ダウジング信者の英国社長が中東に売りつけたチープで泣ける偽爆弾検知機「ADE-651」(動画あり)

  • 7,355

  • author satomi
  • X
  • Facebook
  • LINE
  • はてな
  • クリップボードにコピー
  • ×
ダウジング信者の英国社長が中東に売りつけたチープで泣ける偽爆弾検知機「ADE-651」(動画あり)

昨年死者150名を出した爆弾テロの現場にも配備されてたそうですよ?

英サマセットのATSC社が中東各国に1台平均約4万ドル(458万円)で輸出した爆弾探知機「ADE-651」(通称「魔法の杖」)が、実は「ただのガラクタ」であることが判明、内外に衝撃が走っています。

かわいそうなのはイラクです。そうとも知らず、この世界にまたとない装置を1万6500~6万ドル(148万~536万円)のプレミアム価格で約1500台購入し、バグダッド市内の各検問所で使用してるんです。これに注ぎ込んだお金はなんと8500万ドル(76億円)! 返せ、こら!

同社のジム・マコーミック(Jim McCormick)社長は、箱にRFID(無線ICチップ)カードを挿入して使えば棒を振りかざすだけで爆弾・拳銃・麻薬・人体・ドル紙幣・象など、なんでも検出できると豪語してました。

が、それも真っ赤なウソ。でたらめ。デマだったのです。

ADE-651に対する疑問の声は米国防省から上がり、昨年11月にはNYタイムズがATSC社に取材を申し込んでます。答えてもらえませんでしたが。そのとき米Gizmodoも記事にしてます

今回ご本家イギリスのBBC放送が様々な専門家に端末の中を開けて調べてもらったら、お粗末なカード以外、動力も、電源も、なんもない、ただの空箱でした。あるのは蛇の油(英語で詐欺、インチキの意)だけ。

そこで英警察当局は詐欺容疑で社長を逮捕し(現在は保釈金で仮釈放中)、英国政府もADE-651は輸出停止処分としました(遅いって)。

結局あの棒はなんだったのか?

実はこれを「発明」したマコーミック社長は公私ともに認める熱心なダウジング信者! ダウジングは振り子や棒の動きで地下の水脈や鉱脈を探せるというキワモノ理論ですが、つまりは探知機もあれがベースというわけですね。よりによってダウジング!

BBCから昨年11月に追求されてもマコーミック社長は悪びれる様子もなく、「最大1km離れた爆弾も探知できます」(3分57秒~)と言ってのけてました。その後もイラクの国防トップの招きで記者会見に姿を出し、デモを披露しているんですよ。

1月22日の放映録画で是非ご覧ください!(開けたら中は空っぽという7分20秒からのシーンも必見です)

デモで兵士の持つ棒が地雷の方向に振れるのが不思議なんですが、心理学の専門家によると、「こういうのは使う人の心理でどうにでも動く」そうな。

白髪の老紳士は、イギリス国内屈指の爆弾の専門家です。こんなものがよりによってイギリスから輸出されてたなんて恐ろしいことだと取材班に何度もこぼしたそうですよ。「これを阻止する法的メカニズム、政府のメカニズムもないとしたら、そちらが驚きだ」(7分52秒~)と、眉を曇らせてます。

その後に出てくるのは「装置の鍵を握る」カード。探し物に応じた帯域幅のカードを読み込ませで使うと、ドル札はもちろん得意の象だって検出できる優れもの! ...のはずですが、中の「回路」を調べたラボの博士はキッパリこう断定しています。

「プログラムできるようなものは一切入ってませんね。メモリーもマイクロコントローラもないですから。これではソフトウェアやなんかの情報は一切保存できません。これは店の盗難防止用のものです。カードに入れて、さも電子機器っぽく見せることができる部品の中でも一番単価の安いものですよ」(9分15秒~)

う~ん、信者も何もこれはもう、立派な確信犯でしょう。みなさんこれ、原価いくらだと思います?

こんなもの掴まされて、お金のロスも悔しいけど、もっと悔しいのは爆弾で失われた尊い命。そちらはもう取り返しがつきません。沢山の人が、まさか殺戮デバイスとも知らず、その両手にしっかりこれを握り締めて死んでいったのかと思うと、ホント、やり切れない。

米版の読者さんが教えてくれたように、このBBC報道特集放映後もイラク政府はこの利用価値ゼロの装置を擁護してます。今さら信じたくない気持ちは分かるけど、一刻も早く撤収すべきかと...。

[NYT, BBC, CrunchGear]関連:MSN産経ニュースAFPBB

Jack Loftus、John Herrman(原文1原文2/satomi)