11分05秒まで拡大。総合97位・3分06秒遅れのフォンセカがバーチャルマイヨジョーヌとなるが、総合リーダーチームのティンコフが集団先頭で隊列を組むとタイム差はすぐに6分差まで縮まる。
地元ブルターニュの応援を一身に受けながら、34km/h前後のペースを刻んだフォンセカ。風も緩く、メイン集団は束の間のリラックスタイムを満喫する。「逃げを捉えたくなかったから集団のスピードは常にスロー。カフェに立ち寄ってコーヒーでも飲みたいぐらいだった」とマイヨジョーヌのペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ)が振り返るほど、主催者の予想を大幅に下回るペースでレースは進んだ。
タイム差が6分を推移する中、残り87kmでトマ・ヴォクレール(フランス、ディレクトエネルジー)が突如メイン集団を飛び出して単独でフォンセカにブリッジ成功。ヴォクレールが強力に牽引したが、同時にメイン集団とのタイム差は急速に縮まり始めた。
171km地点の中間スプリントポイントはフォンセカが先頭通過。わずか40秒後方にまで迫ったメイン集団の先頭はマルセル・キッテル(ドイツ、エティックス・クイックステップ)が獲る。
フィニッシュ地点のアンジェはヴォクレールが2004年に初めてマイヨジョーヌを着て走ったステージのフィニッシュ地点。思い出の地に向かって力強い走りを見せたヴォクレールだったが、スプリンターチームが束になってペースを上げるメイン集団には対抗できずに残り8km地点で吸収された。敢闘賞は序盤から逃げたフォンセカではなくヴォクレールに贈られている。
エティックス・クイックステップ、カチューシャ、ロットNLユンボ、ディメンションデータに加え、危険回避のために総合系チームまで集団先頭に上がってペースアップ。アンジェの街に差し掛かるとロット・ソウダルとディメンションデータが先頭でリードアウトトレインを走らせる。
大通りに設置されたフラムルージュを過ぎるとそこからフィニッシュまでは勾配2〜3%の上り坂。ユルゲン・ルーランズ(ベルギー、ロット・ソウダル)とマーク・レンショー(オーストラリア、ディメンションデータ)を先頭に残り350mコーナーに抜け、その後ろからグライペルとカヴェンディッシュ、サガンが発進した。
先頭に立ったドイツチャンピオンジャージのグライペルを、マイヨヴェールのカヴェンディッシュと、マイヨジョーヌのサガン、そしてブライアン・コカール(フランス、ディレクトエネルジー)が追い上げる。最終的にはグライペルとカヴェンディッシュの一騎打ちに。両者ともにフィニッシュラインにハンドルを投げ込んだ。
グライペルが左手を挙げたものの、その後すぐカヴェンディッシュが右手で小さくガッツポーズする。およそ5cmの差でカヴェンディッシュが先着。集団スプリントで負け無しのステージ2勝目が決まった。
「どんなに僅差のスプリントでも、大抵は勝ったか負けたか自分には分かる。今日よりも小さな差で負けた経験もあるし、勝ったという確信はなかった」と、カヴェンディッシュは僅差のフィニッシュについて語る。
第1ステージに続くスプリント勝利。一通りチームメイトを抱き寄せてから表彰台に向かったカヴは「今日は最後の追い込みが勝利につながると思っていたんだ。グライペルの後ろからスプリントするのが得策だと思っていた。その狙い通り差し切る事が出来てよかったよ。今朝のミーティングでロジャー・ハモンド監督が告げた作戦をチームとしてやり遂げた。ディメンションデータにとってこの上ない勝利。このチームのエースとして走ることを誇りに思っている」と語る。カヴェンディッシュはポイント賞トップに返り咲くとともに、ステージ通算勝利数をベルナール・イノーに並ぶ歴代2位の28勝に伸ばした。
ステージ4位のサガンはボーナスタイム獲得を逃したものの、マイヨジョーヌを危なげなくキープ。マイヨヴェールがカヴェンディッシュの手に戻っている。
ツール・ド・フランス2016第3ステージ結果
1位 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ディメンションデータ) 5h59’54”
2位 アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)
3位 ブライアン・コカール(フランス、ディレクトエネルジー)
4位 ペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ)
5位 エドワード・テウンス(ベルギー、トレック・セガフレード)
6位 ソンドレホルスト・エンゲル(ノルウェー、IAMサイクリング)
7位 マルセル・キッテル(ドイツ、エティックス・クイックステップ)
8位 クリストフ・ラポルト(フランス、コフィディス)
9位 ダニエル・マクレー(イギリス、フォルトゥネオ・ヴァイタルコンセプト)
10位 ディラン・フルーネヴェーヘン(オランダ、ロットNLユンボ)
67位 新城幸也(日本、ランプレ・メリダ)
マイヨジョーヌ(個人総合成績)
1位 ペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ) 14h34’36”
2位 ジュリアン・アラフィリップ(フランス、エティックス・クイックステップ) +08”
3位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) +10”
4位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) +14”
5位 ワレン・バーギル(フランス、ジャイアント・アルペシン)
6位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)
7位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、ティンコフ)
8位 トニー・ギャロパン(フランス、ロット・ソウダル)
9位 ファビオ・アル(イタリア、アスタナ)
10位 ダニエル・マーティン(アイルランド、エティックス・クイックステップ)
マイヨヴェール(ポイント賞)
1位 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ディメンションデータ) 123pts
2位 ペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ) 116pts
3位 アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル) 79pts
マイヨアポワ(山岳賞)
1位 ヤスパー・ストゥイフェン(ベルギー、トレック・セガフレード) 4pts
2位 ポール・ヴォス(ドイツ、ボーラ・アルゴン18) 2pts
3位 アルマンド・フォンセカ(フランス、フォルトゥネオ・ヴァイタルコンセプト) 1pt
マイヨブラン(ヤングライダー賞)
1位 ジュリアン・アラフィリップ(フランス、エティックス・クイックステップ)8h34’50”
2位 ワレン・バーギル(フランス、ジャイアント・アルペシン) +06”
3位 ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、ロットNLユンボ)
チーム総合成績
1位 オリカ・バイクエクスチェンジ 43h44’30”
2位 チームスカイ
3位 モビスター +21”
ステージ敢闘賞
トマ・ヴォクレール(フランス、ディレクトエネルジー)
リタイア
なし
text&photo:Kei Tsuji in Angers, France
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